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お騒がせ女神の学園生活  作者: 一ノ瀬 和人
お騒がせ女神と孤高の少年
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校門前のリムジン

「はぁ~~、疲れた」


 選挙管理委員会の集まりが終わった後、学級委員の仕事もこなした祐介と莉奈は先生に一礼して職員室を出た。

 2人の表情は対照的で、莉奈の方は疲れた表情など全く見せず祐介の方を見て微笑んでいる。


「祐介もお疲れ様」

「莉奈もね。あれだけの仕事をこなして疲れた顔を見せない莉奈はすごいよ」


 素直に祐介は莉奈のことを賞賛する。

 1時間を越える選挙管理委員会の話し合いの後、クラス担任から日誌や次の日に行う授業の準備の手伝いを2人はさせられていた。

 容赦なく自分達のことをこき使う担任に対して、祐介はさっきの腹いせかとさえ思った。


「あの担任は何時間俺達を拘束すれば気が済むんだよ?」

「でも、それだけ私達が信頼されてるんだからいいでしょ」


 教室に戻る間、莉奈は終始ご機嫌な様子で祐介に話しかける。

 先程から笑顔が絶えない莉奈だが、祐介はそのことに一抹の不安を覚えた。

 転生前のこの時期は恵梨香はアイドルとしてデビューを飾り、莉奈は生徒会選挙に立候補していた時期でもある。

 それが全てなくなり則之や恵梨香達と一緒に過ごすことで、祐介は改めて過去が変わるということがどんなに大変なことなのかを実感した。

 

「そういえば今日は恵梨香達も教室で待っててくれるんだよね?」

「うん。吹雪が生徒会に立候補したからその決起集会をするんだって」


 決起集会といってもやることは商店街の肉屋でビッグメンチカツを買って、それを食べながら公園で話をするぐらいである。

 莉奈と祐介は教室の前まで歩くと扉が開かれ、中からは恵梨香が現れる。

 恵梨香の手には既に2つの鞄が握られ、後ろにいる則之も鞄を2つ持っていた。

 

「おっ、丁度帰ってきた。今2人を迎えに行こうと思ってたんだよ」


 そういった恵梨香は莉奈に鞄を渡すと、莉奈の手を引き廊下を走り出す。

 ひょっこり現れた女神も祐介のことには目もくれず2人の後ろをついていく。


「ちょっと、恵梨香。そんな急がなくても‥‥‥‥」

「早く行こうぜ」

「恵梨香さん、私も行きます」


 祐介が唖然としてたたずむ中、視界に移る3人の姿はどんどん小さくなっていく。

 何故かその時自分が蚊帳の外にいるように感じた。


「とりあえず、僕達も行きましょうか」

「そうだな」


 祐介も則之から鞄を受け取り、則之達と共に昇降口へと歩いていく。

 廊下には既に3人の姿は見えなくなっていた。


「そういえば恵梨香って、あんなに元気だったっけ?」

「まぁ、恵梨香は恵梨香なりに色々と吹っ切ろうとしてるんですよ」


 則之は深いため息をつき、視線を遠くに移す。

 その様子から祐介は先日自分も関わった事件のことを思い出していた。


「それって、やっぱりアイドルの件?」

「えぇ、せっかく大手プロダクションのオーディションに受かったのにデビューできませんでしたからね」


 則之の話が先日起きたスノーサイドプロダクションの不正事件だと祐介はすぐにわかった。

 スノーサイドプロダクションは業界きっての大手プロダクションと呼ばれていたが、裏では様々な不正を行っていた。

 そして音楽祭前に祐介達がそのパーティにもぐりこみ、ひと暴れしたため色々な情報が外部に漏れ現在は営業を停止している。

 それは実質上の倒産とも新聞では騒がれており、恵梨香達を含む全アイドルの契約も全て解約されていた。


「他のプロダクションからの誘いは?」

「今の所全くないそうです。そもそも実績がなくデビューすらしていないグループが誘われることなどまずないでしょ」

「確かにそうかも」


 祐介は新聞でスノーサイドプロダクションのグループが他の事務所に移籍する話を新聞で見ていたので、恵梨香達もそうなるものだと思っていた。

 だが現実は違ったようで、恵梨香も大変な苦労をしていることが伺える。


「だが恵梨香もその内吹っ切れるだろう。俺達もできるだけそのフォローをしてやればいいさ」

「吹雪の言う通りですね」


 たわいもない話をしていた3人は昇降口までたどり着くと、上履きから靴に履き替え校庭へと出た。

 校庭を出た所で祐介は言い知れない異変に気づく。

 それは校門の方で起こっており、辺りが騒がしい。

 

「何かあったのか?」

「わかりません」

「でも、校門の前に車が止まってる」


 校門前をよく見ると学校の風景にそぐわない大きなリムジンが1台止まっている。

 止まっているリムジンは祐介達も見覚えのあるリムジンであった。


「あれって、玲奈さんがよく乗ってる車じゃない?」

「でも玲奈さんの姿が見当たりません。どこにいるんでしょうか?」

「あれだ」


 吹雪が指を指した方向には玲奈が莉奈達を捕まえて何かを話しているようだった。

 3人共玲奈の話を聞いて頷くだけだが、恵梨香だけは様子が違う。

 目をキラキラ輝かせて、玲奈の話を食い入るように聞いている。


「莉奈達は何してるんだ?」

「とりあえず行って見ましょうか」

「そうだな」


 祐介達3人も慌てて玲奈の元へと走っていく。

 玲奈も近づいてくる3人に気づいたようで、祐介達に向かってぶんぶんと手を振っていた。


「弟君達、早く早く~~。こっち、こっち」

「玲奈さん」


 祐介が声をかけると玲奈は笑顔で3人のことを出迎えてくれた。

 アポもなく唐突に現れるのはいつものことなので、祐介は特に驚きはしない。

 ただ何故神山家でなく、祐介達の学校に現れたのかという疑問は祐介の脳裏にはあった。


「どうしたんですか? こんな所で?」

「とりあえず、全員揃ったかな」

「揃った?」


 祐介は玲奈の発言に首をかしげる。

 横にいる則之と吹雪も状況を理解していないように思えた。


「恵梨香ちゃん達には話したけど、詳しくは車の中で話すから。とりあえず乗って乗って。ここに駐車しておくと先生達がうるさいから」


「どういうことですか?」


 リムジンへ向かう玲奈は恵梨香と則之の手を掴み2人を引きずっていく。

 残された祐介と吹雪は何がなんだかわからない様子で呆然と5人の様子を見つめていた。


「ぼーっとしてないで、とりあえず祐介も来て」

「莉奈? ちょっと待って。襟首をそんなに引っ張らないで。制服が伸びちゃう、伸びちゃうから」


 祐介も莉奈に制服の襟首を掴まれ、玲奈の乗るリムジンへと足を運ぶ。

 その様子ははたから見れば妻の尻にしかれる夫のように見えた。


「とりあえず、俺達も行こうか。玲奈さんを待たせるのは悪いからな」

「はい。行きましょう。どうです? 私達も手をつないでみますか?」

「いや、いい。そういうのは祐介と莉奈だけでお腹いっぱいだ」


 最後にため息をつきながら吹雪と女神の2人も祐介達の後を追う。

 こうして祐介達は渋々玲奈の待つリムジンに乗り込み学校を後にした。


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