別れがあれば出会いもある⑨
「アメリカとは違いますか?」と尋ねる。
こちらに気づき、会釈をし「アメリカハ、ドソウガイッパンテキデス」
「お祖父ちゃんのために、わざわざありがとうございました」と頭を下げる僕。
「コチラコソ、カッテニキテシマイ、スイマセン」とガリクソン。
「日本語上手すぎません?」
「ニホンニキョウミガアッテ、ベンキョウシマシタ」とにっこり笑う。
「恵とはフィリピンで?」
「ソウデス! ボクガリョコウデ、フィリピンニイッタトキニ、アイマシタ。ゲンチノヒトトモモチロン、ナカヨクナリマシタガ、メグミトモナカヨクナリマシタ」
「そうですか‥‥‥」とまだ聞きたい事は、山ほどあるが言葉が出てこない。
「メグミハ、フィリピンデイツモ、ショウギトマンガヲミテイマス」
漫画は分かるが、将棋を見いている事に驚いた「そ、そうですか‥‥‥将棋も‥‥‥」
「アマミサンハ、ショウギノプロナンデスヨネ?」
「まぁ一応ですけどね」と答える。
「ソンナコトナイデス。ドンナセカイデモプロハスゴイデス」
照れてしまうぐらい褒めてくれる。
「漫画は多分、泰斗の担当のやつでしょうね」
「タイトトイウノハ、ウケツケシテタカタデスカ?」
「今は、小説家の担当に変わったんですけどね」
二人そろって「雨竜雷」「ウリュウライ」と声が揃ってしまう。
笑ってしまう二人。
係の人が僕を呼びに来た。
「じゃあ、また後で」と言って、ガリクソンと別れ火葬炉に向かう。
火葬炉は三つ並んでいて、その前に祭壇が設けられており、その奥に扉がありその中に棺を入れ、火葬をする。
今、祖父ちゃんが燃えているという実感がない。
この世は、時間がないことだらけだ。
恵と会うのが、実に十年ぶりという事とか。
実感はわかなくても、燃えている事実はちゃんと存在する。
この世から、あの世に向かっている最中という認識でいいのだろう。
係の人が「もう大丈夫ですよ」と言われたので、戻ることにする。
人は死ねばどこに行くのだろう‥‥‥。
戻っていると、泰斗とガリクソンが話している姿を見かける。
話しかけようと思ったら、恵とバッタリと出くわす。
「おっ」「おつ」
「久しぶり」「う、うん」
久しぶりに聞く恵の声に、昔のことがフラッシュバックする。
いい思い出から、悲しい思い出まで。
「た、泰斗なら、う、うんアソコに」
「そ、そうみたいだね」
「仕事は順調?」
「うん、もうすぐフィリピンに戻らないと、奄美君は順調そうだね」
「相変わらずよ」
「ソフトと対局、頑張ってね」
「ありがとう」
「楽しみにしてるから」
母が僕を探しにやってきた。
「奄美、係の人が探してるよ」と教えてくれる。
「分かった」と母に言い、「じゃあまた」と恵に言って、その場を後にする。
そこでまさみとバッタリ会った。
「おっどうした?」
「い、いや別に、アッ係の人が呼んでた」
「オカンに聞いた、ありがとう」
まさみの様子が、いつも少し違ったのが気になったが係の人の元に急いだ。
こうして祖父ちゃんの葬儀が終わった。




