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音のない世界  作者: 横須賀かもめ
37/99

別れがあれば出会いもある⑦

 カンカンカンカンと金属音が耳の近くでする。

 何事かと思い目を開けると、まさみがフライパンを叩いて、僕を起こそうとしている。

 「早く起きて下さい」

 「は、初めて見た」

 「何が?」

 「フライパン叩いて起こす人」と目をこすりながら起きる。

 「泰斗は?」

 「もう起きてますよ、もう居間にいますからね。奄美も早く来ないと、朝ごはんないからね」と告げ、道場から出て行くまさみ。





 祖父ちゃんの棺を開け、中にいる祖父ちゃんを確認してから、道場の鍵を掛け、家に向かう。

 家に入ると、いい匂いがする。

 実家の食事の匂いである。

 居間に入ると、父と進と泰斗が、ちゃぶ台に座ってご飯を待っている状態だった。

 「起きるの早くねぇ」と泰斗に言う。

 「だってお前のいびきうるさいから」と泰斗。

 「いやいや、うるさかったのは、オマエだから」と言うと、「まさか俺、いびきかかないから」と泰斗が返す。




 「いやいや、あれほどのいびきしといて、何いちゃってくれてるの」と言っていたら、

母とまさみが、料理を運んでくる。

 昨日の残りと、卵焼きとソーセージを焼いてくれていた。

 「奄美、好きだもんねソーセージ」と母が言いながら、僕の目の前に料理を置いてくれる。

 「ありがとう」と言いながら食べる。

 懐かしい味がする。ただのソーセージ―なのに‥‥‥。

 母がいきなり「昨日、恵ちゃん来てたわね」と、卵焼きを食べながら言う。

 「そ、そうだな」と答える僕。

 「奄美は恵ちゃんと逢ってないの?」痛恨の一撃を放つ母に被せる「恵さんって誰ですか?」とまさみ。




 「奄美の元カノ」とあっけらかんと答える母。

 「ちょっオカン!」

 「良いじゃない、今はまさみちゃんと付き合ってるあるんだから。ねぇまさみちゃん!」

 「は、はい」とまさみ、こちらを見ている。

 下を向いて、卵焼きを食べる。

 「恵ちゃん、フィリピンから帰って来たの?」と母が、僕ないし泰斗に聞いてくる。

 「休暇中だと思いますよ」と泰斗。




 父が泰斗に「連絡とってるのか?」聞く。

 「あっ、たまに」と答える泰斗。

 「オトン、ソース取って」と僕。

 まだ家族でこの会話は早いと思い、はぐらかす。

 「告別式でも俺が喪主するの?」と分かりきってる事を聞く。

 「まぁ、それは頼むよ」と泣きつく父。

 「早く支度しないと間に合わないよ」と進が助け舟を出してくれる。

 食事が終わり、母とまさみは料理の後片付け、僕と泰斗と進は告別式の準備を、葬儀会社の指示のもとしている。

 父は何をしているか知らない‥‥‥。





 準備も終り、告別式が始まろうとしている。

 棺の蓋を開け、故人と最期のお別れをするのが、告別式である。

供花を短く切り取り、一人一輪づつ棺に入れながらお別れを告げるのが一般的だそうだ。   

これを「別れ花」と言い、喪主から故人との血縁が濃い順に、一般の会葬者も行う。  

白い花を顔の周りに、色のある花は肩から下に入れるようにする。


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