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音のない世界  作者: 横須賀かもめ
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別れがあれば出会いもある③

 道場の掃除に、家族を割きすぎなんだよなと思いながら、お祖父ちゃんを見る。

身繕いは、母と父が相談して合気道の道着を着ている。その上に華やかさを求めて、母がお祖父ちゃんのお気に入りのアロハシャツを被せている。




 佐伯さん曰く、母がどうしてもという事だったらしい。苦笑いでこちらを見る、葬儀会社の人たち。

 佐伯さんに「変わります」と伝えると、「ここは大丈夫よ。それより奄美ちゃんは、喪主の挨拶考えなくちゃ」とおっとりした口調で言ってくれる。

 僕が小さい時から、優しく接してくれた。

 しかし僕は昔見た事がある。




 佐伯さんが、旦那さんとケンカした時に鬼に変わった瞬間を。

 普段はおっとりした優しい口調であるが、

それが嘘のような罵声と言葉の暴力の連呼・連呼・連呼で旦那さんを言葉で殺してしまいそうなぐらい、汚い言葉を羅列していたのを見た事がある。

 汚い言葉がまるで、以前からそこにあるような、準備周到ともいえるぐらい言葉たちを操っていた。汚い言葉を綺麗に操る様を見て、僕と進は「佐伯さんには気を付けよう」と、誓い合ったもんだ。

 そんな佐伯さんが、喪主の挨拶を考えなさいと言うなら、考えるしかない。




 本を開きサラッと読むが、よく分からない。

 「この後の流れって、どうなるんですか?」

と葬儀会社の人に聞く。

 するとベテラン社員さんが(僕が勝手思っただけだが)「この後は、僧侶の方が来られますので、喪主の方や、受付・会計を担当される方も、打ち合わせ前に決めて頂くと助かりますね。他にも、今回の横山様の葬儀場は、離れの道場を使わせていただくので、祭壇飾り、式場・受付、通夜振る舞い会場などの設営を行い、ご遺体を納めた棺を安置します」と丁寧に答えてくれる。




 「通夜が始まると、喪主はどこで挨拶を?」

基本的な事を聞く。

 「焼香が全て終わった後に、喪主の方から挨拶と謝辞が一般的な流れですね」と教えてくれる。

 「あ、ありがとうございます」と言うと、「いえいえ横山さんの将棋いつも見てますから」と言ってくれる。

 佐伯さんが「やっぱり奄美ちゃんが、喪主で決まりだね」と言う。

 仕方ないので、本を開き挨拶の文言を覚える。


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