五十嵐泰斗と雨竜雷②
お金を払いタクシーから降りて、マンションのロビーに少し少しだけ緊張しながら入り、
部屋番号を押す。
「はい?」「あっ角早出版の五十嵐です」
「あっどうぞ」とドアが開く。
声を聴いた印象としては、静かというよりも暗いという感じの方があっているかもしれないと感じながら入っていく。
自分の内から何かを作り出す人間は、そういうものなのかもしれない。
自分の領域に他者を入れさせない空気で作った壁を持っている。
雨竜雷の仕事場がある階に着き、部屋の前で改めてインターフォンを押す。
いきなり扉を開けられ雨竜雷が姿を現す。
身長は高く百八十近くあり、体型はスリムである。ヘアースタイルはショートでワックスで整えられて清潔感があり、暗いと印象は全くない。
むしろ根明の印象さえする。
慌てて「初めまして、今日から雨竜先生の担当になりました五十嵐です宜し‥‥‥」
「先生は止めて下さいよ」
「‥‥‥は、はい?」
「年齢変わらないじゃないですか」間抜けな相槌をうってしまう泰斗。
初めの印象と打って変わって、優しい口調で「中へどうぞ」と促される。
リサーチとも、声の印象とも違って呆気に取られながら部屋に入っていく。
部屋の中に入ると物の少なさが目に付いた。
ディスク・PCにソファとテーブルに、部屋の右隅に本棚がある程度である。
ソファに案内され座る泰斗。
コーヒーを淹れ、持ってきてくれる雨竜。
立ち上がり「改めまして、五十嵐泰斗です。
この度、雨竜さん担当させて頂くことになりました。宜しくお願い致します。以前までは、
角早出版の週刊アクティスに所属していて、初めての文芸部門ですが、何でも言ってください」と担当者として、最低限の挨拶を済ます泰斗。




