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主人公の容姿が出てこない!!

いや、ちらっと初めに書きましたが、黒髪黒い瞳のキリッとした美人さんです。エリーほどではないですが、美人の部類には十分入ります。

異世界転生補正と言えば、容姿が美形になることも必須だと、筆者は思っております<m(__)m>

 王宮に帰ってからが大変でした。


 ハーディガン様に抱えられ、しかも馬に二人乗りし、心身ともにというか、主に精神的にダメージ大の私に、エリーが突撃。危うく後ろにひっくり返るところを、またもハーディガン様が支えてくださいました。


 なんでも、エリーが狙われるのはまあ必然で、あぶり出しも兼ねて好きにさせていたところ、まさかのわたしの誘拐。が、すぐに救出に向かうはずが、あまりのエリーのショックの受けように大慌て。自分も行くというエリーを宥めすかしてようやくの出発だったらしい。


 実はエリー、末の王女で上に二人も兄がいるのだが、その二人は側室の子。正妻である王妃様の子どもは、エリー一人だけ。


 王位継承権は、順番なので3番目だが、王妃を溺愛している国王がエリーに王位を譲るというかもしれない。それを危惧した人たちが、生まれたばかりのエリーを狙い、命からがら孤児院に逃げ延びることが出来たのだ。そのエリーがまた王宮に戻ったのだ、狙われないはずがない。


「ホント、絵にかいたようなヒロインね・・・・」


 私にしがみついて離れず、子どものころのように同じ布団で眠りについたエリー。横で必死に私の服をつかむエリーを起こさないよう、そっと体を起こす。


 顔にかかる髪を払ってやりながら、ぼんやりと思う。


 エリーの正体が分かってから、いつかこういう日が来ることを予感していた。


 けれど、城下の貧しい孤児院で暮らすよりも、本当の両親の下、王宮で暮らす方がエリーにとって幸せだと思ったから。


 でも、それは私の意見だ。エリーは本当はどうだったのだろうか?


「・・・・ごめんね」


 私は、彼女にヒロインという偶像を押し付けていたのかもしれない。その美しい姿に。物語のような出自に。嫉妬すら、していたのかもしれない。


 ・・・・・・嫉妬はないな。私はヒロインなんてのしつけて返すわ。


 手が緩んだところで、するりと布団から抜け出る。ガウンを引っ掛け、そろりと外に出る。


 エリーの住居は王宮の奥。すぐ近くには、手入れの行き届いた庭がある。


 そこに向かいながら、いろいろと考える。


 ふと、手首に巻かれた包帯を見て、ぶわっと顔が赤くなる。


 見られた、知られた、触られた、お姫様抱っこ!!


 もう何を恥じればいいのか分からない。


 いつも必死で作ってきた私という仮面を、いともたやすく剥がされてしまった。


 ・・・・うん、あの時は仕方ない。誘拐なんて、非常事態、そうそうないない。


 言い聞かせるように心でつぶやきながら、噴水へと向かい。


「何をしている?」

「ぎゃ!!」


 背中にかかった声に、驚いた。もう少し、女の子らしい悲鳴を上げたかった。


 恐る恐る振り返れば、不機嫌さを隠そうともしない金髪の騎士の姿が。


「お前は馬鹿なのか?あんなことがあった夜に、一人で外に出るなんて・・・」

「・・・・・・すみません」


 チッ、金髪のくせに正論いいやがって。


「改めて、助けていただいてありがとうございました」

「ふん、いつもと違って随分しおらしいじゃないか」


 腕組をして不遜に言われると、お礼を撤回したくなりますよ?


「私を助けるために、エリーの警備を薄くするわけにはいきませんから」

「・・・・ああ、お前はそういう奴だったな」


 ものすごく嫌そうに顔をしかめられた。というか、まだそんなにあなたと一緒にいたつもりはありませんが?


「ハーディの言葉、にわかに信じがたいな・・・」

「??」


 ハーディガン様が何を言ってのだろうか?お姫様抱っこされたところは、彼にも見られている。できれば記憶から抹消してほしい。


「お前がいけ好かない女であることは変わらないが・・・」


 おい、お前喧嘩売ってんのか?


「お前がエリー様を大切に思っていることは、理解しているつもりだ」


 何を言っているのだろう?耳がおかしくなったのだろうか?


 ぽかん、と間抜けな顔をした自覚はあった。明後日の方向を見ながらしゃべっていた金髪が、こちらを向いてものすごく不機嫌そうに、しかも舌打ちまでしたから。


「だから、俺はお前が嫌いだ」


 それは私もです。よかったです、同意見で。


「さっさと寝ろ。となりにお前がいないことに、そろそろエリー様が気づくかもしれない」


 エリー第一主義なのは、あなたじゃないだろうか?


 よくわからないが衝撃を受けすぎた頭は、なるほど、よく回っていない。


 大人しく回れ右した私を、律儀に部屋まで送るこの男を、少し見直してもいいかもしれない。そう思った夜だった。

ウィリアム様は実は優しい人。

自分も守れない人間が、他人を守れるはずがない、という考えから主人公を嫌っています。

が、それはそういう風にふるまってるだけで、意外と心配性。


でも、有事の際にはきっぱり切り捨てられるだけの非情さもあります。

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