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お騒がせ女神の学園生活  作者: 一ノ瀬 和人
お騒がせ女神と体育祭
19/57

勢い任せで

後半は説明会となっております

「みんなどこにいるんだろう」


 燈子達とはぐれた莉奈は1人廃工場内をさまよっていた。

 祐介と女神をつけて工場内に入った際、2人が他校の生徒に追いかけられている所を莉奈達は発見する。

 その様子を見た莉奈は燈子達の静止を振り切って祐介達のことを追いかけた。

 途中祐介達が二手に分かれたのを見て、莉奈は祐介が曲がって行く方向を進み、途中で祐介を追いかけていた男達に追いつき全員無力化した。

 

「全く。あいつら何なの? 祐介は何でここに来たの?」


 プリプリと怒る莉奈は祐介が何故ここに来たかを改めて考える。

 当初莉奈達は祐介と女神のデート現場を掴むためにここまで来た。

 だが女神と廃工場に入る所といい、見知らぬ男に追われた所といい莉奈達の想像と全然違う。

 

「祐介がここに来たのって‥‥‥‥女神ちゃんと会うためじゃなかったのかな?」


 祐介の一連の行動に疑問を浮かべる莉奈。


「じゃあ、何のために。この廃工場に‥‥‥‥」


 考えれば考えるほど莉奈はどうして祐介がここに来たのかがわからなくなる。

 それはピースの殆ど揃っていないパズルを解いているようだった。

 その場で考え込んでいると遠くの方で人の話し声が莉奈の耳に届く。

 莉奈が声のする部屋のほうに赴き、中をのぞき見るとそこには複数の男と話している祐介の姿があった。

 

「祐介? 何で‥‥」


 冷静に中の様子を観察する莉奈は床に転がされているある人物に気づいてしまう。

 その人物は莉奈もよく知る友人だった。

 

「あの縛られてるのって‥‥‥‥もしかして則之?」


 見知らぬ制服を着た男子生徒の下に、縛られた状態の則之がいることに莉奈は気づく。

 縛られた状態で眼鏡はかけていないが一目見ただけで則之だとわかる。

 莉奈の視線に写る則之は顔の一部は腫れ上がり、服装はボロボロ。

 則之の近くの床には則之が戻したと思われる汚物が床一面に広がっていて、見るに絶えない光景がそこにはあった。

 その信じられない光景を見て莉奈は驚愕する。

 

「則之‥‥なんであんな‥‥」


『だからこそ俺は則之にこの事実を言った。則之がこの事実を乗り越えるために俺も手を貸したいから』


 ドアの向こう側から祐介の声が聞こえる

 その声はいつもとは違い、凛としていて勇ましい姿であった。

 

『則之君のため? ばかげてる。それは君のエゴじゃないのか? いきなり教えられた真実を乗り越えられる奴なんかいるものか』


『それでも俺は則之が前に進むための道を探すのを手伝いたいんだ。あの時俺にしてくれたように』


「あの時?」


 莉奈は祐介が言った最後の言葉が気になった。


「あの時って‥‥何のこと?」


 祐介との距離が近かったからこそ、莉奈の耳に届いてしまったその言葉。

 莉奈の疑問は膨れ上がるばかりで一向に解決する兆しを見せない。

 

『冥土の土産に聞いてあげようか。どうして君はここまでたどり着いたんだ』」

 

 しばらく祐介の言葉の意味を考えていると、部屋の中から不穏な会話が莉奈の耳に届く。

 それと同時に遠くの方から女神の叫び声が莉奈にも聞こえてきた。

 そして室内では徐々に祐介が壁の方に追い詰められている。

 

『でも、その子が捕まるのも時間の問題だな。君も含めてね』


 祐介の背中が壁についた瞬間、莉奈はポケットから自分のMTエムティーを取り出していた。








☆★☆★









炎の壁(フレイムウォール)


 聞きなれた女性の声が祐介達がいる一室にこだまし、祐介と義信の取り巻き達の間に3Mほどの炎の壁が聳え立つ。

 突然現れた炎の壁に室内にいた一同は驚愕し、混乱状態に陥った。

 

炎の壁(フレイムウォール)? 炎系の中級魔法か‥‥‥‥‥‥‥‥ちっ、誰がこんなことを‥‥‥‥」


 義信が開かれたドアの方を見ると、そこには祐介と同じ中学の女子用制服に身を包んで立っている、顔見知りのおてんば娘がそこにはいた。


「莉奈? お前、何でこんな所に‥‥」


「祐介こそ。こんな所で何してるのよ」


 祐介の窮地を救ってくれた少女は場の空気も読まず、怒った様子でドアの前に仁王立ちをしている。

 その姿に室内の全員が呆然とする中、1番早く動き出したのは祐介本人。

 硬直している義信の取り巻き立ちの横をすり抜けて莉奈の手を取り、ドアの外へと走り出す。


「おいお前達、何をぼさっとしてるんだ。早く追え。捕まえろ」


 義信の声で我に返った取り巻き達も慌ててドアの外へと逃げる祐介達を追いかけ始める。

 それは祐介達がドアの外に出てから数秒後の出来事である。

 

「ちょっと、祐介? さっきから追いかけてくるあの人達は一体何なの?」


「説明してる暇はないから。今はとにかく走る」


 莉奈の右手を引っ張りながら、祐介は必死に走る。

 取り巻き達と祐介達の距離は一向に縮まる気配を見せない。


「行き止まりじゃない」


 必死に走る祐介達がたどり着いた先は、行き止まりの通路。

 ついに祐介と莉奈は逃げ場を失った。

 

「追い詰めたぞ」


 祐介と莉奈が振り向くと先程まで2人が走ってきた場所には、義信の取り巻き達5人がいる。

 取り巻き達は息を切らしながらも、ギラギラした目つきで2人のことをみていた。

 

「そこから動くなよ。お前達には聞きたいことが山ほどあるんだ」


 5人はMTエムティーを取り出すと、祐介と莉奈の方へとゆっくりと近づいてくる。

 

「祐介は下がってて。私がやるから」


「馬鹿。下がるのはお前の方だ」


 莉奈が前に出ようとするのを祐介は必死に制止する。

 自分のことを押しとどめる祐介の不可解な行動に莉奈の怒りは頂点に達していた。


「祐介がかなうはずないよ。私ならあんなやつらすぐ片付けられるから」


「そんなことできるわけないだろ? ちゃんと守ってやるから今は俺の言うことを聞いてくれ」


「祐介はわかってない。MTエムティーを持った人達の恐ろしさを」


 魔法一族の家系に生まれた莉奈だからこそMTエムティーを所持した魔法師のすごさがわかる。

 銃を所持する一般人よりもMTエムティーを所持した魔法師のほうがはるかに強い。

 魔法を出すスピードに加え、威力や殺傷力は銃とは比べ物にならないぐらい圧倒的な差がある。

 またMTエムティーに入っている術式によっては多種多様の魔法が使えるので、銃で武装した一般人等相手にならない。


「私なら大丈夫だから。絶対祐介のことを守るから」


「その言葉は普通男が言うもんじゃない?」


 激しく抵抗する莉奈を祐介は壁と自分の間に挟むような形で莉奈を包み込む。

 祐介の後ろで莉奈は背中を引っかいたりして必死に抵抗するが、祐介は譲るつもりはない。


「痛い、痛いから、爪を立てるなよ。最近の野良猫でもこんなに乱暴なのはいないぞ」


「だったらさっさと私にやらせなさい」


「大丈夫だから。莉奈は安心して俺の後ろにいてくれ」


 2人が痴話喧嘩をしている最中にも義信の取り巻き達が近づいてくる。

 その距離は8mから6mとどんどん距離を狭めてくる。


「もう少し‥‥‥‥もう少し‥‥‥‥」


「祐介?」


 不安そうに祐介のことを見る莉奈。

 それを尻目に祐介は取り巻き達との距離を慎重に測る。

 

「後1歩で‥‥‥‥そこだ」


 祐介が自分のポケットから複数のボタンがついた小型のMTエムティーを取り出し、ボタンを押す。

 その瞬間取り巻き達の体が一瞬震え、地面に倒れてしまう。

 その様子を莉奈は唖然とした表情で見つめていた。

 

「何が起こったの?」


 驚く莉奈には目を向けず、祐介は義信の取り巻き達の方に急いで近づく。

 1人1人の腕を取り、脈を確認して取り巻き達が気絶していることを確認した。

 

「よし、全員無事っと」


「祐介、これはどういうことなの? いつの間に広域魔法なんて上級魔法を使えるようになって‥‥‥‥」


「広域魔法じゃないよ。まぁ、範囲を指定して使う魔法だから広域って捕らえても問題ないんだけど‥‥‥‥」


 祐介が恐る恐る後ろを振り向くとそこには鬼の形相をした莉奈が待ち構えていた。

 その顔には全て説明しなさいと書いているようにも捉えられる。

 昔からの癖で怒る莉奈に対してはどうしても足がすくんでしまう祐介だった。

 

「わかった。説明するから。だからそんなに睨まないで」


 不機嫌な表情を浮かべる莉奈に対して、今起きた現象をどう話そうか悩む祐介。

 今ここで使用したものを極力外部には漏らしたくはないとこの時は思っていた。

 

「まず、今使ったのは音速振動ソニックブームっていう振動系の技で‥‥」


「それくらい見ればわかるわよ。そうじゃなくて魔法の発動した形跡も見当たらないし、魔法を発動した後に出る魔力の残滓ざんしもない。それに音速振動ソニックブームって相手の体を揺らすぐらいしかできないのに、何で相手は倒れてるの? それから‥‥‥‥」


「わかった。とりあえず最初から説明する」


 莉奈のことを騙せないとわかった祐介はあきらめて全てのことを話すことにした。

 莉奈が落ち着いた所で、祐介は静かに説明を始める。

 

「まずは魔法の形跡がないことからだね。それはこれを使ったからだよ」


 祐介が壁の端の方に置いてある立方体の形をした鉄の塊を取る。

 それは先程女神と一緒に廃工場に入った時に祐介が置いたものだった。

 

「これは遠隔操作で魔法を発生させるための装置的なもの。これと同じものがあっちの壁と、前の床に」


 祐介の指指す方には祐介が持っているものと同じ立方体の鉄の塊が置いてある。

 

「これってまだ試作段階で使い捨てだけど結構使えるんだよ。この場合はMTエムティーに術式をインストールするんじゃなくて、これに直接術式を刻んでいるんだ」


 祐介は手に持っていた立方体の鉄の塊を莉奈に渡す。

 術式とは魔法陣のような絵のことを指していて、術式に魔力を流し込むことによって、魔法は発動する。

 術式は通常MAD(メーデ)の中にあるデータベースで管理されており、必要に応じてMTエムティーの方へとインストールしないといけない。

 MTエムティーにインストールした術式は、術者本人の魔力をMTエムティーに流せば好きな魔法が使用できる仕組みとなっている。

 先程莉奈が使用した炎の壁(フレイムウォール)MTエムティーにインストールした術式に莉奈が魔力を流し込んだため、魔法を発動出来た。

 莉奈は祐介が渡した鉄の塊を興味深げに眺めている。

 

「本当だ。直接刻んである」


 莉奈は興味深げに術式が刻まれている鉄の塊を眺める。

 

「それでこのボタンを押すと、3つの立方体に刻まれた術式が反応し合い、魔法を生み出すんだ」


「じゃあさ、何で魔力の残滓がないの? 普通魔法を使った後って、少しだけでも痕跡は残るでしょ?」


「その理由は俺がこれに書いた術式にある。この術式には魔法を発動するために必要な魔力の量も書いてあるんだよ」


 通常なら術に使う魔力の量や術を発動する位置まで術者本人が決めないとならない。

 そのため魔法の慣れていない人が使用すると、術に必要な魔力の量を間違えて大量の魔力をつぎ込んでしまうこともある。

 この時必要以上の魔力を注いでしまうと、辺りには自分の魔法の残りカスが残り、これが莉奈の言う魔法の残滓となる。

 残滓は人間が演算する以上、どんな魔法の熟練者でも少なからず残ってしまう。

 だが、祐介が書いた術式には使用するために必要な魔力の量を全て書きこんであるため、一切無駄のない魔力運用が出来ている。


「俺が使った術式には必要な魔力の量ををあらかじめ設定してるから、余分な魔力は少しも使わない。これが残滓が残らない理由だ」


 元々この術式の制御に関する研究は祐介が大学時代に燈子と共に取り組んでいたものであり、この研究を足掛かりに祐介の魔工師としての人生が始まった思い出深い研究でもある。

 

「理屈は分かった。でもどうしてあの人達が倒れたの? 音速振動ソニックブームって初級魔法でしょ? 威力も全然ないのに普通の高校生が倒れるとは思わないんだけど?」


「その答えなんだけど、俺が音速振動ソニックブームを発動させた場所に理由があるんだ」


「場所?」


 莉奈は立方体の形をした鉄の塊から視線をはずし、祐介の方を向く。

 

「正確には発動させた箇所だ。俺が魔法を発動させた箇所は人体の中。人の神経を音速振動ソニックブームで揺らしたんだ」


「人の神経って‥‥」


「そう、神経。人が痛みを感じるのって体内に通っている神経が揺れた時に感じるものなんだ。俺が今回使用した術式はただの音速振動ソニックブームだけど使用した場所が人体の、それも神経をピンポイントで揺らすための術式だったんだよ」


「それで全身の神経を揺らされたあの人達は、全身に痛みを感じて‥‥」


「それで気絶したって話。こうやって聞くと案外大したことないでしょ?」


「ふ~~ん」


 莉奈は何でもないように装うが、その声には節々に不満の声色が混じっていた。


「でも相手が魔法使ってきたらどうするつもりだったの?」


「相手は魔法なんか使えるはずないよ」


「何で? こんなに距離が離れてるなら使ってもおかしくないと思うけど」


 莉奈は不思議そうな顔で祐介の顔を見る。

 どんな理由なのか莉奈は全くわかっていないようであった。

 

「こんな狭くてボロボロな廃工場で魔法なんか使ってみろ。普通の魔法師なら工場が崩れることを心配してうかつに使えないぞ」


「でも私は普通に使ったけど?」


「‥‥‥‥誰しも莉奈の様に魔法のコントロールに自信があって、度胸のある奴なんかそうそういないよ」


 むっと睨みつける莉奈のことを見て祐介はため息をはく。

 祐介自体も中学時代から莉奈がここまで魔法のコントロールが出来るとは思っていなかった。

 先程莉奈の魔法の使用を止めたのもうっかり魔法が暴発して、廃工場が崩れることを恐れていたためである。


「それにしてもすごいのね。今のMTエムティーって遠隔操作できたり、術式に発動場所を指定する書き込みまでできるんだ」


 何でもないように言う莉奈に対して、祐介は冷や汗を浮かべる。

 祐介が使用しているMTエムティーも術式も転生してから姉の燈子に内緒で作った特注のものである。

 部活動歓迎会後自分の無力さを思い知り、有り合わせで作っていた試作段階のものだが、ある程度の性能は期待できる祐介オリジナルのMTエムティーであった。

 

「まぁ‥‥‥‥今の魔法工学は進んでるから‥‥」


 冷や汗を浮かべる祐介は莉奈をごまかすので精一杯である。

 実際、遠隔術式対応のMTエムティーも場所を指定する術式も転生前に祐介が発明したものだ。

 転生前のノウハウと祐介の家にある使用していないMTエムティーや部品が大量にあったので、ここまでのものを作り上げることが出来た。


「それよりも莉奈にお願いがあるんだけどさ、いいかな?」


「聞いてあげる」


 莉奈は祐介の方を不満な表情で見る。

 先程から祐介が何かを隠そうとしていることが莉奈の目からは透けて見えていた。

 

「今日俺がこのMTエムティーと術式を使っていたことを姉さんには黙っていてくれないか?」


「燈子さんに? 何で?」


 工学に疎い莉奈にはわからないが、祐介が持っているものを燈子が見れば世紀の大発明だということに気づいてしまう。

 この先に発表される予定である発明を今は誰にも知られたくないのが祐介の本音である。

 この先祐介が莉奈を守っていくための切り札としても活用できるため、この発明を他の人に知られるわけにはいかない。

 

「それは‥‥‥‥」


「わかった。祐介が言いたくないなら理由は聞かない」


 莉奈はため息をつきあきれていた。

 

「私と祐介、2人だけの秘密ってことよね」


「あぁ、そうなるな」

 

 そう言うと莉奈は祐介から顔をそらす。

 顔をそらした莉奈の頬はうっすらと赤く染まっていた。

 

「莉奈?」


「その代わり全部話して。ここで何が起こってるのか、則之がなんで縛られてたとか。聞きたいことがいっぱいある」


「わかった。全部話すよ」


 こうして祐介は莉奈に全てのことを話す。

 日笠家の過去と則之の事情に家督争い。

 祐介は自分が知っている限りの情報を莉奈に話した。


後半は魔法についての説明会です。

基本的にはMTの中に術式と呼ばれる魔方陣をインストールすれば魔法が使える仕組みとなっております。

また、MTの中に魔方陣をセットする理由としては複数の魔法を使うためです。

今回のように直接術式を書いてしまうとその魔法だけしか使えないので、魔法師と呼ばれる人達はMTの中に術式を入れるようにしています。

この辺の説明は番外編か何かでもう少し詳しく説明しますのでご了承下さい。

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