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音のない世界  作者: 横須賀かもめ
30/99

三歳児の子供がリュックを背負っる姿は何事にも変えがたし可愛さである⑧

 日本の雨の身体にまとわりつく湿気は、体力を奪いにくるねとガリクソンが言う。

 「そうだね」同意する恵。

 「ゲンキナイネ」と心配するガリクソン。

 「そんな事ないよ」と言う恵。

 「イマカラアウヒトハ、ニガテナノ?」

 「うんうん、会いたいけど、会いたくない人かな」

 「ムズカシカンケイナンダネ‥‥‥キット」

 何も答えず、傘に当たる雨の音だけ聞いていた。

 病院に着き、奄美のお祖父ちゃんの病室を訪れると、お祖父ちゃんが上半身裸で腕立て伏せをしている。




 呆気に取られその光景を見ている恵とガリクソン。

 お祖父ちゃんが気づき「オッ恵ちゃん、久しぶり!」と元気な声で挨拶してくる。

 「お、お久しぶりです」と慌てて恵が言う。

 間髪入れずに「日本に帰って来てたのか、そっちの外人さんは?」

 ガリクソンが慌てて「ア、アッワタシハガリクソントイイマシテ‥‥‥」

「おう良い!  兄ちゃん長旅御苦労、座って待ってな! 今、日課の腕立て伏せしてるから!」と腕立て伏せを続けるお祖父ちゃん。





 その腕立て伏せのスピードにビックリする恵とガリクソンの二人。

 病室に看護師が入ってくるなり、「横山さん! また腕立て伏せしてダメじゃないですか! 安静にしてないと!」と慌てて止める。

 「いやでも日課だから」と喋りながら続ける腕立て伏せに、呆れながら看護師さんが

ガリクソンに「私の言ってる意味、解りますよね?」と聞く。「イエス」と答えるガリクソン。

 「ほらっ外人さんも理解できるんですよ」と看護師さん。




 「おっ外人さん、ガリクソンだったっけ、恵ちゃんとはフィリピンで知り合ったか?」

 呆気に取られているため、恵が「そうです」と変わって答える。

 「どうだい恵ちゃんは、向こうで元気にしてるのかい?」と腕立て伏せを止めてお祖父ちゃんが聞く。

 これにはガリクソンが「ソレハモチロン! ゲンチノコドモタチノタメニ、ヨクシテマスヨ」と。




 「汗水流して働くのが、一番だ。恵ちゃん休暇でこっちに?」と聞かれたので、「はい」と答える。

 「働いて休んで遊んで、人生を謳歌しなきゃな、若いんだから」

 「お祖父ちゃん凄い元気そう」と素直な感想を言う恵。

 「ちょっと風邪をひいて体調崩してな。そしたら息子と息子の嫁さんが、病院にっていうからさ。でももう大丈夫だ。ありがとさん」

と、奄美のお婆ちゃんは恵が高校の時に、病気で亡くなっている。




 「心配して来てくれたのか?」とお祖父ちゃんが聞いてきたので、「そりゃもちろん」と答えると、「申し訳ないことしたな、せっかくの休暇中なのに」とお祖父ちゃんが申し訳なさそうな顔をしている。

 すかさず「そんな事ないですよ」と笑顔で言う恵。




 「あっこれ父からです」と昨日渡された、ガジガジのサイン本を手渡す恵。

 それを見て、「泰斗とは連絡取り合ってるのか?」とお祖父ちゃんが聞く。

 「は、はい、たまに」と答えにくそうに答える恵。

 「奄美の事は気にしなくていいんだぞ」と言ってくれるお祖父ちゃん。

 二人のやり取りを見ているガリクソン。




 お祖父ちゃんから、奄美と泰斗の近況を聞き、こちらも仕事で行っているフィリピンの話しをガリクソンとし、お祖父ちゃんが疲れてきたので病室を後にした。

 帰りしなにガリクソンが「ナントナクワカッタカモシレマセン」と。

 恵が「何が?」と聞く。

 「メグミガナニニナヤンデ、マヨッテイルノカ」

 「‥‥‥」あんな降っていた雨が止んで、

視界のとても先の空高い所に虹が見える。

 数日後、奄美のお祖父ちゃんが亡くなったと知る。

 


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