別れがあれば出会いもある⑦
カンカンカンカンと金属音が耳の近くでする。
何事かと思い目を開けると、まさみがフライパンを叩いて、僕を起こそうとしている。
「早く起きて下さい」
「は、初めて見た」
「何が?」
「フライパン叩いて起こす人」と目をこすりながら起きる。
「泰斗は?」
「もう起きてますよ、もう居間にいますからね。奄美も早く来ないと、朝ごはんないからね」と告げ、道場から出て行くまさみ。
祖父ちゃんの棺を開け、中にいる祖父ちゃんを確認してから、道場の鍵を掛け、家に向かう。
家に入ると、いい匂いがする。
実家の食事の匂いである。
居間に入ると、父と進と泰斗が、ちゃぶ台に座ってご飯を待っている状態だった。
「起きるの早くねぇ」と泰斗に言う。
「だってお前のいびきうるさいから」と泰斗。
「いやいや、うるさかったのは、オマエだから」と言うと、「まさか俺、いびきかかないから」と泰斗が返す。
「いやいや、あれほどのいびきしといて、何いちゃってくれてるの」と言っていたら、
母とまさみが、料理を運んでくる。
昨日の残りと、卵焼きとソーセージを焼いてくれていた。
「奄美、好きだもんねソーセージ」と母が言いながら、僕の目の前に料理を置いてくれる。
「ありがとう」と言いながら食べる。
懐かしい味がする。ただのソーセージ―なのに‥‥‥。
母がいきなり「昨日、恵ちゃん来てたわね」と、卵焼きを食べながら言う。
「そ、そうだな」と答える僕。
「奄美は恵ちゃんと逢ってないの?」痛恨の一撃を放つ母に被せる「恵さんって誰ですか?」とまさみ。
「奄美の元カノ」とあっけらかんと答える母。
「ちょっオカン!」
「良いじゃない、今はまさみちゃんと付き合ってるあるんだから。ねぇまさみちゃん!」
「は、はい」とまさみ、こちらを見ている。
下を向いて、卵焼きを食べる。
「恵ちゃん、フィリピンから帰って来たの?」と母が、僕ないし泰斗に聞いてくる。
「休暇中だと思いますよ」と泰斗。
父が泰斗に「連絡とってるのか?」聞く。
「あっ、たまに」と答える泰斗。
「オトン、ソース取って」と僕。
まだ家族でこの会話は早いと思い、はぐらかす。
「告別式でも俺が喪主するの?」と分かりきってる事を聞く。
「まぁ、それは頼むよ」と泣きつく父。
「早く支度しないと間に合わないよ」と進が助け舟を出してくれる。
食事が終わり、母とまさみは料理の後片付け、僕と泰斗と進は告別式の準備を、葬儀会社の指示のもとしている。
父は何をしているか知らない‥‥‥。
準備も終り、告別式が始まろうとしている。
棺の蓋を開け、故人と最期のお別れをするのが、告別式である。
供花を短く切り取り、一人一輪づつ棺に入れながらお別れを告げるのが一般的だそうだ。
これを「別れ花」と言い、喪主から故人との血縁が濃い順に、一般の会葬者も行う。
白い花を顔の周りに、色のある花は肩から下に入れるようにする。




