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桃な人

これだけはやるまいと決めてたのに!結局やってしまう。私の悪いクセ。

これで最後。

 大ピーーンチな私を救ってくれたのは、黒井先輩の携帯だった。どこかしらの誰かしらから連絡が入ったみたいで、気が逸れた一瞬の隙に逃げてきやした!

 耳レイプどころか、マジで犯されるかと思った……。いや、そんなことはないかもだけどね!なんとびっくり足腰が立たなかったもん!鞭打って走ったけどね!

 後からまたなんか言われるかもしれないが、そんときは友達を盾にしよう。うん。

 さて、さっさと逃げ帰りましょ……


「せぇーんぱいっ!」


 ヒッ!この、一瞬女の子と間違えるぐらいの高くて可愛らしい声は、でもちゃんと男の子らしい声も出せるんだぜって声は、むしろそのギャップが堪りませんよねわかりますな声は!!


「早くこっち向いてくれないとボク…」


 (クルッ)

 みなまで言わせませんよっ!

 振り返った先にいたのは、やっぱり桃宮零くんだった。

 桃宮くんも対象者。後輩くんで、ピンクな髪色ではないけど、ものすっごい色素の薄い茶髪で、ふわっふわのネコっ毛の男の子。くりくりとした真ん丸お目目が可愛らしい、その声とぴったりの顔立ちは、イケメンと言うより女の子みたいだ。

 で・す・が!この可愛らしい出で立ちに騙されてはいけない!彼はこの世界が元になった乙女CDのシリーズで、唯一のダークホースなのだ!

 それは、現実には決していちゃいけない人物、『ヤンデレ』さんです!


 誤解のないように言っておきますけど、私は自分から対象者に近寄ったことはありません!この学園に入学した時に前世のことを思い出して以来、むしろ接触しないように気を付けてきたのだ!(遠くから録音する機会を狙ってたのは別として)

 部活も最初に対象者が誰もいないことを確認して入ったし(後から金田先輩が入ってきて意味なかったけどね。しかも退部届け受理されないし。)、風紀委員なんかやるつもりもなかった。(じゃんけんで負けて押し付けられたけど。)赤嶺くんと同じクラスなのはしょうがないけど、極力接触しないようにしたし、先生(対象者)に至っては会ってすらいない。

 そして!桃宮くんに関しても、とにかく避けまくった。録音はしたかったけど、他の3人で満足してたし(血の涙が出るかと思った)、わざわざ危険地帯に足を踏み入れようなんてそんなバカな真似はしないよ!いくら声フェチの私だって!

 でも!目をつけられてしまったのだ!たった1度すれ違っただけで!その時だって顔は俯けてたし、視界に入らないように気を付けてたのに、いきなり掴まれて根掘り葉掘り個人情報を聞かれたのだ!

 もちろん私は答えなかったけど、面白がった友達がまぁ、ぺらぺら喋ってくれること。私に恨みでもあんのか!(2回目)

 そこで私のことを知った桃宮くんは、とにかくすごかった……。文芸部に入ろうとしたし(金田先輩が拒否した)、風紀委員もクラスの子と代わってもらおうとしたみたいだ。(もちろん出来なかったけど。)そういえば、桃宮くんと接触してから他の3人に耳レイプが酷くなったような…。

 そんなこんなで、今日一番のピンチに陥ってる私です。

 ちなみに乙女CDの中だと、


*・*・*・*・*・*・*


 (遠くから聴こえる足音)

 ガラッ


「やーっぱりここにいたんだ!教室にいないからここじゃないかなって思ってたんだ。センパイは音楽室が好きだよねぇ。…どうしたの?って、どーもしないよ!ただ、センパイに会いたかっただけ~。…えぇ~カワイくないよぉ~センパイの方がかわいっ!えへへ。…またピアノ触ってたの?…そうだよね、センパイの家、マンションだから弾けないよね。…センパイはさ、楽器好きでしょ?じゃぁさ、金属の音も大丈夫?…鉄琴とはまたちょっと違うんだけどぉー、こんな……(チャリチャリ)音?…うん、鎖の音!…そっか!大丈夫なんだ!よかった!もしダメだったら買い換えなきゃいけないとこだったからさ!…ん?こっちの話!そのうちセンパイにも…わかるよ。」


―――――――――――


「セーンパイっ!見てみてぇ~!この間の全国模試、8位だったんだ!すごいでしょぉ~!褒めて褒めてぇ~。センパイのためにがんばったんだ!…だって、ボク大切なものは誰にも奪われないようにしまいこんでおくタイプだもん!その為には頑丈なおうちと、お金が必要でしょ?なら頭が良くなくちゃね!…よくわからない?大丈夫!"まだ"わからなくて!」


―――――――――――


「ねぇセンパイ?どーして昨日ボクの電話に出てくれなかったの?ボクのことキライになっちゃった?もうボクイヤ?ねぇどーして?…なぁーんだ。"お友達"と電話してただけかぁ~。ボク、センパイに避けられてるのかと思って不安になっちゃったぁ~。ちなみにぃ、"お友達"って男?女?…そっかぁ、女の子かぁ。まぁ女の子は話が長いってよく言うもんねぇ。……もし男だったら駆除しなきゃいけないとこだった。…え?なんでもないよぉ~。それより~ボクお弁当作ってきたんだぁ。後で食べようねっ!」


*・*・*・*・*・*・*


 一見わからないけど、所々におかしい言葉が混ざってるのにお気づきだろうか。聴いている側はわかる。でもそこはヒロイン!全くもって気付かず、そのまま話は進むわけですよ!監禁されたのかはわからないけど(このシリーズの4人は告白からのファーストキスで終わるから)、恐らくはされる設定になっていたんだろう。私が死ぬ直前に買った新シリーズのCDでは、桃宮くんはお家デートだったから。

 怖いよ!とにかく怖いよ桃宮くん!ヤンデレよくないよ!CDだとめっちゃ美味しかったけどね!大興奮してた!!


「ねぇ、せんぱい?さっきから何考えてるの?」


 はっ!とにかく今はこの現実(ピンチ)を乗り越えなきゃ!


 (ぶんぶん)

「ふぅ~ん。ボクには言えないことなんだぁ~。…ま、いっか。それよりぃ~……誰といたの?」


 いやん!最後だけちょっと低めっていいよねその変貌っぷりが!

 じゃなくて!何萌えようとしてんだ私!ピンチだっつーの!ってか、『どこに』じゃなくて『誰と』って聞くとこが怖いよね!


「…………」

「言えないんだ。そっかぁ~……せんぱいはさ、監禁と軟禁、どっちがいい?」


 それ変わらないよね!意味はほぼ一緒だよね!

 冷や汗ダラダラななかで、桃宮くんは


 ドンッ!


 私を壁に押し付けてきた。

 これが所謂『壁ドン』ですか!是非とも私じゃない方にやっていただければ!


「せんぱいさぁ~ボクのことナメてるよね。ボク、カワイイ後輩じゃないんだよ?ボクは、せんぱいを狙う……一人の男だよ。」


 ひぁっ!みみ!耳の後ろで喋らないで!なんかくすぐったい!トリハダ立つよ!

 ってか、私と身長そんなに変わらないはずなのに、なんで急に"男"を感じさせるかな!?可愛い後輩くんで全然良かったんだけど!


「ボクはさぁ、せんぱいを共有したいわけじゃないんだよ?なのにせんぱいはぜぇーんぜん分かってくれないよねぇ。言ったよね?ボク、好きなものは隠しておきたいタイプだって。…せんぱいもそうしていい?」


 だだだだ駄目に決まってるでしょ!監禁反対!我に自由を!

 逃げなくちゃ…!問題を後回しにしてるだけな気もするけど、やっぱり逃げる!壁ドンなんか、


 ぎゅっ!


 こうすれば解けるんだから!

 桃宮くんに逆に抱きついてやった。そうすると、びっくりして隙が出来るから。名付けて、『引いてダメなら押してみろ!』ってね!

 案の定、びっくりして壁から手を離れた隙間からすたこらさっさと逃げ出しましたわ!はっはっはー!ピンチの抜け出し方なら右に出るもんはいないだろうな!


 追われることは目に見えてわかるから、とにかく逃げる!友達にさえ会えばなんとか誤魔化せる…って、あれ?メールが…

『ごめ~ん!彼氏と会う約束しちゃったから先に帰るね!気を付けてねん♪』

 ひどいよ!裏切りやがって!何に気を付けんの!?追ってくる人から!?それとも…


「待ってたよ、キミちゃん!」

「おっせーぞ、キミコ!」

「私を待たせるんじゃない、喜美子」

「なんで逃げるの?せんぱい。」


 わぁーイケボイスが次々と喋ってる。なんで今日に限ってボイスレコーダー持ってないんだろう。ハハハ…。………前門の虎後門の狼ってこういうこと?




 ぜぇーーはぁーーー。

 な、なんとか帰ってきた…。帰ってこれた!

 何がどうして4人揃っちゃったのかな!?今までこんなことなかったじゃん!

 なんか、段々エスカレートしていってるような……。


 4人に囲まれ絶体絶命!ってな時に、運良く4人が言い争いを始めたから、こっそり帰ってきたのだ。

 しかし、1人ならまだしも、短時間で4人から耳レイプをされると私の精神はゴリゴリと削られることがわかった。

 いやぁもぉ、お腹いっぱいです……。なんか癒しが欲しい。癒し系イケボイスが聴きたい。そうだ、あとで従兄弟のお兄ちゃんに電話しよう。あれはかなり癒される。その前に日課を……


 これをやらなきゃ落ち着かない。

 枕に顔を思いっきり埋めて、


「(すぅ~)ごちそうさまでした!!!」


 はぁ、すっきりした。

 よし!明日からまたイケボイス収集がんばろっ!

(説明文前書きの続き)

なぜなら、口を開けば「ごちそうさまです。はぁはぁ。なんならおかわりを…」と、涎を垂らしつつ言ってしまいそうになるからです(笑)んなことしたら変態扱いされるのは目に見えてるので、口を開かないように真一文字に締めてますが……表情はクルクル変わるので、結局対象者に色々バレるという。残念な子。


先生が出ませんでしたが、わざとです!先生は、『付き合った後』設定なので、ここには出せませんでした。出したら逆ハーじゃなくなっちゃう。


書いてる本人が一番楽しいというなんとも私得なお話でしたが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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