調査結果と莉奈の答え
9月の2週目、音楽祭まで1ヶ月を切った日曜日となるこの日はかねてから話していた莉奈と燈子の密談の日である。
2週間前から決まっていたこの話合いを莉奈は楽しみにしていた。
昼過ぎ、神山家へと訪れた莉奈はインターホンを力強く押すとすぐに家の扉が開く。
開かれたドアからは艶のあるきれいな赤髪を乱雑に後ろに結わいた状態の燈子が莉奈のことを出迎えてくれた。
「燈子さん、お久しぶりです」
「いらっしゃい、莉奈ちゃん。バンドの方が何やら大変なことになってるみたいだが大丈夫かい?」
「いえ、全然大丈夫です。それよりも今日はお忙しい所お邪魔してしまいすいません」
「いや、それを言うのはこちらの方だ。いつも愚弟が莉奈ちゃんに迷惑ばかりかけて」
燈子は申し訳なさそうな顔を莉奈に向ける。
「いえ、全然大丈夫です。祐介の練習を見るのも楽しいですから」
1週間前、則之や吹雪達が祐介の家に勢ぞろいして、ボストンへの出張を終えた燈子のことを出迎えた。
その時祐介にバンドのボーカルを頼んだ話と練習のため祐介の仕事の負荷を減らしてほしいという要望を則之達は燈子に話す。
祐介のことを見てひとしきり笑った後、そのことを了承した燈子は祐介の仕事を全部引き継ぎ、ボーカルの練習に集中できるよう最大限の配慮を見せた。
「でも、驚いたな。莉奈ちゃんが音楽にも精通してるなんて」
「そんなに精通しているわけじゃありません。あくまで素人目で見て聞いてる人に不快がないようにしているだけですから」
祐介のボーカル決定後、毎日のように莉奈と一緒に祐介は歌の練習をさせられている。
基本今の祐介と莉奈は午後のトレーニング終了後の時間をバンドの練習に充てているので、その時間に九条家が定めている華道や茶道等の習い事をしている莉奈にしてみれば、つまらない習い事よりも祐介との音楽レッスンは楽しみの1つでもあった。
「それよりも莉奈ちゃんの母親はよく習い事を休んでいいと言ったな。莉奈ちゃんの親御さんは厳しかった記憶があるのだが」
「それは私が上手く話したので、なんとかなりました」
実際、何故自分の父親と母親が今回の話を了承したのか莉奈はいまだに理由がわからないでいる。
バンドの話にしても親に説明をした時、参加メンバーを聞かれただけであっけなく了承された。
小学校の時なら猛反対をされていたものが、中学生になって簡単に了承される今の現状に莉奈は驚きを隠せないでいる。
「そうか。まぁ、こんな所で立ち話もなんだから入ってくれ。祐介も地下室で大口の仕事のスケジュール調整させているからしばらくは上がってこないだろう」
「わかりました」
燈子に中に入るように促され、莉奈は燈子の案内でリビングに通される。
玄関に入った時に祐介と燈子以外にもう1足置かれていた靴のことを莉奈は疑問に思ったが、リビングにいた人の影を見て納得する。
「こんにちは」
莉奈を待ち構えていた女性は一言で言うなら美人という言葉に尽きた。
栗色でショートカットぎみの髪はシルクの糸のようなつやがあり、容姿は眉目秀麗ともいえるようなきれいな容姿。
トップスに刺繍が入った白いブラウスを着て胸には小さいリボンをつけていて、はいている膝丈ぐらいの青いスカートからは清潔感が漂っている。
第1ボタンをはずした白いワイシャツと黒いスラックスで仕事スタイルの燈子とは対照的な落ち着きのある服装と気品があるたたずまいからは彼女がどこかの令嬢だということが莉奈には見て取れた。
「こっ、こんにちは」
「莉奈ちゃん、緊張しなくてもいい。この人はそんな気を遣う相手じゃない」
「燈子ちゃんそれ酷くない? 私こう見えても昔関東魔法高等学校の生徒会長やってたんだけど?」
目の前の美しい女性は燈子の顔を見てムッとする。
「生徒会長を名乗るならはもう少し自覚を持ってほしかったです。玲奈先輩が問題を起こしすぎたせいで卒業式の答辞は一宮先輩が務めたことを忘れていませんよね?」
「それはまぁ‥‥‥‥一宮君が真面目だから。でも私が燈子ちゃんを生徒会に推薦したんだよ。その功績ぐらいは称えようよ」
玲奈と呼ばれた女性はふてくされたように燈子の方を見ていた。
燈子そんな玲奈の方を呆れ顔で見ている。
「莉奈ちゃん、この人は西園寺玲奈先輩という。私が関東魔法高等学校1年生の時にお世話をしていた先輩だ」
「燈子ちゃん、そこはお世話になったじゃないの?」
「今まで散々私を振り回していなければ、その言葉を用いてましたよ」
反論する玲奈に対して、燈子はため息混じりに玲奈のことを話す。
疲れた様子の燈子と生き生きと話す玲奈の様子から、莉奈は燈子の心労を察した。
「西園寺って、もしかして出版やTV関連でよく聞く財閥ですよね?」
「それであっている。出版や放送業界への力が強いとされる西園寺家の令嬢が玲奈先輩なんだ。ただ不運なことにこの玲奈先輩はそこの跡取りにもなっていてな。まぁ、先程の言動を見てもわかる通り、自由気ままな性格だから婿の貰い手どころか彼氏すらいないのが問題なんだよ」
「ちょっと燈子ちゃん失礼じゃない? 私はまだ白馬に乗った王子様が見つかってないだけなんだよ。ちょっと本気を出せば婿ぐらいすぐもらえるんだから」
「そんな世迷いごとを言っているから誰も近寄ってこないんですよ」
燈子は胸を張って自慢げに話す玲奈の発言についにあきれ果ててしまう。
「あの、私‥‥‥‥」
「話は燈子ちゃんから全て聞いてるわよ。あなたが九条莉奈ちゃんね。私のことは気軽に玲奈って呼んでもらっていいから」
「わかりました。じゃあ、玲奈さんと呼ばせてもらいます」
「それでよし。それにしても莉奈ちゃんって私が想像していたよりもずっときれいで美人。これが燈子の弟君の彼女とは、弟君も相当の面食いね」
「彼女じゃないです。私と祐介はまだそう言う関係では‥‥‥‥」
真っ赤に頬を染め抗議する莉奈とそれをなめる様な視線で見つめる玲奈。
燈子は2人の姿を見て今日何度目かわからないため息を吐く。
「玲奈先輩。あまり莉奈ちゃんをからかわないで下さい。九条家から西園寺家に対して抗議声明がきても知りませんよ」
「だってさ、莉奈ちゃんの恥らう表情がすごく可愛いんだもん。まさにザ・女の子って感じで。容姿とのギャップもあるから余計にからかいたくもなちゃうよ」
玲奈の子供っぽい言動に燈子はどっと疲労感が増すのが莉奈には手に取るようにわかる。
高校時代もこうして燈子が玲奈に振り回されていたんだとこの時に感じ取った。
「話の続きに戻るが、実は玲奈先輩は今とある新聞社で働いているんだ。あんまり連絡は取りたくなかったが今回の私の調査に協力してもらった」
「話を貰った時はびっくりしちゃったよ。私が連絡することはあっても燈子ちゃんから連絡くれることは今まで1度もなかったんだもん」
玲奈の表情は今回の1件に対してしんそこ驚いているように莉奈には写る。
燈子の振り回されようからよっぽど玲奈に連絡を取りたくなかったことを肌で感じた。
「そういえば、私も調べてきました。スノーサイドプロダクションのこと」
「そうか。じゃあまずは莉奈ちゃんの話から聞こうか」
「わかりました」
燈子に促され、莉奈は鞄から持ってきた資料を取り出し2人に見せる。
2人が受け取った資料には当たり障りのないスノーサイドプロダクションの情報が書かれていた。
それを見てひそかに玲奈は眉根を寄せる。
「スノーサイドプロダクションは今年で20周年を迎える大手芸能プロダクションです。恵梨香が出たのはその20周年記念プロジェクトで、4000人の中から選ばれた5人がグループを結成してデビューするらしくその倍率は‥‥‥‥」
「莉奈ちゃん、ぬるいわよ。そんな上っ面な情報じゃ、今の情報社会では生きていけないわ」
「えっ」
机を叩いて大声を上げる玲奈を見て莉奈は思わずたじろいでしまう。
そのことを隣にいる燈子は頭を抱えて搾り出すように声を発する。
「玲奈先輩、相手は中学生です。新聞社に勤めている貴方とは違い、入手できる情報に限りがありますのでそんなに怒らないで下さい」
「ごめんごめん。ついろくに裏を取らずに上っ面な情報だけで記事を書く無能な上司に説教する感じになっちゃった」
「上司を説教って‥‥‥‥‥‥‥‥」
莉奈はニコニコ笑う玲奈の隣で頭を抱える燈子のことを気の毒そうに見ていた。
「ごめんな。莉奈ちゃん。玲奈先輩はいつもこんな調子なんだ。寛大な心で接してくれると私は助かる」
「燈子さんが謝る必要ないですから」
「さっきは頭ごなしに怒ってごめんなさい。でも、私の調べた情報を見てもらえればその気持ちもわかってもらえると思うから」
そう言うと玲奈は机の下に置いたバッグから分厚い紙の束を3つテーブルの上に置く。
どの紙束もざっと見て100枚以上あり、それぞれの紙の1枚目に『スノーサイドプロダクション調査報告書』と書いてある。
「玲奈先輩、これは?」
「スノーサイドプロダクションのスキャンダルをまとめたものよ。それにしてもこのプロダクションすごいわね。調べれば調べるほどスキャンダルが出てくるプロダクションって中々ないから、こっちも面白くなっちゃっていつの間にかこんな量になっちゃった」
玲奈は手元の紙束を1つ持ち上げながら豪快に笑う。
「玲奈先輩、ちなみにこれほどの情報どのような経路で手に入れたんですか?」
「それは秘密。きれいなバラには棘があるのと同じで、乙女の秘密には深く突っ込まない方がいいよ」
「わかりました。そこは詮索しないでおきます」
燈子も1つ紙束を取ると興味深げに中身を見る。
莉奈も残りの紙束を手に取り、ページをめくった。
ページをめくった莉奈はそこに写されていた何枚もある画像を見て赤面してしまう。
莉奈が持っている紙束には男女が写っている画像が多数あり、そのどれもが生まれたままの姿になりベッドの上で抱き合っている光景だった。
「あぁ、莉奈ちゃんの持ってるのはアイドルが枕営業や他の事務所のアイドルとデートしている所の写真を激写したやつ。その画像データの一覧をコピーしたものだから。いわゆる流出画像ってやつ?」
玲奈は紙束を指差しながら何でもないように莉奈に対して話す。
「このプロダクションの子達って裏に資金援助する人達がついてるのよね。どうやらこうやってアイドルが売れるまでスポンサーをつけてるみたい」
「あのっ‥‥‥‥その‥‥‥‥」
「で、燈子が持ってるのはアイドルの裏についてるスポンサーの一覧。その一覧すごいわよ。殆どが1流企業に勤めている役員に弁護士、しまいには政治家の名前もあるんだから。それで私が持ってる最後の1冊はプロダクションの虚偽の決算報告書の証拠。これも酷いものね。よく今まで話題にならなかったものだわ」
真っ赤になっている莉奈に対して、玲奈はそれらを見ても動揺した様子はない。
むしろ楽しそうにそれらのことについて語っていく。
「それにしても夜のアイドル活動ってこんなにも激しいのね。清純な女の子達がこんなことを毎晩毎晩繰り返していると思うとやんなっちゃう‥‥‥‥‥‥‥‥って莉奈ちゃんそんなに顔を赤くしてどうしたの? 何かあった?」
不思議そうに首をかしげる玲奈をよそに、莉奈はおそるおそる紙の束をめくっていく。
莉奈も性の知識は耳年増な恵梨香に吹き込まれているため、多少ではあるが身につけている。
なので赤ちゃんはお腹から生まれてきたり、キスをすると妊娠するというといった間違った知識は持ち合わせていない。
だが、玲奈から渡された紙に写っている様な濃厚で生々しい行為は見たことがないため莉奈は羞恥心にからていた。
莉奈も年頃の女の子なので見てはいけないとは思いつつも、己の好奇心に負け、ついつい次を見ようとし紙をめくってしまう。
ページが進むたびにその行いは過激なものになっていき、それは先日祐介の部屋で見つけた本をはるかに超える行為がそこには写っている。
莉奈は1枚のプリントを見るたびに顔から湯気が出るんじゃないかと心配するぐらい顔が赤くなり、体は硬直しつつもゆっくりと次のページをめくっていく。
「莉奈ちゃん、それは私が貰おう」
中学生の衛生上によくないと燈子が慌てて、莉奈の手から紙の束を奪い取るが莉奈はいまだに硬直状態から抜け出せていない。
いまだに口をパクパクと動かす莉奈を前に燈子はどうフォローをすればいいか悩んでしまう。
その2人の光景を見て玲奈は1人クスクスと笑い、莉奈の方に視線を移す。
「莉奈ちゃんには刺激が強すぎたかな。でも、莉奈ちゃんもこういうことを覚えておかなきゃ。将来燈子の弟君とこういうことするんだから」
「祐介と‥‥‥‥」
莉奈はそのことを想像して恥ずかしくなり顔がさらに真っ赤になりフリーズ状態に陥る。
その様子を玲奈は楽しげに眺めている。
「玲奈先輩、純情な中学生の女の子に余計なことを吹き込むのはやめて下さい」
「もう、冗談だってば。燈子もそんなに怖い顔しないで」
怖い顔を浮かべる燈子の姿に玲奈もからかうのをやめる。
「莉奈ちゃんも今見たものは忘れてくれ」
「はい」
返事をするがいまだに莉奈の頭には先程の写真が頭を回っている。
しばらくこのことは忘れることは出来ないと莉奈はこの時ひっそりと思う。
「で、ここからが本題なんだけどこういうスポンサーを斡旋したり、虚偽決算を作成しているのが阿南っていうプロデューサーらしいのよ」
「知らない名だな。少なくとも私は聞いたことがない」
「私は知ってます。確か色々なアイドルをプロデュースしている人ですよね」
莉奈は阿南という人物のことを多少だが知っている。
昔テレビでやっていたとある番組で特集が組まれており、その映像を莉奈は見たことがあった。
「確か色々なアイドルグループをプロデュースしている敏腕プロデューサーなんですよね」
「莉奈ちゃん正解。この人は業界内でも結構有名な人なんだけどね。グループもの有名アイドルユニットを輩出してきた人で業界界隈では知らぬものはいないって評判なの。燈子もたまにはテレビを見たほうがいいわよ」
「私は俗世間には染まりたくないので遠慮します」
燈子はそう言うと腕を組み不機嫌な表情になった。
「それにしても全く胸糞悪い話だ。この話が本当だとして、こうまでしてこの子達は有名になりたいのか私には理解しかねる」
「まぁ、でもこういう人達がそう言うことやる理由、私はわからなくもないけどね」
玲奈はクスクスと笑いながら、燈子の持っている紙の束を取り中を見る。
「玲奈先輩、それはどういう意味ですか?」
「言葉の通りよ。その人達も必死にがんばってるってこと」
「この様な営業方法が努力というならば、私はそんな努力感心しませんね」
莉奈は2人が何を言っているのかいまいちわからない。
ただ、2人がお互いの意見をぶつけているのだけは、この場にいる莉奈には見て取れる。
「すいません。私も玲奈さんが言ってることが全く理解できないんですが」
「こういう大人の事情は莉奈ちゃんにはまだ早いかもね」
玲奈はそう言うと苦笑いを浮かべる。
莉奈にとってはその表情は自分が馬鹿にされているように感じた。
「確かに私にはお2人が考えていることはいまいちわかりませんが、この方法はいけないと思います」
「そう、じゃあ聞くけど莉奈ちゃんはアイドルになるための努力って何だと思う?」
「それは歌に踊りにトーク力に‥‥」
莉奈は思う限りのアイドルに必要な要素を玲奈に対して言う。
玲奈はニコニコしながらも純粋無垢に思いつく限りのものを話す莉奈のことを微笑ましく見ている。
「よく言えました。じゃあ聞くけど莉奈ちゃんは同じくらいの実力がアイドルが2人いて、その2人のうち1人しか選べなかったらどっちらを選ぶ?」
「それは‥‥‥‥‥‥‥‥自分がよく知っている方をとります」
「そうよね。じゃあ、自分のことを知ってもらうためにはどうするかな?」
笑顔の玲奈に対して莉奈は言葉に詰まってしまう。
莉奈はこの時玲奈が言いたい事をようやく理解する。
自分を知ってもらうにはその人と話すこと意外にも事務所のコネを使って強引に入れてもらうこともできるがそれがない人はどうすればいいか。
その手段が、莉奈の頭にも思い浮かぶ。
「その人とご飯に行くのも手の1つなら、体を使って相手の心を引き止めるのも一興よね。なんなら相手を自分に惚れさせて色恋で仕事を得るのも手段の1つよ。これらのことも1つの努力って言わないのかな?」
莉奈は玲奈に対して完全に押し黙ってしまう。
燈子は玲奈の隣で難しい顔をして固まってしまった。
「玲奈先輩。それは中学生が答えを出すには早すぎる内容だと思います」
「そうかしら。私は十分考えるに値する内容だと思うけど」
そう言った直後、玲奈ははっとした表情をし、何かを思いついたように話す。
「そういえば燈子の弟さんって、オーディションの合格発表を聞いてから様子がおかしくなったって言ってたわよね? もしかしてこのこと知っていたんじゃないかしら?」
「私からはなんとも言えません。あいつの考えていることなど見当がつかない」
玲奈と燈子がそんな風に話している間にも莉奈は考える。
もし、恵梨香がそんなことをすることになったら自分はどうするのか。
止めるのか、それとも努力だと認めて親友を応援してあげるのか。
短い時間だがよく考えた末、莉奈の答えは決まっていた。
「じゃあ莉奈ちゃんに聞きましょうか。あなたは夜の営業活動で仕事を得ることを本当に努力とは言わないの?」
「私は‥‥‥‥」
その後莉奈は玲奈と燈子相手に自分の考えを打ち明けた。
その言葉を聞いて玲奈と燈子は頷き、莉奈の答えに質問を投げかける。
玲奈の辛辣で容赦のない質問にも1つ1つ丁寧に莉奈は答えていく。
莉奈が全てを話し終えると玲奈が重い口をゆっくりと開いた。
「燈子、貴方の弟君は本当に幸せ者ね」
「本当にそうだな。莉奈ちゃんは祐介にはもったいないぐらいのいい子だよ」
「どういうことですか?」
莉奈のキョトンとした顔を見て玲奈と燈子は顔を見合わせて笑ってしまう。
「いや、なんでもない。こちらの話だ」
「そうそう。莉奈ちゃんは莉奈ちゃんの道を突き進んで。私、あなたのこと気に入ったから。貴方への協力を惜しまないわよ」
笑顔を浮かべる2人のことを莉奈は不思議そうに見つめるだけである。
その後玲奈は引き続き調査を継続することを約束し、莉奈とは携帯のアドレスをお互い交換する。
「何かあったら、その番号に連絡をくれればいつでも出るから。今回の問題もそうだけど、燈子の弟君のことでもちゃんと相談にのってあげる。だから是非連絡してね」
「玲奈先輩、私の愚弟の話は止めてください。貴方に恋愛相談するとろくなことが起きないので」
真っ赤な顔をする莉奈は楽しそうに話す2人のことを黙ってみていた。
こうしてこの日の話し合いが終わり解散したのは日が暮れた頃。
その1時間後、祐介がリビングに現れた時玲奈と莉奈の姿はそこにはなく、疲れたようにテーブルに突っ伏している燈子がいただけであった。




