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主人公魔法チートですが、あまり活躍しません。
というわけでやってきました魔法士棟。
南西にある棟。南東にある騎士棟と対になった作りになっている。
その地下、幾重にも結界が張られている訓練場に、なぜか私はいた。
「王女様、今日の授業は・・・・」
「ステラが連れていかれるのに、授業なんて受けてられません!!」
というエリーの一言で、エリーも一緒に。ついでに護衛騎士であるハーディガン様も。
「先日拝見しましたが、あのキラキラと舞う氷の破片はどのように・・・・」
キラキラ、は大げさだと思うけど。
「あれは、ただ単純に・・・・・氷の花弁よ、舞え」
「!!」
ふわりと風が私を中心に巻き起こり、無数の花弁が私の周りを囲うように現れる。
「これは、どのような魔法なのですか?」
「えっと、例えば、ハーディガン様、ちょっと私を攻撃していただけませんか?」
「なぜ?」
「たぶん、説明するより、見せた方がよいかと・・・」
「僕からもお願いします!!」
「ダメダメ!!ステラが怪我したらどうするの!」
「手加減してもらえば大丈夫よ」
しばらく逡巡した後、しぶしぶ頷いたハーディガン様。すみません。
みんなに離れるように指示をし、ハーディガン様と向かい合う。
「では、行きますよ」
「お願いします」
剣を振り上げ、まっすぐに下す。手加減されていると分かっているのに、思わずぐっと手を握りこむ。
剣は、私に触れる前に集まった氷の花弁に阻まれた。
「ほう・・・」
「なるほど、防御の魔法なのですね」
「はい、私に向かう魔法や物理的な攻撃は、自動でほぼ完ぺきに防ぎます」
あまり複数から攻撃されると、花弁が足りなくて防ぎきれないが、そんな戦場のど真ん中に行く予定はないので問題はない。
「防御だけですか?」
「いえ、風に舞え、氷の花弁」
そう言うと、私の周りを浮遊していた花弁が動きを止める。そのまま適当な壁に向かって手を振れば。
「あっ」
「きゃ!!」
ものすごい勢いで花弁たちが飛んでいき、訓練場の壁を大きくえぐった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・素晴らしい!!」
沈黙のわたしとハーディガン様。それに対し、興奮を隠しきれないうさぎ。
あ、これって弁償とか言われないよね?
「使えるのは氷の属性だけなのですか?」
「えっと、ルウェ様はいくつの属性が使えるんですか?」
「僕ですか?僕は水と水の上位属性の氷。あとは風とその上位属性の嵐。砂も少々使えますが、火はほとんど使えません」
なるほど、天才少年でも、全属性は使えないのか。
「私は、水と氷が得意です。あとは風を少々」
「僕と同じですね!!」
「そうですね」
手の内を全部さらしはしない。嬉しそうにはしゃぐうさぎさんは、なんとも可愛らしい。
それ以外にもいろいろ言葉など聞かれたが、当たり障りなく答えた。
そのうち満足したのか、すっきりとした顔になったうさぎさんにそろそろお暇することを告げる。今度は引き止められることもなく、すんなりと訓練場を後にすることができた。
だから、そのあとのうさぎさんの笑みには気づかなかった。
「氷と風?ウソばっかり、火と石も使ってたくせに」
くつくつと笑う。
「いいなぁ。あんな透明な魔力があるなんて。ほしいなぁ~。透明だから全属性使えるのに」
それを使わないなんて、もったいない。そう思う僕は、確かに魔法に狂っているのかもしれない。
「でも、邪魔だなぁ。僕にはこれしかないのに、僕より魔法が使えるなんて、うん、邪魔だよね」
魔力の感知もおおざっぱなくせに、僕より魔法が使えるなんて。
認めない。
認めないよ、ステラ。
遠ざかる魔力の気配を感じながら、僕は暗い思いに沈むのだった。
すみません。
漢字の関係で、土属性を砂と石にしました。
水と氷、風と嵐なので。




