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絶滅世界 (ZOMBIE LIFE)  作者: バネうさぎ
第二章 Past days
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Past days -2-

 この日は、久しぶりに高校時代の友人達と会う約束をしていた。

 昼の14時に集合時間を決めていたので、自宅で昼食を済ませて、その後自宅の最寄駅から二駅先にある集合場所の駅まで行く手筈である。


 俺は冷凍食品のチャーハンとフライドポテトを解凍して、ダイニングではなく、リビングに食事を持っていった。


 ソファーに座り、テレビを点け、プラスチックのレンゲでチャーハンを口に頬張る。

 包装袋に表記されていた解凍時間にも関わらずチャーハンは一部未解凍状態のままだったが、温めなおすのも億劫なので、そのまま食べ続ける。


 テレビには、昼の情報番組が映されている。

 最近では、めっきりテレビを見る機会が減った。


 厳密には、テレビはリビングで流しっぱなしにしているのだが、ほとんどBGM代わりになっていて、内容に真剣に目を凝らし、耳を傾けることはニュース番組以外ではなくなった。

 小中学生の頃は、好みのバラエティ番組が毎日あり、それを楽しみに見ていたのだが、最近では全くといっていいほど気になるテレビ番組がなくなってしまった。


 俺の精神年齢が上がったのか、それともテレビ業界が衰退しているのかはわからないが、ネットを見ている時間が倍増したのは事実だ。


 ネットのニュースの報道スピードは、テレビを凌駕し始めている。

 テレビ報道の情報ソースが、Twitterやfacebookといった現象も起こり始めており、テレビはネットをトレースしているといえる。


 今やっている昼の情報番組のネタも先にネットで話題になっている件がちらほら見れる。

 出演している芸人に至っても、ネットスラングを当然のように使っている惨状だ。


 だんだん不快になってきたので、俺はチャンネルを変えた。


 ニュース番組に変わり、画面は厳粛な雰囲気へと変わる。

 男のニュースキャスターは、真剣な顔で原稿を読み上げた。

 

 『食品卸売業大手の赤丸食品が、千葉県内の一部食品について産地偽装を行っていた件について、東京地検特捜部などは今日、神奈川県横浜市の本社などを一斉に家宅捜査しました。』

 画面は東京地検の捜査員が、食品会社の本社に一斉に乗り込む画に変わり、キャスターはその画に合わせて原稿を読み上げていく。


 今までは、企業の不正のニュースに真剣に耳を傾けることはなかった俺だが、来月には就職活動を控えているので自然と耳がひきつけられる。


 『次のニュースです。中国上海にある上海第三総合病院が、ウイルスの院内での集団感染を受け、一部病棟を閉鎖しました。

 中国の疾病予防対策センターの報告では、集団感染の原因は調査中だが、迅速な対応で感染拡大を防ぐことができたと発表しています。』

 画面は先ほどとは打って変わって、現場の映像等は流れず、平凡な顔つきのキャスターだけが中央に鎮座している。


 結局この話題が終わるまで、映像は全くでなかった。

 メディアの情報収集能力に不信感を抱いたが、かといって抗議の電話をするほど暇ではない。

 壁掛け時計を見て、時刻が13時になろうかとしていることに気づき、俺は身支度を始めた。


 集合時間の丁度5分前に駅に到着する電車に乗って向かうと、改札前に友人達は既に集合していた。

 向こうもすぐにこちらに気づき、お互いに笑顔で交信する。

 通学定期を使って改札を出ると、友人の中で一番色黒の男が駆け寄ってきた。


 「雄ちゃーーん!」

 俺は、色黒のむさくるしいハグを躱して、その様子を笑顔で見守っている2人の元へと歩く。


 「うーーーっす。」

 軽く挨拶を交わして、他愛もない雑談に入る。


 今日、集合したのは、俺を入れて4人。

 いずれも高校時代のクラスメイトだ。

 先ほどの色黒の友人の名前は、前島竜生。

 あだ名は、‘‘リュウ‘‘だが、俺は前島と苗字で呼ぶことが多い。

 色黒なうえに彫りが深く、高校時代から女子にモテていた二枚目で、性格は親しみやすく、誰にでも優しい。

 テンションが高すぎるのが玉にキズであり、今回の出会いがしらのようにいちいち相手にしていてはきりがないので、スルーすることを覚えるのがうまい付き合い方だ。


 そして、他の二人の名前は、森田弘樹と川井信弘。

 よく使うあだ名は、‘‘ヒロ‘‘と‘‘ノブ‘‘だが、ヒロに至っては、タモリと呼ばれることもある。

 この二人も容姿はそこそこの二枚目で、高校時代にはそれぞれの彼女と下校する姿を見かけた。

 今は4人とも、別々の大学に通っているが、1か月に一度は必ず会う程度には仲がいい。


 「今日は、何するん?」

 俺が、問いかける。


 すると、3人はいたずらっぽい笑みを浮かべた。

 「それが...僭越ながらわたくし、今日は、雄ちゃんのために、合コンを主催しました!」

 前島が、嬉しそうに切り出す。


 「まじか!?」

 俺は驚いて、思わず声を上げ、狭い駅の構内で目立ってしまった。


 「ヒロもノブも知ってたのか!?」

 先ほどの反応で察しはついたが改めて俺が問うと2人は肯定する。


 「前々から雄ちゃんが、彼女欲しいって言っていたから、今日は俺たちで全力でサポートさせてもらうぜ。」

 3人は、自信満々に親指を立てる。


 大学に入ってから3年、俺は若い女性のいない環境にいたわけではない。

 今、所属しているサークルでも一年の夏まで所属していた酒飲みサークルでも、女性と接する機会は多々あった。

 しかし、彼女を作るというプロセスを構築することをためらって、男友達ばかり作ってここまで来てしまった。

 俺も20代の健康優良児なので、彼女が欲しくない、エッチにも興味がない訳は当然ないのだが、理由がある。

 それは拒絶されて傷つくことが怖いといういかにも軟弱な理由なのだが、友人にそのまま言えば、軽蔑されるかもしれないので、表向きには面倒くさいという少しだけ気持ちにある理由を述べている。


 「桐山もそろそろ彼女作れよ。20歳越えていつまでも童貞じゃやばいぞ。」

 

 「うるせえ。ほっとけ。」

 

 ヒロの冗談交じりの煽りを、俺は笑いながら返す。

 他の2人もその様子を見て、笑う。

 高校時代と変わらないテンションで接してくれるこの仲間達はやはり落ち着く。


 「さあ、じゃあ合コン前にカラオケでも行ってウォーミングアップするか!」

 俺達は合コンの集合時間の18時まで、高校時代と同じテンションでカラオケボックスで大騒ぎした。


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