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 パトカーでは目立つからと配慮された普通車に乗り込む京に、紗愛は叫び続けた。


「どうして嘘つくのっ? どうして行っちゃうのっ? どうして約束破るのっ? どうしてあたしを独りにするのっ?」


 京に答えの出ない〝どうして〟をぶつける涙混じりの紗愛の声は誰にも止めることはできず、胸が引き攣るような苦しさを聴く者に与えた。紗愛の喉が潰れるのではないかと思う程の悲哀が、溢れている。


 それに応えなければならない京は答えない。そっと、ごめんねと呟いただけだった。


 警官の間に座り、目を閉じる京に紗愛は言葉を投げる。


「待ってるからっ」


 京が驚いて目を開けて紗愛を向く。紗愛は潮風に弄ばれる髪の毛を片手で押さえながら、真っ直ぐに京を見つめた。


「あたし、ずっと京君を待ってるからね。京君の居場所は此処、京君の生きる意味は此処にあるから……ずっと待ってるから……。

 言葉で傷ついた京君に、一杯〝どうして〟って言ってごめん。更に傷つけることになるから〝頑張れ〟なんて言えないけど、大丈夫だよ。あたし、此処にいるから」


 車のドアが閉められる。紗愛と京の間には隔たりができた。

 走り出す車の中で京が紗愛をずっと見ていた。紗愛は京と視線を合わせたままその姿を目に焼き付ける。


「傷はいつか、癒えて消えるから――……」


 紗愛は遠ざかる車を見つめ、そっと吹いてきた優しい風に想いを込めた言の葉を乗せた。



* * *



 道路を走行する車の中で、京は深く息をついた。


「ねえ、刑事さん」


「ん?」


 助手席からミラー越しに京を見て、背広姿の刑事の男は答えた。やる気のない顔は元々そういう顔なのかもしれない。だが京は目を伏せて刑事の男に問いかける。


「たったひとカケラでも、愛を手に入れたら、ほんの少しでも、傷ついた羽根(こころ)も癒せるのかな? また先に行けるようになるのかな?」


 ああ、と刑事の男は頷いた。京から窓の外に広がる海を眺めて肯定する。


「愛があれば人間(ヒト)は強くなれる。人間は、脆かったら生きていけないからな」


 京の唇が震える。その愛を、自分はあの少年の家族から奪ってしまったのだと改めて感じたから。


 波が寄せては返していく。絶対に永遠なもの。それは、海の波や風や空といった自然と時間、そして、愛ではないだろうか。


 京はそっと笑んだ。紗愛、永遠があったよ。


 京の両頬は涙で濡れていた。その頬を潮風が開いている窓から入ってきて優しく撫でていく。

 ふと、紗愛の言葉が京に届いた。しかしそれは波に返され、次の瞬間には京はもうその言葉が何だったのか判らなくなっていた。



 傷はいつか、癒えて消えるから――……。





Fin.





後日談

「Letters~朽ちた羽根の贈り物~」

サイト2周年記念として書いたもの。興味がありましたらこちらに飛んで読んで頂けると幸いです。

http://id16.fm-p.jp/10/etanalusunou/index.php?module=viewbk&action=ppg&stid=2&bkid=18938&bkrow=0&pw=&bkpw=&ss=


2014.09.18

こちらでも後日談を公開することに致しました。

シリーズとしてまとめているので飛んで頂ければと思います。

上述しているサイト内で発表しているものと同じ内容です。

どちらか読みやすい方を選んで頂ければ幸いです。

もっというと、お気に召したらばとっても幸いです。



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