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絶滅世界 (ZOMBIE LIFE)  作者: バネうさぎ
第二章 Past days
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Past days -3-

 俺は結局、合コンで何の収穫も得ることはできなかった。

 集合した相手側の女の子はこちらと同じ4人で、4人とも容姿は俺目線では十分に可愛かったというのが俺の感想だ。

 職業は4人のうち、2人は専門学生で、残り2人は地元の大学生で、話を聞くとどうやら前島の大学の女友達の紹介で来たようだった。


 前島が筆頭となって話を盛り上げ、他の2人も積極的に話題を振ってくれたのだが肝心の俺は女の子と久しぶりに会話する緊張と合コンという慣れない場で完全にあがってしまっていた。

 女の子達を笑わせよう、場を盛り上げようと、必死に考えて出てきた話題は自虐ネタや下ネタばかりだった。

 初対面の男友達にもウケるネタなので、あがっていた俺にはこれが精一杯の抵抗であったし、ウケるのではないかという少しばかりの期待もあった。

 抵抗むなしく、女の子の反応は至極単純で愛想笑いと聞いていないふりのオンパレードだった。

 友人達の必死のフォローもむなしく、全員で作ったLINEのグループに参加しただけで、俺は1人の女の子とも親密になれずに初めての合コンを終えることとなった。


 「今日の女の子は、雄ちゃんのお眼鏡には適わなかったんだな。」

 俺の気持ちを察した前島が俺にフォローを入れる。


 「ま、気にすんなよ。今日の女はあんまり可愛くなかったから、俺もテンション下がってたし。」

 ヒロが続き、ノブが同意する。


 「お前ら、あの後女の子から連絡来たか?」

 俺は合コンの終わりに作成して以来、更新のないLINEのグループを眺めながら聞く。


 「ないない。」

 全員が否定したが、これも恐らく俺を気遣っての事だろう。

 友人達の話しているときと俺が話しているときで女の子達の目つきが全く違っていたし、話題への食いつきも違ったので、今頃友人達の誰かしらに個人的にメッセージが来ていてもおかしくない。


 「今日はありがとよ。すまんな。協力してくれたのに。」

 俺が謝ると友人達は再度フォローを入れ始めた。

 いっそのこと、ネタとして扱ってくれた方が楽だったが、彼らの真剣なフォローに俺はそれ以上この話を続けることが気まずくなってしまった。


 友人達とそれぞれの駅で別れた後、俺は酔い覚ましに真夜中の商店街へと繰り出した。

 大型モールの出店でシャッター街と化した商店街は、昼も夜もほとんど同じ景色をしている。

 上を見ると歩行者を雨から守るために商店街に取り付けられた分厚い布の屋根から去年の夏祭りの提灯がまだぶら下がっていた。

 俺は、夜空が見たくて屋根を出て道の真ん中へと出た。

 時間帯のせいか俺の気分を汲んでか、歩行者が他にいなかったので、センチメンタルな気持ちで存分に自己陶酔に浸ることを楽しんでから帰路についた。

 

 

 そこから数日後、就職活動が解禁となった。

 俺は食品業界の営業職を第一志望にして、毎日数多くの企業説明会に一人で参加し、活動を進めた。

 その日の企業説明会が終わり、帰宅すればSPIの勉強と履歴書との睨み合い。

 やがて面接も徐々に始まり、俺の悩みは彼女ができないことから、就職への不安へと移行していった。

 不安をかき消すために、就職指南書に書かれたことを実践する。

 例えば、履歴書の学生時代頑張ったことの欄で些細な経験を膨らませて大きく見せる努力や面接対策用に常に口角を上げておく練習等だ。

 口角を上げておくことは日課となり、知人からはさわやかになったと言われるようになった。

 そして、新聞を読むことも日課となった。


 面接では、最近の気になるニュースを聞かれることが多い。

 この時に、役に立つのが、新聞の情報だ。

 新聞には、ジャンルごとに様々な記事が掲載されており、どのジャンルから聞かれても答えに困らないし、集団面接でネタが被ることも防ぐことができる。

 俺が最近気になっているのは、中国で多発する暴動についてだ。

 中国政府は以前からチベット人やウイグル族との対立が絶えなかったが、最近では都市部でも暴動が頻発し、遂に日本政府は中国への観光目的での渡航を制限するようになった。

 その話題に中国への旅行経験があることを絡めて語るのが俺の面接での鉄板トークとなっている。

 就職活動を初めて、3か月。

 徐々に成果が出るようになり、余裕からか俺は面接でも緊張せずに雄弁に語るようになっていた。


 そして7月の終わりに無事に地元食品メーカーの内定をもらい、就職活動を終える頃に世界は1つの問題に直面していた。




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