接待
投稿が遅くなり申し訳ありません
アイドルグループInfinite Stars。
応募総数40000人を超える中から選ばれたスノーサイドプロダクション20周年記念のグループ。
その構成は主に中学1年生~高校1年生迄の女の子で構成されたグループである。
祐介達の親友である黛恵梨香もそのグループの一員であり、現在は歌の披露も終わり来場客の接待を行っていた。
「君達は若くて元気もあってうらやましいよ。叔父さんはもう歳だからさすがにこういうわけには行かないからな」
「またまたご冗談を。叔父様も十分お若いんですから」
暫定的にリーダーを務めている女性が40代前半ぐらいの男性に対して積極的に話しかけている。
その光景は端から見ればリーダーの女性が男性に好意を寄せているように見えた。
「恵梨香ちゃん、恵梨香ちゃん」
「どうしたんだよ。梓」
梓と呼ばれた紫髪のおしとやかで静かそうな少女は恵梨香に声をかけた。
Infinite Starsの木津梓は恵梨香の1つ年上の中学2年生である。
歳が近く恵梨香と話が合うので、2人は楽屋やレッスンではよく話をしていた。
「さっきから挨拶周りをしてるけど、これってなんだかおかしくないかな?」
「あたしもそう思う」
2人はリーダーのことを見ながら同じ感想を述べる。
元々このパーティー前に、プロデューサーから来場客の誰かを接待するよう義務付けられていた。
そして気に入った人がいたら休憩する部屋も用意してあるので、そこで個人的に話をするようにという説明も受けていたが、これが恵梨香や梓には理解が出来ない。
リーダー達の男性客への態度といい、何かしらの違和感を恵梨香は感じていた。
「じゃあ、未来ちゃん。ちょっと上の休憩室でお話しようか」
「はい。じゃあみんな、お先に失礼するね」
「「未来ずる~~い」」
高校生以上のメンバー2人はリーダーの女の子をはやしたてながら見送りをする。
梓や恵梨香といった3人の中学生メンバーはその意味深なやり取りに疑問を持つ。
「ちょっと君達?」
残された5人を呼び止めたのは先程ステージで老人の車椅子を押していた男性であり、彼女達Infinite Starsのプロデューサーである。
レッスンや曲作りはすごく頼りがいのある人だったが、パーティーが近づくにつれて様子が少し変わったように恵梨香には見えた。
「もっと積極的に声かけなきゃダメだろう。これも営業の一環なんだから」
「私達は声かけていますけど中学生達がぁ~~」
甘ったるい声で高校生達はプロデューサーに伝えると、プロデューサーは困った表情を見せる。
このような高校生達のプロデューサーに媚びた態度が恵梨香にとっては気に食わないが、現在に至るまでそのような不満を恵梨香はこのグループ内では見せたことはない。
自分の夢をかなえるためと自分が思っていることを変わりに代弁してくれる人が側にいるから恵梨香はまだ我慢が出来ていた。
「ダメじゃないか中学生グループもしっかりお客さん達にアピールしないと。せっかくの営業のチャンスなんだから」
「プロデューサー、質問があるんですが」
恵梨香達の前でさっそうと手を上げたのは中学3年生の夕凪葵である。
髪も長くスラットしたスレンダー体系で、目つきが少しきつめな女性。
中学生グループの中では1番真面目な女性だと恵梨香は認識している。
「この営業って何か私達の将来と関係あるんですか?」
「大いに関係があるよ。雑誌の記者に気に入られればモデルに選ばれるかもしれないし、TV局のプロデューサーに気に入ってもらえれば君達の番組だって作ってもらえるかもしれない。君達が飛躍するチャンスがここにあるんだよ」
プロデューサーは葵の肩に手を置くと勇気付けるように彼女に話す。
「だから今頑張るんだ。そうすればきっと未来が明るいものになるから」
「わかりました」
プロデューサーの笑顔を見て葵という少女は溜飲を降ろすしかなかった。
「よし、じゃあ景気づけにみんなでジュースでも飲もうか。おかわりが必要な子は私が持ってくるからどんどん頼みなさい」
「「「「「はい」」」」」
プロデューサーの『乾杯』という掛け声で残った5人みんなでコップに入った液体を一気に飲みほす。
恵梨香がその時に飲んだジュースの味は甘くて不思議な味がして、飲むたびに気持ちがよくなっていった。
★☆
パーティーがひとしきり落ち着きを見せた頃、祐介は壁際に立ちボーっと辺りを見回していた。
莉奈と燈子は女神の看病とロビーにあるエレベーターを見張るということで、現在パーティー会場の外で待機をしている。
女神の所へ行く前に、大量の水を持った莉奈が印象的だったことを祐介は覚えている。
「今の所は異常なしか。それにしても知らない人が多すぎる」
先程から辺りを見回すが、転生前の知識をもってしても祐介が知っているような人は誰もいない。
それは祐介が端に出版やTV業界とは無縁の生活を送っていたから知らないだけでもあった。
「こんなことならもう少し、芸能界のこと勉強しておけばよかった」
「ちょっと失礼しても宜しいですか?」
突然祐介の隣から話かけてきた男の顔を見る。
その人物は先程までステージ上で挨拶をしていた黒服スーツ姿でこわもて顔の男性であった。
「大丈夫ですよ」
祐介が許可を出すと男は祐介の隣に立つ。
隣の男のことを怪しく思いながらも、祐介は男の質問に丁寧に答えていく。
「見るからに立派な服装をされていますが、ご職業は何をされているのですか?」
「‥‥‥‥魔工技師をしています。まだ駆け出しですけど」
罰の悪い顔をしながら祐介は男から目をそらす。
祐介は燈子の手伝いをしているので、別に間違っていることはいっていない。
現に今年の年末には魔工技師の2種免許を取る予定なので、全てが嘘ではないと祐介は考え自分を納得させた。
そして自己紹介後、目の前の男の表情がパッと明るくなるのが見て取れた。
「魔工技師ということは魔法関連の業界ですか。それでは結構な収入になっているのではないですか?」
「いえいえ、まだ駆け出しですのでそこまでの収入はありませんよ」
この時代の魔法に疎い人達は魔法を扱う仕事=高所得と捕らえている人達が多かった。
実際そう言う人達は特殊なスキルを持つ人や有名な魔法一族の出身という人達が殆どで、他の業界と同じで高所得者は人握りしかいない。
魔法の世界に疎い人は一般サラリーマンと同等、もしくはそれ以下ぐらいしか所得のない魔工技師のことも勘違いしてしまうことが多い。
目の前の男も魔法業界と聞いただけで目の色が変わる、典型的な勘違いしているのだと祐介は思っていた。
「またまたご謙遜を。お若いのに気品があってとてもそのようには見えません」
祐介は目の前のスーツの男を見て苦笑いを浮かべる。
正直気品があるとかおだてられても、それとは対極の位置にいる祐介にはピンと来ない。
ただ、話を合わせる為にここは乗っておくべきだと思い相槌をうつ。
「ありがとうございます。そのように言っていただけるのは貴方だけですよ」
「そうですか。もし宜しければお名前を教えていただけませんか?」
こちらを見て微笑むスーツの男を祐介は一瞥してから祐介もにっこりと営業スマイルを見せた。
「神山祐介です。まだ駆け出しの魔工技師ですが、これからもご贔屓にお願いします」
「私は阿南太といいます。こちらこそ何かあれば宜しくお願いします」
2人は挨拶を交わすと阿南は祐介に名刺をを渡してきた。
名刺入れを持っていない祐介は両手でその名刺を受け取り、改めて名前を確認する。
「スノーサイドプロダクションチーフプロデューサー、阿南太」
小声でつぶやき、この人物が恵梨香達のグループのプロデューサーだと祐介は確信する。
目の前の相手に笑顔を崩さないように必死に表情を保つ祐介。
本当は色々問い詰めたいのをこの時の祐介は必死に堪えた。
「頂戴いたします。申し訳ありませんが、今日は名刺を持っていないので後日お渡しする形でも宜しいですか?」
「はい、大丈夫です。またの機会に頂戴します」
祐介はそんな嘘をつきつつも阿南との話を進めた。
表面上、お互いの仕事の話(祐介は燈子の仕事の話)をしつつ和やかに話をする。
そこで阿南はふと思い出したように、ある提案を祐介に持ちかける。
「そうだ。もし宜しければうちのプロダクションのアイドルをご紹介したいのですが宜しいですか?」
「ありがたい申し出ですが、私はアイドルに疎いもので‥‥」
「そういわずに。神山さんも一目見れば気に入ると思いますから」
強引に阿南という男に腕を強引に引かれ着いた所はステージの近くの端の一角。
そこには紫髪の髪を後ろで結わっている女の子がぽ~~っとした表情で白髪交じりの男性と話していた。
「梓、こちらの方のお相手を頼む」
「はい~~。わかりました~~」
そう言うと白髪交じりの男性との話を切り上げて梓と呼ばれた女性が祐介の前へと歩いてきた。
始めて見た感想はどこかおっとりした雰囲気を持つ女性というイメージだったが、口調から見るに意外と物腰も柔らかいようにも見える。
警戒心がなく陽気な表情は普通の人とはどこか違う雰囲気をかもし出していて、そのギャップに祐介は困惑していた。
「神山さん、紹介します。こちらInfinite Starsの木津梓です。梓、君も挨拶しないか」
「はい。Infinite Starsの木津梓と申します」
「Infinite Stars?」
祐介はそこでこの女の子が恵梨香の所属しているグループの女の子だということに気づく。
阿南という男が何故この子を紹介したのか不審に思いながらも祐介は笑顔で話すしかなかった。
「初めまして、木津さん。私は神山祐介と申します」
「神山さんですか?」
梓はぽ~~っとした表情で祐介のことを見るだけである。
その表情はどんな考えをしているのか祐介は読み取れない。
「神山? どこかで聞いたことがあるような‥‥‥‥」
「神山さん、実はこの子は引っ込み事案で中々話し相手がいないんです。先程話していた人も私が紹介した人なんです」
「そうなんですか」
祐介は自分の笑顔が引きつっているのがわかる。
この感覚は、転生前夜のお店に出入りしていた時特有の感覚に似ていた。
「そういえば、他のグループの女性達はどうしたんですか?」
「あぁ、他の皆さんは個人的な面談をしています。この子が最後なんですよ」
「個人的な面談‥‥‥‥ですか」
祐介は頭の中で考えをめぐらせ、嫌な方へと思考がいく。
嫌な方へと考えを持っていくたびに、目の前の阿南という男の言葉が胡散臭くて仕方がなかった。
「よければ神山さんがこの子の話相手になってあげてほしいと思いまして、どうですか?」
「ははは。私の方が役不足でなければ承ります」
この時は笑顔を取り繕うのに必死だった。
一刻も早く恵梨香の助けに行きたいが、この子も放っておくわけには行かない。
それに何か重要なことを知っているのではないかという考えから、急いでこの子を保護する必要があった。
「じゃあ、私はこれで行きますので。この子のことを宜しくお願いします」
「はい、丁重にお預かりします」
短く返事をした後、梓と呼ばれた女の子のほうに近寄り耳元による。
何を言っているのか祐介には聞こえなかったが、梓の顔が一瞬曇るのがわかった。
「じゃあ頑張るんだぞ」
「はい」
阿南は梓の肩に軽く叩くとその場を後にする。
その場に残されたのは祐介と梓という少女だけとなった。
「あの‥‥その‥‥」
2人切りになったとたん梓は口篭り始める。
先程迄の陽気な印象とは別の印象を祐介は受けた。
「大丈夫だから。ゆっくり話してごらん」
「はい‥‥」
そう言うと梓という少女は深呼吸をすると、右手に持っていたコップの中の液体を一気に飲み干した。
飲み干した少女は先程よりもトロンとした目を祐介に向ける。
梓が見せる表情に違和感を覚えるが、その違和感が何を表しているのか祐介にはわからない。
「君は‥‥‥‥」
「大丈夫ですから。それよりも飲み物がなくなってしまいました。カウンターに行きませんか?」
「わかった」
そういい2人で先程莉奈達といったカウンターへと歩いていく。
カウンターには先程女神に酒を渡したバーテンダーの姿も見えた。
「すいません。先程の特製ドリンクを下さい」
「えっと‥‥‥‥私は烏龍茶を」
先程とは全く口調が違う祐介に対してバーテンダーは怪しい視線を送るが、すんなりと祐介に烏龍茶を渡し、梓には特製ジュースと呼ばれているグラスを渡す。
祐介からも中は見え、液体はオレンジの色をしていて端から見るとオレンジジュースに見えなくもなかった。
「このジュースってすごいおいしいんです」
そう言うと梓はごくごくとコップの中身を一気に飲みほし、おかわりをもらう。
飲み干すと梓の表情が先程よりも色っぽいものに変わる。
そこで祐介はある1つの可能性にたどり着く。
「梓ちゃんだっけ? ちょっと聞きたいことがあるんだけど、ここじゃあれだからホールの外に出ない?」
「はい。それならいい場所知ってるんですけど‥‥‥‥一緒に行きませんか?」
色っぽく見つめる女性を見て、祐介は心を痛めながらもその話に頷く。
「わかった。とりあえずホールの外に行こう」
うれしそうに祐介の腕を取りつつ歩いていく梓の表情を見て、祐介の顔がひくつく。
ホールの外には燈子達もいるが背にはらは変えられない。
むしろ燈子達の前に連れて行ったほうが被害が最小限に済んでいいとさえ思っていた。
「外に出ましたね。まずはこちらのエレベーターから‥‥」
「ごめん。ちょっとこっちに来て」
阿南が視界にいないことを確認し、強引に梓のことをロビーの方へと引っ張っていく。
ロビーにある奥のソファーには女神の様子を見に来た燈子や莉奈がいる。
そこでは女神も水をごくごくとおいしそうに飲んでいるので先程よりは正気に戻っているような気がした。
「莉奈? ちょっとお願いがあるんだけど」
「祐介? 隣の女の人は?」
「話は後でするから。とりあえず水をこの人に水あげて」
「わかった」
莉奈は持っている水を梓に飲ませ、一息つくと祐介に笑顔で詰めよる。
その笑顔は今まで本の世界で見た阿修羅よりも恐ろしく見えた。
「祐介、ちょっと大事なお話があるんだけど。こっちにきてもらってもいいかな?」
「莉奈、これは違うから。お前は重大な誤解をしている」
「あれ? 神山さんって、奥さんがいらっしゃったんですか?」
「「奥さん!?」」
梓の言葉に驚き、顔を真っ赤にする莉奈。
燈子はつまらなそうに梓のことを一瞥するとその場で煙草を吸い始めた。
この時、ここは喫煙所ではないという突っ込みは誰もしない。
莉奈に対して言い訳を考えている余裕はこの時はなかった。
「その、確かに私達はそう見えるかもしれないけど、まだそう言うことは特にしていなくて‥‥‥‥」
「そうだよ。俺達結婚どころかまだ付き合ってすらいないし‥‥‥‥」
「ふん」
莉奈の肘打ちをみぞおちに貰い、祐介はうめき声を上げその場によろよろと崩れ落ちる。
その光景を見て梓は不思議そうな顔をしていた。
「そういえば貴方のお名前はなんですか?」
「あっ、私は木津梓と申します。アイドルグループInfinite Starsの中学2年生です」
「そうですか。私は姫神ララといいます。私達の方が年下なので敬語でなくてもいいですよ。女神ちゃんとお呼びください」
「中学1年生? 皆さん大学生ぐらいに見えるんですが?」
梓は女神の発言を聞いて驚いた様子を見せるが、女神は構わずに自己紹介を続ける。
その横で不機嫌な表情をする莉奈と、おなかを抱えて笑う燈子があまりにも対照的に見えた。
「それでこちらの赤いドレスの美しい女性が九条莉奈さんで、そちらで無様に跪いていて愚鈍な浮気性のダメ男が神山祐介です。私達はみんな中学1年生ですよ」
「私より年下なんですか? 神山さんっててっきり大学生ぐらいだと思ったんですが?」
「その件については私が説明しよう。ちなみに私はそこの愚鈍で浮気性でふけ顔男の姉だ」
「姉さん、失礼なこと言わないで。俺はふけ顔でも浮気性でもないから。後ここのロビー禁煙だから煙草の火を消して」
「お前は相変わらず細かいことを気にするんだな。将来はげるぞ。ツルピカになるぞ」
「はげないから。そんなこと勝手に決め付けないで」
ふらふらと立ち上がり燈子と不毛なやり取りを繰り広げている祐介を梓はボケッと見ている。
その間に莉奈と女神で梓に自分達がここにいる理由を2人で説明していた。
「恵梨香ちゃんのお友達ってことですか?」
「そうです」
「それで、恵梨香はどこにいるの?」
莉奈は梓に詰め寄るが、梓はぼけっとした表情で莉奈のことを見つめている。
「そのことに関してはかなりまずい状況だと思う」
「えっ?」
祐介はそう言うと梓の持っているグラスを手に取る。
オレンジジュースのような液体はまだカップの中に大量に残っていた。
「祐介、それは梓ちゃんが持っていたコップじゃないか。それがどうしたというんだ?」
「姉さん? これちょっと飲んでみて?」
「これを飲めばいいのか? 見た所オレンジジュースにしか見えないが」
燈子は何も考えずにコップに入った液体を飲む。
一口口をつけると燈子が一瞬にして気難しい表情を見せた。
「祐介、お前この子にこんなもの飲ませて何をしようとした? 答えによってはお前をここでぶち殺す。とりあえず外で話をつけようじゃないか」
「待って姉さん。それ入れたの俺じゃないから。あそこのバーテンが配ってたんだよ。だからMTを出すのはやめて」
「祐介? どういうこと?」
不思議そうに2人のやり取りを眺める莉奈に対して祐介の代わりに女神が答えた。
「もしかしてそのグラスにはお酒が入っているんですか?」
「当たりだ」
「しかもこれはカクテルの甘さでごまかしてるが結構な度数のアルコールが含まれてる。こんなものを酒を飲んだことのない中学生に振舞うとか正気の沙汰じゃないぞ」
燈子がかなり不機嫌な表情で不満を漏らしていた。
「でも、プロデューサーはこれをどんどん飲むように進めていましたが?」
「それが問題なんだ。姉さん、この人のこと知っている?」
そういうと祐介は先程貰った名刺を燈子に渡した。
「プロデューサーの阿南か。玲奈先輩の言っていた‥‥‥‥」
「そう、要注意人物だよ。今玲奈さんは? あの人にも早く伝えないと」
「そうだな。連絡を取ってみよう」
そう言うと燈子は携帯を片手に連絡を取る。
莉奈は何か思いついたように祐介に向かう。
「待って、祐介。ってことは恵梨香はもしかして」
「うん。泥酔状態でどこかに連れて行かれた可能性が高い」
「そんな‥‥」
祐介は最悪の可能性を莉奈に告げる。
そこまでわかってはいるのだが、恵梨香がどこにいるのか祐介には検討もつかない。
「それにどこに行ったかわからない以上、追跡も不可能。正直、手がないよ」
「あの‥‥」
「梓さん、どうしたんですか?」
「私、知っているかもしれません」
「本当ですか?」
祐介が食いつくように梓に詰め寄るが、莉奈が襟首を掴んでいるためそばまで行くことができない。
「私パーティー前にプロデューサーに言われたんです。部屋を取ったからお客さんとそこで個人的なお話をしなさいって」
「部屋ってどこ?」
「このホテルの最上階です。私達はそこを優先的に使えるように指示を受けているのでその部屋のどこかに恵梨香ちゃんがいると思います」
梓の説明で祐介達は恵梨香の場所の検討はついた。
正確な場所までは特定できなかったが、大分場所が絞れたの収穫である。
「ありがとう。そしたら後はしらみつぶしに部屋を当たるしかないな」
「でも、一刻を争う自体なんですから総当りというわけには行かないでしょう? どうするんですか?」
「それなら大丈夫だ」
そう言うと燈子がタッチ式の携帯を3人に向けた。
そこには最上階の入室されている履歴が出されてあった。
「玲奈先輩から送られてきたものだ。ここに入室した人の記録がある」
「でも、場所はわかっても中への突入は難しいんじゃ‥‥」
「魔法を使え。相手も不正をしてるんだ。こっちもそれぐらいはやっても罰は当たらない」
燈子はそう言うと煙草に火をつけ紫煙をはく。
「わかった。後何度もいうけど姉さん、ここ禁煙だから。ホテルの人に注意されるよ」
「善処する。私も玲奈先輩と合流して梓ちゃんの身柄を保護しだい、そちらに行く。くれぐれも無謀なことをするなよ祐介」
「わかってる」
それだけを言い残すと祐介はエレベータの方へ向かい走り出す。
祐介の横には何も言わずに併走する莉奈の姿がある。
「莉奈?」
「悪いけど、私も行くから」
「いや、危ないから莉奈も梓さんと一緒に待ってて」
「馬鹿ですね。少なくとも莉奈さんは祐介さんよりは役に立つとは思いますけど」
莉奈のことを止めようとすると横から女神も割って入ってくる。
突然口を挟んできた女神に遺憾の意を感じずにはいられない祐介である。
「それはどういうことだ?」
「言葉の通りですよ。ちなみに私も行きますから。誰がなんと言おうと勝手に行きますから」
「勝手にしろ。お前がどうなろうと俺は知らないからな」
「そっちこそ、この女神ちゃんの華麗なる奪還作戦の邪魔はしないでくださいね」
祐介と女神が悪態をつきながら3人はエレベーターへと乗り込む。
恵梨香の救出作業という困難な作業をこれから3人は行おうとしていた。




