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ちなみにカエン王国の由来は、花と園をつなげただけです。

他の登場人物も、ほぼ思いつきなので意味はありません。

 そしてやってきましたこの日が。


 洗濯物がはためく庭に不似合のきらびやかな人たち。


「お迎えが遅くなり、申し訳ありませんでした」

「えっえっ・・・」


 戸惑うヒロインことエリザベスは、なんのことか本当に分かってないので、おろおろするばかりだ。ちなみに、このエリザベスという名前は、生まれた直後に賊の手にかかって行方不明に、という当時の一大ニュースのなかで掲載されていた末の王女の名前である。私がややこしくないようにつけた。


 そう、もうお分かりであろう。


 王族が身に着ける自分の瞳の色を持つ宝石をあしらった薔薇モチーフの装飾品を持ち、現王妃の髪と瞳の色をそっくりうけついだ彼女だ誰であるか。


「わぁ、本当に来たねぇ~。しかもあれだ、今話題の女の子たちの憧れが勢ぞろい」

「・・・・マザー、おもしろがらないでください」


 呑気に高みの見物を決め込んでいるのは、この孤児院の主であるクレア。孤児院ではみな彼女のことをマザーと呼ぶ。


「いやいや、だってほらあれだよ?孤児院の入り口女の子たちでいっぱいだよ?」

「もうちょっとお忍びでくるとか頭はなかったんですかね?」


 おかげでちょっとした見世物になってる。


「あれだな、事前に言っておいてくれれば、観覧席とか設けたし、整理券とか・・・・。あっ、チケットさばけたね」

「エリーの一生を左右することで遊ばないでください」

「冗談だよ~。相変わらず厳しいね~」


 本気、ではないと分かっていても、小言を言ってしまうくらいには私はエリーを大事に思っている。


 マザーも、子どもたちを使って扉の前のお嬢様方からみにくいように洗濯物を移動させていた。あとは、馬車にのこった御者かなんかが追い払ってくれるだろう。


 と、話は進んでいるらしい。エリーが自分の出自を聞いて驚きの声を上げていた。


「わ、私が王女様」


 うん、あなた以外はみんな知ってましたよ?


 めんどくさくなったので、マザーの言う女の子の憧れに目をやる。


 エリーの前に膝をついているのが一番偉いのだろう。20代半ばくらいだろうか?エリーよりは薄い金髪に、白い肌。すっと通った鼻は高く、薄い唇は必死にエリーを説得するために言葉を紡いでいた。たぶん180㎝はあるであろう長身は、騎士服に包まれていはいるが、その身のこなしからも腰から下げた剣が飾りではないことを雄弁に語っていた。切れ長の、少し垂れた瞳は空の青。


 その後ろに並んで膝をつくのは2人の男。一人くらいエリーの同性を連れてくるという選択肢はなかったのだろうか?気遣いが足りない。


 向かって左の騎士は、短く刈られた茶色の髪に、鋭い瞳。目つきの悪さなら私より上だろう。騎士服越しにもわかる鍛えられた体。その体に合う大きな剣を腰に下げている。瞳は、珍しい深い紫。一文字に引き結んだ唇と言い、あれだ、多分寡黙なタイプ。でも、自分にも他人にも厳しいんだろう。こちらも20代半ばとみた。


 その横は、騎士服ではない長いローブのようなものを纏っていた。たぶん、魔法士団の人だろう。


 薄い水色の髪はやや長く、気弱そうな瞳も薄い灰色。肌も白いし、随分薄い印象の男だ。中々首を縦に振らないエリーに困っているのか、おどおどと視線を左右に揺らしている。なんか、うさぎっぽくて構いたくなる。年下かもしれない。


 3人そろって言えることは、かなりの美形であることか。


「で、でも、急にそんなこと言われても・・・」


 あ、やばい。キャパオーバーでエリーの瞳が潤みだした。やれやれ。


「エリー」

「ステラ!!」


 突然会話に入ってきた私を、金髪の騎士が不満そうに見る。あ、こいつ貴族主義だな。瞬時に敵のリストに入れた私は悪くないと思う。


「この騎士様たちの言う通り。エリーは王女様なんだよ」

「ステラまで・・・」

「大丈夫、エリーがどこの誰だって、私があなたの友達で家族であることには変わりないわ」

「ホント?」

「ええ。王宮に行っても、時々会いに来てね」


 このとき、ちらりと騎士様に視線をやる。曰く、エリーを連れ戻したければ話を合わせろ、と。


「・・・・王族である王女様が、軽々しく街に降りるなど・・・」


 が、空気を読めない奴であったらしい。お前エリーを連れていきたいのか、行きたくないのか!!と突っ込まずにはいられない。


 もちろん、こんなのウソである。王宮に行けば、最悪もう二度と会えないだろう。それでも、彼女は守られるべき人間なのだ。ここにいていいはずはない。


 顔には困ったような笑みを張り付けながら、内心では騎士に罵詈雑言を浴びせながら次の策を練る。


「大丈夫、離れていても、心はいつも一緒よ」

「・・・・心はあるという実証のされていないものです。そんな不確かなものに縋るのはどうかと・・・ひぃ、すみません」


 思わずにらみつけた私は悪くないだろう。うさぎの目が涙目になっていた。


「わかってるの。私は、この人たちと行った方がいいのは・・・でも、でも」


 ついにエリーの瞳から大粒の涙が零れた。こんな状況なのに、その美しさに目を奪われたであろう、呆けた顔になった目の前の金髪騎士を殴りたい。


「一人はいや・・・・。怖いし、寂しい」


 そういって私の胸に飛び込んできたエリーに、私は全面降伏せざるをえなかった。


 腕の中で、わがままいってごめんなさい、なんて言われて、それでも無理強いするなんてできるわけがない。


「う~ん、じゃあステラも行っちゃえば?」

「は?」


 そこでマザーの爆弾発言。


「だって、本当だったら魔法士試験受けに行くはずだったのに、エリーのためにやめたでしょ?」


 こてん、と首を傾げられてもあなたの年じゃ可愛くも、イエナンデモアリマセン。


「私は、この孤児院を・・・」

「うん、ステラがもうそれを目指してないのは知ってる」

「じゃあ・・・・」

「社会勉強的な?」


 エリーが一人で大丈夫になるまで、エリーの侍女にでもなればいいじゃん?というマザーの言葉の裏に、しっかり給料もらっって稼いできてね、という言葉が二重に聞こえたのは私だけだろうか?


「エリー、どう?ステラも一緒に行くよ。どうしてもダメだったら、戻ってくればいいよ」


 いやいや、一回行ったら戻れないでしょ。片道切符ですよ?


「うん。ステラも一緒なら・・・」


 普段甘やかしすぎたツケにしては、大きすぎるわ。


 私を置き去りにして進む話を中断したのは、やっぱり空気を読めない金髪騎士。


「孤児院出身の平民を王女様のおそばに置くなど、あり得ない!!」


 と、なんとそこに助け舟、私にしたら泥船を出したのは、今の今まで一言も発しなかった茶髪の騎士様。


「ウィリアム殿、王女様が彼女をと望んでおられるのです。我々がそれを咎めることはあってはなりません」


 おそらく、金髪>茶髪=うさぎの順番だろう。さらにそこに加えるなら、王族>金髪>茶髪=うさぎか。


「・・・・・王女様の思う通りに」


 こうして、ヒロインに巻き込まれて、私は王宮に行くことになりました。

心理描写が難しいです。

感情の変化が上手く書けるようになりたいです。


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