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「京君は……〝どうして〟ばっかりだね」
紗愛の言葉に京がカァッと頬を染めて口を開いた。
「だって、世間が理由を求めるんじゃないかっ! どうして、どうしてって!」
それは紗愛に向けた言葉ではない。それは京自身よく解っていた。
何故と問われる言葉は痛い。答えられる答えなどある筈もない問いを、人は時に投げかけてくる。
「人間は理由がなければ生きられないじゃない! とっくに答えがないことは解ってるのに、理由を求めずにはいられない。
訊かれた方は? 答えが出ないのに訊かれたらどうすれば良いのさ?」
京はそう言うと両膝を抱き、其処に顔を埋めた。掠れた声が遠くなる。
「僕だって……訊きたいのに……」
京の脳裏を両親の言葉が掠める。友達の声が掠める。そして、自分自身の言葉が掠める。
――どうして学校に行けないんだっ!
――どうして今日は来なかったの?
――どうして出もしない答えを僕に求めるの?
どうしてと問う言葉。何故と問う言葉。答えの出ない、自分の心。
そのうち、自分自身で問うことしかしなくなった。
――どうして僕には居場所がないんだろう。
――どうして僕は此処にいるんだろう。
――どうして僕は愛されてないんだろう。
どうして、どうして、どうして――?
答えようのない質問は次第に波の渦となって京を包み、息もできないほどの苦しさに京の涙は枯れ果てた。
今日を生きられない者は、明日を期待できない。
太陽に焼かれる者は、月の光も癒しにならない。
絶望を見た者は、希望さえ地の果てに消えて。
ドウシテ僕ハ生キテルノ――?
冷たい氷が喉の奥に引っかかっているような苦しさに京は耐え切れず、死を選んだのだ。
しかし、ひとりの少女が、その死を止めた。