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dear 先生

作者: 紅猫帽子

Dear 先生


先生、お久しぶりです

私がこのように手紙を書くのは初めてですね


先生が転任なさると聞いたので

今まで素直に言えなかった言葉を綴ってみます


入学当初家にも教室にも居場所がなくて

自分の殻に閉じ籠もって

プライドばかり高くて強がっていた

私に居場所を与えてくれてありがとうございました


私の頭をなでてくれた大きい手のひらに

泣いてもいいのだと投げかけてくれた言葉に


縛られていた心がほどけたような気がしました


例えそれが偽善でも救われたような気がしました



あなたの世界が知りたくて

少しでも共通点が欲しくて


あなたが薦めてくれた本

好きだと言った本

私が好きそうだと見つけてくれた本


たくさんの本を読みました


少しずつ広がっていった私の世界

その片隅に

貴方の笑顔が

貴方の言葉が

あるだけでよかった


それだけで前を向いて歩こうって思えた


先生が図書室の隅っこに作ってくれた場所が

こんなに大切になるなんて思いもしませんでした


だから


卒業しても遊びにおいでと

優しく微笑んでくれても

あなたがいない場所になんて用はないんです


ねぇ先生


今ここでこの手紙を書きながら

私の頬が濡れていること

視界がぼやけていることも


先生はきっと知らないでしょう


知らないままでいてほしいけれど


もう大丈夫だと言ったから

もう泣かないからと約束したから


だからあのとき笑ってありがとうと言ったけど


本当はすごく苦しくて

飲み込んだ言葉のせいで

喉の奥が痛くなった


大好きな本の香りと

愛しいあなたの影を

思い出してしまって


泣くことの強さを教えてくれたのは貴方だけど

笑いことの温かさを教えてくれたのも貴方だから


せめてあなたに残る私の最後は笑顔でありたかったんです



この感情に恋だなんて

特別な名前をつけることは

弱い私には難しいけれど



それでも大好きでした


幸せでした


きっと貴方にとっての私なんて

たくさんの生徒のなかの一人でしかないんでしょう?


それ以上は望みません

この胸には貴方の残してくれた言葉と笑顔があふれてるから



だから



さよなら



さみしくなんてないから

さみしくなんてないけど


でも


もう1度だけ泣かせてください

いっぱい泣いて泣きつかれたら


ちゃんと前を向いてすすむから



先生、ありがとう

先生、さようなら


どうか、お元気で


From 私

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