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絶滅世界 (ZOMBIE LIFE)  作者: バネうさぎ
第一章 One day
4/46

One day -4-

 「行きはよいよい帰りはこわい」

 

 有名な童謡「通りゃんせ」の一節だが、その意味は、行きは無事でも帰りには何事か起こるかもしれないというものだ。

 俺もこの心理状態に従っている。

 帰りには行きとは違う危険がある。

 それは自分の拠点を晒すという危険である。


 帰るという行動はつまり、1か所に自分の動きを集約させるということで、自分の選択した移動ルートによっては、ゾンビを大量に引き連れてくる可能性がある。

 他の生存者に関しても同様である。

 さらに困ったことに回収した物資で、俺の重量は行きより15キロ程増えている。

 必然的に動きは鈍くなり、危険度も増す。

 

 いざとなれば、物資を捨てて逃げる覚悟は十分にあるが、できればしたくはない。

 荷物を置いて逃げて後日再び取りに戻るという選択肢もあるが、1度ゾンビがいた場所に戻ることは精神衛生上良くない。

 

 ではどうするか。

 簡単なことだ。

 出会いは一期一会。

 今日出会ったゾンビは今日のうちに始末する。


 やつらの弱点は、多くのゾンビ映画そうであるようにただ頭部を破壊することだ。

 この古くから伝わる手法は、実際多くの人の決断力のある人々の命を救った事だろう。

 もちろん俺もその一人である。


 映画「バタリアン」のゾンビは、頭を落としてもバラバラにしても動いていたが、こちらのゾンビはそこまでタフではない。

 頭を落とせば、活動を停止しするし、切り落とした部位が個別に動き出すこともない。

 それにバタリアンのゾンビのように全ての個体が全速力で襲ってくるということがないことは優しい。

 こちらの世界で全速力で走ってくる個体は、生前の肉体が若く、欠損が少ないという条件がある。

 ただ悪いことに、多くのゾンビ映画に忠実に全てのゾンビが頭部以外の欠損では動きを止めず、凶暴である。

 

 

 パンデミックが初期の頃、ある海外のニュースサイトで、ゾンビ患者に実験をおこなったという科学者が現れた。

 その科学者の報告によると、完全に転化した患者は痛覚を失うが嗅覚、聴覚、視覚については、生前の程度に準拠し、対象が生物であるか無機物であるかの区別までしたという。

 また、人間に関わらず、赤い血の滴る肉に反応を示したという報告もした。

 科学者は、このたった一度の報告を自身のブログでした後に消息を絶った。


 

 帰りは、行きとは違い大通りを避け、裏道から移動する。

 裏道を使えば大通りを使うよりもタイムロスすることは必至だが、ゾンビの動きには波があるから仕方がない。

 

 海岸に引き潮や上げ潮があるようにゾンビたちは、時間帯によって居る場所が違う。

 生前の動きをトレースしているのか、時間帯によって場所に好き嫌いがあるのかはわからない。

 ただ、一定の動きの法則性はあり、それを見極めることで彼らに出くわす確率を格段に下げることができる。

 そういう訳で行きに通ってきた大通りは、今の時間帯は彼らのものなのだ。


 裏道は、乗用車1台分の広さでその沿線に木造で瓦屋の民家が多く立ち並んでいる。

 昔からこの周辺に住んでいる人々がお隣さんを変えることなく、住み続けていたようだ。

 近隣に高層マンションを建造する計画が持ち上がった時は、この周辺に昔から住む人々総出で反対活動に精を出していたことを覚えている。

 それが今は立ち並ぶ家々の広々とした庭は今では手入れをする人はいなくなり、どこも俺の歩いている道から見えるほど背の高い草が柵を越えて生えている。


 俺は、彼らと鉢合わせしないことを祈りながら足早に歩みを進める。

 先ほどは波があるといったが、台風の時には荒れるようにいつも同じ天気という訳にはいかない。

 法則性から外れる者は稀にいる。


 そして、家の角を曲がった先にそれはいた。

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