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 それがきみの、本当の気持ちなんだね。

 胸の内で呟いて、紗愛は無言のまま立ち上がる。そして京に背を向け、解んないよ、と告げる。


人間(ヒト)は誰しも同じじゃないもの。同じ人間(ヒト)はいないから同じ痛みなんてない。同じ気持ちなんてない。同じ心を共有するなんて、できないよ」


 でも、と紗愛は言い、京に笑顔で振り返る。潮風で茶色くなった紗愛の髪の毛が揺れ、太陽の光を受けて輝いた。


「だからこそ人間(ヒト)は尊いの。同じ人間(ヒト)はいないから、たったひとつの大切な存在だから、もっともっと大切にして。他人も、自分も。

 自分を大切にできない人に、誰かを大切にすることなんて、できないよ」


 紗愛の言葉を聞いて京の瞳が見開かれる。


「自分とは違うから、愛することもできる。自分と似てるから、愛することもできる。大丈夫。京君の羽根は、飛べるから」


「……紗愛の……羽根は……?」


 紗愛に手を差し出され、それに手を伸ばそうとしてやめ、自分で立ち上がりながら京は紗愛に尋ねた。

 紗愛は行き場のない手で髪の毛を耳にかけると、儚く微笑した。


「あたしは……片翼だから、飛べないの」



* * *



 本当は、触れてはいけなかったのかもしれない。

 自分の折れた片翼でさえ癒す術を知らないのに、誰かの傷に、彼の傷に触れることは許されないのかもしれない。


 でも、その傷口に手を突っ込んで毒を取り出し、包帯を巻かなければ彼が自分の二の舞を演じるかそれよりもひどいことになると思ったから。

 絶望と憂いの中に京がいてはいけないと思ったから。


 癒し方さえ知らずに不器用に傷口に手を突っ込んだ。それで救われるなら、それで良いのだから。





 殺サレタ方ガ救イニナル時モアルヨ――。





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