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主人公センチメンタルシーンです。
ダンスの練習という拷問でバキバキになった体をほぐしながら、私は窓を開けた。
特別待遇か、はたまた平民と同室をみな嫌がったのか、私の部屋は一人部屋だった。もう一つベッドがあっても、誰もいない。
窓辺に椅子を持ってきて、座る。夜風が気持ちいい。
「・・・・もう一か月かぁ」
早いものだ。
エリーに出会って約15年。
初めて出会ったその日、私を見上げて笑ったその顔に、私はあの子を重ねてしまった。
前世の私も、母に捨てられた子供だった。いや、捨てられていた方がマシだったかもしれない。
毎日のように母に振るわれる暴力。時折与えられる食事。外に出ることも叶わず、ただ母の鬱憤をはらす相手をしていた。父親は知らない。多分結婚していなかったのかもしれない。
そんな私には、2つ下の妹がいた。
小学校に上がる年になっても、状況は変わらず、言葉は母の暴言から学ぶ日々。
時折与えられる食事を、妹になるべく分け与え、なんとか生き延びる日々。
生を受け、一番初めに愛を与えてくれる存在から拒絶された私たちは、お互いがお互いを必要としあうことでしか生きていけなかった。
否。
母にも愛されない私に生きる価値はない、けれど、この子を生き延びさせるために生きなければ。
当時のわたしはそう思っていた。
誰にも必要とされない自分を、必要としてくれる小さな存在を、私は生きるための支えとしたのだ。
今思えば、母もかわいそうな人だったのかもしれない。いつも私たちを殴るときは、泣いていたから。
けれど、現実は残酷だった。
私より小さい妹は、徐々に衰弱していった。体が生まれつき弱かったのもある。
どうしても助けたくて、母の隙をついて外に飛び出し、道行く人に助けを求めた。
私の尋常でない痩せ具合と、様子に、すぐに警察と救急車が呼ばれた。
それを待てずに家に戻れば、半狂乱で妹を殴る母と、ぐったりと動かない妹。
妹は、その命を散らしていた。
母の戻りが思っていた以上に早く、姿の見えない私に憤って妹に手をあげた。
あの時私が外に出なければ、妹は死ななかった。
なぜ生きる価値のない私が生き残り、生に執着していた妹が亡くなったのか。
保護施設にいれられ、ただ生き続ける日々の中で、私はどんどん自分に執着がもてなくなっていった。
親にも愛されなかった私が、赤の他人に愛されるわけがない。
ならば、せめて憎まれることのないようにだけしなければ。
もう憎しみをぶつけられるのはたくさんだったから。言葉も暴力も、もうたくさんだ。
そして、今の私が出来た。
仕事をすればそれを優先し、自分は後回し。
自分が我慢すればよいこと、自分が犠牲になればよいことは、当然のように受け入れた。
「・・・・もう、エリーは一人でも大丈夫」
ウィリアム様とも上手くやっていると思う。ハーディガン様は言わずもがな。
王宮では、皆がエリーを愛し、慈しみ、守ってくれる。さすがヒロイン。
私は、エリーがここに戻るまでの間のつなぎでしかない。
今度は、あの子の時みたいに失敗しなかった。
良かったと、安堵こそ感じるが、痛みなど感じない。
「ふふふっ」
月の光が、眩しいなんて、初めて思うわ。
月の光が眩しいから、目が乾くのよ。
目が乾くから、涙が出るの。
「ふふふっ、お姉ちゃん今度は失敗しなかったよ」
愛が欲しいなんて、そんな身分不相応なこと思わない。私がいなくなっても、みんな困らない。
孤児院に戻れるかな。マザー、戻ってくると思ってるかな?
「あ~あ、いっそ外国に行っちゃおうかしら?」
チート魔力もあるし、傭兵とかやっちゃおうかな。
それもいいかもしれない。
ずっと一人で、その場限りの手助けをする日々。人助けだけしていれば、憎まれることなんてないから。
「ふふふっ」
大丈夫。私も大丈夫。
ヒロイン補正なんてくそくらえ。
みんなに愛される資格なんていらない。
ただ、あの子を守れればいいの。
あの子だけ、生きてくれればいいの――――――。
ああ、だんだん書きたいことと実際の文章と差が出てきてしまいました。
でも、このままとりあえず突っ走りたいと思います。
伝わらない点。至らない点はたくさんあります。
でも、書きたい気持ちで書いていきたいと思います!!
が、がんばります!!




