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タイトルが中身と合わなくなってきました・・・・。
すみません。
そんなこんなで来ました王宮。私は、エリー専属侍女として働くことになりました。給料も出るそうです、よかった。
で、エリーは両親と感動のご対面。その場に私はいなかったけれど、エリーの様子から感動的であったことには間違いないだろう。
王宮での生活も、悪くはない。どころか孤児院よりはるかにいい。
使用人の部屋なのにベッドはふわふわだし、食事もおいしい。まあ、引っ越しの際に本を持ってこれなかったのが不満と言えば不満かな?
あ、最大の不満は護衛騎士。
「王女様、本日もご機嫌麗しく・・・」
んたらかんたらとあいさつも長い金髪騎士、ことウィリアム・ルイ・アレクサンドラ。公爵家のボンボンにして、近衛騎士団団長。腕はいいらしいけど、性格は最悪。
「・・・・・どうぞ」
「わぁ、ステラ、今日のお茶は何?」
「東が原産の茶葉を使った紅茶です。癖のないすっきりとした味が特徴です」
「そうなの!!昨日のは香りが強かったから、こっちの方が好きかも」
「・・・・ふん」
あ、脳内にメモしましたね?
やたら平民が、的な目で見られるので、最初のうちから相手にしなかった。今はスルーだ。奴は空気だ。最近では、私の全く堪えた様子のないことに、歯噛みするやつを見るのが楽しみだ。
護衛騎士は交代制なんだけど、金髪は毎日のように訪れる。仕事はどうした?
「へぇ~、盗賊の退治もお仕事なんですね」
「悪をのさばらせるわけにはいきませんから」
では、ヒーローに転職したまえ。
「ステラも、悪いことは許せなくて、私をいじめた男の子たちを退治してくれました!!」
「・・・・・ほぉ、侍女殿も・・・」
キラキラと輝くエリーの瞳とは対照的に、ギラギラとした光が宿る金髪の瞳。
いや、勝手にライバル扱いしないでくれるかな。そもそも、私性別女だし。
行方不明だった王女様に、大貴族のボンボンが恋をする。まさにヒロインが出てきそうな物語だ。
と、そこにノックの音が響いた。ついで、顔を出した人物に、金髪の顔が一瞬歪んだのを、私は見逃さなかった。
「ウィリアム殿、ここにいらしたのですか」
茶髪の騎士の名を、ハーディガン・ストニアという。こちらも貴族で、伯爵家の次男らしい。
最初の印象通り、堅物で有名な彼。もう一人の護衛騎士だ。
「本日は、訓練の予定でしたが・・・」
「今行こうと思っていたのだ」
嘘つけ。
「訓練って、剣のですか?」
ここで天然エリー。騎士が剣以外になんの訓練をするというのか。
「ええ、よろしければ見学に来られますか?」
お前の心は読めている。曰く、かっこいいところをみせてやろう、と。
「見てみたいです!!」
今日の予定が決まった瞬間だった。
城の南東にある大きな広場。名を、訓練場という。
「今日は実戦形式で行く。二人一組になり、それぞれ持てる限りの力で打ち込め!!」
お~お~、気合が入ってますねえ。
私はエリーのために傘をたて、机を運び、お茶を用意する。簡易観客席の出来上がりだ。
「わぁ、すごいね。ステラ、みんなすごいね!!」
「ええ、さすが騎士様ですね」
若干棒読み?気にしません。
まあ、さすが王宮の騎士といったところだろう。剣が動くたびに残像が見える気がする。
茶髪の騎士こと、ハーディガン様は訓練に参加しないのか、私たちの横で控えている。
一番見せやすい位置にやつが陣取り、部下相手に大人げない戦いを繰り広げている。
「ウィリアムさんすごいねぇ。全然攻撃されないね」
目をまん丸にしてつぶやくエリー。攻撃されないのではなく、反撃する隙を与えていないのだ。部下相手に大人げない。重要なので2回繰り返しました。
私は半眼でうつろ~にその様子を見つめていたが、次の瞬間ハッとしてエリーの前に出る。
「ステラ?」
後ろで不思議そうにつぶやくエリーを無視して、手のひらを前にかざす。
「風・・・よ?」
さらに私の前に出た人影に、詠唱が中途半端に終わる。けれど、微妙に発動された魔法が弱い風を起こし、さぁっと流れる。それと同時に、固いものが金属に触れる音が響いた。
「王女様!!」
「・・・・・・」
やつの声と共に、カチリと剣が鞘に戻る音がする。
「ありがとうございます。ハーディガン様」
くるりと踵を返した茶髪の騎士に、私はすれ違いざまに頭を下げた。
そう、かっこいいところをみせたいあまり、やつは相手の剣を弾き飛ばした。が、それはなんのいたずらかエリーの方に飛んできたのだ。
それに気づいた私が、魔法で防ごうとしたが、その前にハーディガン様がはじいてくれたのだ。
「いえ、ステラ殿は魔法が使えるので?」
「私に敬語は必要ありません。使えるというほどでもありません」
いーえ、チート能力万歳です。尽きることのない魔力が体の中に溢れそうなほどあります。しかも、詠唱は日本語なので、他の人にはなんの魔法を使うか悟られないし、大量の魔力のせいで詠唱が短くても発動。想像することが必要な魔法も、前世のゲームだの小説だのの知識のおかげでイメージがしやすい。まさに魔法チート。
「王女様、お怪我はありませんか!!」
「ええ、ステラとハーディガン様が守ってくれましたから」
「よかった、申し訳ありませんでした。つい夢中になってしまい・・・」
おやおや、意外と素直ねぇ。自分の非をちゃんと認めるなんて。
「・・・・お怪我は?」
「ありません。ハーディガン様のおかげです」
ついでとはいえ、私にも尋ねてくれるハーディガン様はいい人だ。寡黙で表情もあまり変わらないけど、やつに比べたら好感度は高いに決まっている。
久しぶりににっこり笑った私に、ハーディガン様が驚いたように固まったことを、私は残念ながら気づかないのだった。
次は他者視点で行こうかと思います。