五十嵐泰斗と雨竜雷③
「そんなに改まっての挨拶ありがとうございます。週刊アクティスにいらしたんですね」
「そうなんですよ」
「どの漫画家さんの担当とかあったんですか?」
「はいっガジガジって言う漫画描いてる安井って子とか、新人の子とかですね」
「あれ面白いですね。読んでますよ」
本棚に目をやりガジガジが全巻揃ってることを確認する泰斗。
「漫画も読むんですね。小説家の先生とどう接したらいいか分からなくて‥‥‥」
微笑みながら「小説家だって普通ですよ。むしろサラリーマンよりも適当ですよ」
すぐに「いやいやそんな事ないでしょう」
「自由業なんて、好きな時に働いてるだけですから」
「雨竜先生は、自由ではないでしょう?」
実際、雨竜雷は角早出版からデビューした以降、複数の出版社から小説を出している売れっ子小説家である。
長期的に休んだことは、デビュー以来ないと思う。
デビュー作が新人賞を受賞し、その後も何作か文学賞を受賞しているし、候補作にも何作か入っている。
その内の一つは、普段小説を全く読まない泰斗でも知っている作品である。
絵描きとミュージシャンという異色のコンビが事件を解決するという探偵小説で、人気の俳優二人を起用して映画化にもなっている。
その映画を奄美と二人で見に行ったから覚えていた。
映画も面白かったけど、原作の小説はもっと面白かったと、奄美の感想である。
「でも雨竜さんは、休みなく小説書いてるんじゃないんですか?」やはり自分の中から何かを生み出す人間は凄いと思うからこそ、
雨竜の普通っぽさを否定したくなる。




