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約1つのラベルと心臓  作者: 大門 笏
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第n+7話 濡れ手が鱚

「私の前世はかものはしと言われたぐらいよ」

「褒めてんのかそれ?」

 この世界の水族館には面白いものがある。そう言った侍乃公他じおれた 美都子みつこに連れられて二会手にえで 夏雄なつおは今、スナメリの泳ぐ様を眺めていた。

「みんな元気に泳いでるわねー」

 美都子はスナメリの水槽を見つめながら呟いた。

「だなー」

「水を得た魚のようね」

「そのままだな」

「違うわよ。スナメリは哺乳類だし」

「そこそんなに大事じゃねぇだろ」

「全然違うわよ。絵画とガイガーカウンターぐらい」

「そこまでじゃねぇだろ」

「知らないの?スナメリって自分の身を守る為に、襲ってきた魚に菌糸を植え付けるのよ?」

「いきなり何言ってんだ」

「こうして魚に寄生して育ったものが、スナメ子、俗に言うなめこなの」

「んなわけあるかよ」

「ほら、ぬるぬるしてるでしょ?あれ海水」

「海水はぬるぬるしてねぇけどな」

「趣味にマジになると明るくなるというし、海水とぬるぬる成分が化学反応してぬるぬる成分になってるのよ」

「海水いらねぇな」

「これを知らないってことはもしかして、筋子の由来も知らない?」

「なんだよ急に」

「おおっぴらに言えない筋から情報を得ている人達が自分の身を守る為に、捕まえに来た警察に菌糸を植え付けるのよ?」

「海産物ですらねぇな?」

「こうして人間に寄生して育ったものが、スナメリ子、あ、じゃなかった」

「無茶苦茶じゃねぇか」

 たらたらと雑談しながら色々な所を見て回ると、ふと美都子がスマートフォンを開いてハッと目を見開いた。

「大変!もうそろそろ始まっちゃうわ!」

「お前のスマホ電波通るのかよ」

「それはいい物使ってるからね」

「ふーん、んで、何が始まるんだ?」

「このスマホはね、異世界間の壁を無くしたい。そう思って作られたの」

「解説してる暇あるのか?」

「日本のバッタとケンジェロスウィサイ王国王都独立州のコオロギナギスも通話出来るのよ?」

「する意味が無いな」

「意味が無いというのは早とちりよ。鰯の頭にも涙。来年の話をすると鰯の頭が笑うって言うじゃない」

「ホラーかよ」

「隣の芝生を愛することしばし。でも最初の1歩を踏み出したことを認めることは大切だわ。それにほら言うじゃない、あんずの安売りって」

「ただのスーパーじゃねぇか」

「ってこんなシャンプーも無い話をしてる場合じゃなかった!」

「やっぱりかよ」

「私ったらつい横道に逸れちゃう性格で」

「現時点で横道に逸れてるな」

「でもこの性格のおかげで助かってることも50回100回でも無いのよ?」

「いいから本題行けや」

「この前、逆立ちしながら豆腐屋を冷やかしてたんだけど、」

「もう既に変だな」

「豆腐屋の店主さんがあまりにも、暑い暑い暑すぎてアットホームな職場の扱いに追従してしまう、って言うから、」

「普通言わねぇよ」

「私の、周りの意見に流されるような足さばきで擬似的にそよ風を送ってあげたのよ」

「地味すぎんだろ」

「馬耳豆腐ってやつね」

「わけ分かんねぇよ」

「まぁ嘘なんだけどね」

「今に限った話じゃないだろ」

「あら、バレてる?」

「当たり前だろ」

「っていうわけでイルカカショー見に行きましょう!」

「へ?」

「早く!一日千秋よ!」

「微妙に意味違わないか?」

 早足で駆ける美都子に、慌てて夏雄は着いていった。



「イルカカショー、間に合ったわね」

 がらんどうの客席の最前列に座り美都子は一息ついた。

「おい、誰もいねぇぞ」

「そうね」

「今、ショーの何分前だ?」

「45分前ね」

「早すぎるだろ!」

「まぁまぁ言うじゃない。磯で泳ぐのは稀って」

「言わねぇよ」

「それにこういうので大事なのは、最前列を取ることなのよ」

「そうなのか」

「それで、雨合羽の準備はいい?」

 そう言うと美都子は紫色の雨合羽を取り出して被り始めた。

「は?」

「えぇ!?夏雄君ホントに夏雄君!?」

「どういう意味だよ」

「本物の夏雄君なら、いざという時の為に雨合羽を12000個程用意している筈よ!」

「俺は雨合羽屋かなんかか」

「本物の夏雄君の口癖は『河童は川を流れながら計算してる』なのに」

「んなわけあるか。んで、なんで合羽を被ってんだ?」

「今からイルカカショーなんだけど、イルカカが水槽から思いっきりジャンプするから、酸の水が前の方の列にかかるのよ」

「はぁ!?」

「まぁでも大丈夫よ。血は水より濃いって言うし」

「意味が違ぇよ」

「イルカカは癒し系動物だけど、強酸の水の中じゃないと棲息できないってのは困ったものよね」

「つーかその、イルカカってなんだ?」

「イルルカは海に棲息する哺乳類よ。紫色のリーゼントで餌を絡めとったり物との距離感を計ったり出来るわ」

「……」

「いやホントに」

「……それ、癒やされるのか?」

「癒やされるわよ?俗に言う、カワイクナイカワってやつ」

「矛盾してんじゃねぇか」

 色々と話をしたり雨合羽が品薄で買えなかったりしていると、イルカカショーが始まってしまった。

「大丈夫かぁ……?」

「大丈夫よ。心頭滅却した体を揺すっても音は出ないって言うし」

「大丈夫じゃなそうだな」

 若い女が壇上で元気よく大きな声で挨拶をした。どうやら始まるらしい。

「では、今日ショーをしてくれるのはぁ、この子達でぇす!」

 そう言って彼女が示した先にいたのは、8頭のイルカカだった。

「…………」

 老若男女が喝采をあげる中、夏雄はなんとも言えない気分だった。

 イルカカだが、イルカに紫色のリーゼントと赤色の2本足と青色の雄大な翼をつけた様な容姿で海を泳いでいた。

「癒やされるか?」

 イルカカは空気抵抗の強そうな体でバシャバシャ泳いでると思ったら、不意に顔だけを水面上に覗かせたり、随分自由に泳いでいた。

「……そろそろ来るわよ夏雄君みたいな人」

「本物だっつの」

 3頭のイルカカが大きく跳ねた。来るということで夏雄は身構える。

 イルカカ達が同時に思い切り水に飛び込んだ。

 それと同時に波のような水飛沫が最前列の夏雄達を襲い、



 溶ける前に帰ってきた。

 そして夏雄はいつものように付箋を見つけた。

『水清ければ都で右往左往出来る』

「つーかあいつはイルカカちゃんと観れたのかな?」

 美都子の書いた付箋を捨てながら、夏雄がポツリと呟いた。

僕「イルカカって名前なんかと被ってるとやだからツイッターで調べるかー」

腐女子「イルカ×カカシ?カカシ×イルカ?」

僕「」

知らんかったのでそこだけは覚えて頂きたい。

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