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「京君、家は何処? 送ってくよ?」
日も高くなり、気温も上がってきた頃、ようやく崖から離れた二人は砂浜の上に立つ。京は入水をしようとする様子も見せず、諦めてくれたかなと紗愛は胸を撫で下ろし、そう言った。
紗愛の申し出に、京は頭を振る。
「家なんて、ないよ。今日、死ぬ気だったし……」
京は背後に広がる海を振り返って見つめた。
「僕の居場所なんて、何処にもないから」
詩人だねぇ、と紗愛は息を零した。今の京には何を言っても入らないかもしれない。ひとりにするには繊細すぎる。
京の遠い目がとても寂しくて、紗愛は胸が苦しくなった。
「じゃあ、ウチ来る?」
「え……っ?」
驚きに見開かれる京の瞳に紗愛は微笑した。
「あたしもひとりだから」