黒な人
※注意 どんなに相手が好きでもこんなことしちゃいけません。イケボイス以外は(笑)
危ないところだった……。
とにかく逃げるが勝ち!とばかりに、赤嶺くんの手を振りほどきトイレに駆け込んだ。
乙女として、トイレに駆け込むってどーなんだって思うけど、そんなこと言ってる場合じゃない!なんかもう危険地帯が多すぎる!
お気づきかと思いますが、なぜかわたくしが対象者として狙われてますー。わぁびっくりぃ(棒読み)『鈍感』なーんていうヒロインスキル(?)持ち合わせてないから、すぐわかりますがな。
ってかなんでだ!対象者なら、ヒロインちゃんがいるじゃないか!彼女は2年生になって編入してきたし、タイミングだってばっちりCD通りだ。な・の・に!あのイケボイスの人たちは完全スルーしてこっちに来る。んで私は耳レイプされて悶え死ぬ訳だよ!私に恨みでもあんのか!
ならそのタイミング外せよと思ったそこのあなた!イケボイスの威力をわかってない!あの魅力にとりつかれたら、聴かずにはいられないのだよ!
でも飽くまで私はボイスレコーダーに録りたいだけなんだ!だって録音すれば何度だって美味しい思いが出来るでしょう?本人の許可?ナニソレ。そんなこと頼んだら変態だってバレちゃうじゃないか!こっそりやるからいいんだよ。
あぁもうどうすればいいのかなぁ。別にヒロインじゃなくてもいいから、私以外を口説いてくんないかな。大体、理由がわからん。こんな無愛想で一言も喋らないやつのどこがいいんだか。
あまりに近すぎると、聴こえなくなっちゃうんだよね。遠くの音を拾う用のボイスレコーダー買っちゃったから。新しいのもお小遣いなくなっちゃうから買えないし。バイトでもしようかなぁ。
トイレから出て教室に戻ると、赤嶺くんはすでにプリントを配り終えていた。ありがとう。心の中で感謝しておく。
「喜美子ってばどこ行ってたの?黒井先輩が捜してたよ?今日、急遽委員会が入ったから出るように。だって。」
「あ~そうなんだ。ありがと。」
「いえいえ~。私も部活だから、時間帯合ったら一緒に帰ろう?」
「わかった。終わったら連絡するね。」
チャイムが鳴り、私の長ーい昼休みが終わりを告げた。
えっ?普通に話してるって?当たり前じゃないですかぁ~。私はむしろおしゃべりな方よ?私が喋らないのは対象者の前でだけ。だから無礼なやつなのにって思うわけよ。私が喋れない訳は、……っと、金田先輩にメールしとかなきゃ。今日は部活行けませんよ~ってね。イヤだけど部長だし。
放課後です。委員会です。最初に言っておくけど、黒井先輩も対象者です。
黒井元先輩は、完全にジャケット通り。漆黒の髪に切れ長の目。眼鏡がとってもよくお似合いになるイケメンさんです。そしてドS。ヒロインを半泣きにさせるぐらいの。イジメるのが好きなんだって。意味わかんない。でも!声は低音ボイスで、フェロモンという名のエロボイスなのですよ!『先生(対象者)』といい勝負だね!
風紀委員という役職通り普段は真面目なのに、ヒロインを前にすると途端にスイッチが入って、
*・*・*・*・*・*・*
ガラッ
「ん?なんですか?あなたは確か…この間転入してきた生徒ですよね?どうかしたんですか?……あぁ、その教室なら反対側ですよ。まだ慣れてないんですね。……待ちなさい。あなた、スカートが少し短いんじゃないですか?私は風紀委員です。この短さは見過ごせないですね。ちょっとこちらへ。……座って。…うん、やっぱり短いです。これでは何をされても文句は言えないですよ?…ほら、こんな風に足を撫で回されても、スカートが短いあなたが悪い。…やめてほしい?それは出来ない相談ですね。だってこれは『お仕置き』ですから。…抵抗しなくていいんですか?もう手があなたの大事なところまで届いてしまいますよ?…クスッ。泣きそうな顔しちゃって…私を煽ってるんですか?…違うんですか。それは残念。それにしても……病みつきになりそうですね。…あなたの泣き顔はすごくソソる。(ペロッ)」
*・*・*・*・*・*・*
キーーーヤーーーー!!
おーかーさーれーるぅーー!!
最後の台詞はね!耳元で囁くんですよ!しかもちょー近くからだから、CD聴いたときはマジで鼻血もんでした!さらに舐める音!これぞまさしく耳レイプにふさわしい!
思わず興奮してしまった。しかし!そんな危ない役をなぜ私がやらねばならん!むしろ傍目から見たい聴きたい歌いたい(あ、違った)!なのに。
風紀委員なんてぜっっったいやりたくなかったのに!じゃんけんが!この手がグーを出すからいけないんだ!
でもとりあえず今日は大丈夫。他の人に紛れて話だけ聞いて帰ろう。呼び止められても聞こえないフリ!イケボイスを無視するのは涙ちょちょ切れちゃうけど!
コンコン。ガラッ
「遅い。」
いやいやいやいや!開口一番それですか!?むしろ一番早いですけど!?
「こっちに来て座ってください。」
??あの、委員会ですよね?他の人も後から来るんですよね!?
「おや、察しがいいですね。委員会なんて嘘ですよ。……何度言ってもわからないあなたにおしお…風紀委員的指導をして差し上げようかと思いましてね。」
ノぉぉぉー!ウソヨクナイヨ!ワタシカエルネ!ってか『お仕置き』言おうとしたね!ごまかせてないね!
よし!逃げ、
「逃げられると思いますか?」
られませんよね!笑顔でめっちゃ肩押さえつけてますもんね!痛いのでやめてほしい限りなんですけどね!
「……私言いましたよね?不容易に他の男と喋らないようにと。まだわからないんですか?この頭はそれほど物覚えが悪いんですか?この耳は…飾りですか?」
ふぇっ!かかかかじられた!ビクッとしちゃった!私の最大の弱点が知られてしまう!
「おや、喜美子は耳が弱かったんですね。こんなに一緒にいたのに気づきませんでしたよ。…じゃあ、耳を重点的に攻めるしかありませんね。」
誤解を招く発言はお控えなすって!そんなに一緒にいませんよ!?ってか弱点攻めるって、ドSですか!?ドSですね!知ってました!!
「……ん、ちゅ。(ペロッ)」
ダメダメダメ!やめて!息かけないで!ハムハムしないで!舐めないで!手を!手を退かしなさい!身体のラインをなぞるんじゃない!やぁ……っ!
「…………っ!!」
「……クスッ。もしかして、感じているんですか?駄目ですよ。飽くまでこれは『指導』なんですから。他の男と話した罰です。ちゃーんと、あなたの身体に分からせてあげないとね。」
あっぶねー!声が漏れるとこだった!一言でも発したら何言うかわからない!
しかも全くの濡れ衣ですからね!?私は彼らと話してませんから!ちょ、誰か助けてぇぇーー!
黒の人終わり。
次で最後。