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お騒がせ女神の学園生活  作者: 一ノ瀬 和人
お騒がせ女神と体育祭
14/57

目指すべきところ

祐介の転生する前の話になります。

時系列的には中学3年生の夏の話です。

 夏が近くなってくることを告げるぐらい蒸し暑いある日、莉奈と祐介は則之の家まで足を運んでいた。

 則之の家の前には大きな木製の門が聳え立っているため、中の様子はよくわからない。

 一緒に来た莉奈にいたっては則之の家の門を見上げて驚いていた。

 

「予想よりも則之の家って大きいわね」


「莉奈の家よりは小さいよ」


 祐介は莉奈に対してぶっきらぼうに返事を返す。

 中学3年生になってから祐介は数回しか学校には行っていないので、こうして外に出ることが久しぶりだった。

 その学校へ登校した数回も莉奈に引っ張られて渋々行ったものである。

 この日の則之の家に訪問する話も則之が提案したものだが、莉奈がここまで嫌がる祐介を強引に連れ出してきた。

 

「もう帰ってもいい? 家の手伝いがまだ残ってるんだけど」


「だめ。則之が祐介に見せたいものがあるって言ってるんだから」


 祐介は莉奈のことを不機嫌そうな顔で見る。

 そんな不機嫌な祐介を尻目に莉奈はインターホンを押した後、インターホンから流れる声の主と何やらやり取りをしていた。

 

「すぐ行くから少し待っててって」


「わかった」


 莉奈がインターホンを押して数分後、則之の家の扉が開き、そこから則之が顔を出す。

 久しぶりに見る則之の笑顔は以前よりもどことなくすっきりしていたように見えた。

 

「よくきてくれました。2人共待っていましたよ。中に入ってください」


 則之に案内されるままに屋敷の中を案内され、則之を先頭にして家の中を莉奈、祐介の順に歩いていく。


「本当に則之の家って広いのね」


「お世辞は結構ですよ。莉奈の家に比べたらこんな家狭い方です」


「またまた冗談ばっかり。祐介もそう思うよね?」


「そうだね」


 感嘆の声を上げる莉奈に対して、祐介はそっけなく答えた。

 この頃の祐介は学校でいじめられて引きこもっていて、家から殆ど出てこようとしなかったのを莉奈に無理矢理連れ出されて学校に出席する日々が続いていた。

 この頃の祐介は教室には入れずに保健室への登校が続いていた時期である。

 

「もう、祐介はそんな辛気くさい顔をしてないでもう少し反応したらどう?」


「そうだね」


 適当に返す祐介に莉奈はむっとした表情をうかべる。

 

「莉奈、ここでの喧嘩はやめて下さいよ。家の人に迷惑ですから」


「でも、祐介が‥‥」


「何でもです。それよりもつきましたよ。ここが僕の部屋です」


 則之が部屋のドアを開けると中は機械だらけだった。

 あちらこちらにネジやメモリーといったMTのパーツが散らばっており、部屋の中央には大きな機械とキーボードが鎮座している。

 それは一件デスクトップ型のパソコンのようにも思えるが祐介はその機械に見覚えがあった。

 

「これってもしかして‥‥MADメーデ?」


「そうです。あなたの家にも同じようなものがあるんじゃないですか?」


 祐介の家の地下室にも同じようなものが置かれている。

 そこで姉の燈子がこれと似た機械を使って仕事をしていることも祐介は知っていた。

 

「では、動かしてみましょうか」


 そういうと則之は机の引き出しから長方形の形をした小型のMTエムティーを取り出した。

 それをMADメーデにつなげ、電源ボタンを押す。

 起動したMADメーデの画面には無数の文字が広がっていた。

 

「これは?」


「このMADメーデの端末に入っている情報です。この端末には僕が知る限りの術式が入っています」


 則之はパソコンを見せながらキーボードをタイプし始める。

 それにより則之のパソコンの画面には文字は消え、複数の術式が描かれていた。

 

「このMADメーデは全てのMTエムティーに対応していて、国際魔法研究所が公開している全ての術式がインストールされています」


「全ての術式が入っているって事は、どのMTエムティーに対しても術式を入れることが出来るんだよな?」


「はい、そういうことになりますね。どのMTに対しても問題なく処置を施せます」


「もう全然わからない。どういうことなのか説明しなさいよ」


 先程とは違い饒舌に話す祐介に対して莉奈は怒りの表情をうかべた。

 

「わかった。まずは今現在MT(エムティー)の制作会社である大手3社の名前を全部挙げられる?」


「バカにしないでよ。えっと‥‥ヨーロッパにあるアナスタシアでしょ。それとアメリカのイエロートラスト。最後に日本のシルバーウルフの3社。これが大手って呼ばれている所でしょ?」


「大体合ってる。その3つの会社で作っているMTにはそれぞれ特性があって、中には国際魔法研究所で公開されているんだけど使えない術式もあるんだよ」


「そんな奴もあるの? 術式ってどれも同じようなものだってお父さんには聞いたけど」


「公開されているものはMADメーデには入れられるんだけど、MTエムティーにインストールできないものがあるんだよ」


「でも、則之の持っているのは全てのMTに対応してるんだよね? それって祐介の話と矛盾してるんじゃない?」


 莉奈がむっつり怒っているのを祐介は冷ややかな目線で見つめていた。

 則之は一触即発の状況に慌てている。

 

「話を最後まで聞けよ。だからそれだと不便だってことで最近全てのMTに対応したMADメーデが発売されたんだよ」


「祐介の言っていることを補足しますと、MADメーデには全ての術式が入るんですけど全てのMTにインストールできるものは今まではなかったんです」


「最近やっと全てのMTに対応しているものが発売されたんだよ。多分そこにあるのはその最新型」


 祐介達の説明に対して莉奈は納得するそぶりを見せない。

 逆に余計に悩んでいるように見えた。

 

「でも、不便なら何で初めから全てのMTエムティーに対応したMADメーデを作らなかったの? それって不便じゃないかな」


「それは企業の利益のためだと思う」


 祐介が莉奈に話した内容は姉から聞いたものだ。

 大手3社が開発した術式に関しては、国際魔法研究所に登録してあっても使えないものが多い。

 その理由は企業の独占的な収益にある。

 術式のインストールをフリーにすることは国際条約で明記されているが、MTに関しての制約は何も明記されていない。

 そのため、企業で開発した術式はその企業のMT専用になることが多い。

 そうすることであまり他社とは遜色がないスペックでも、自社MTの売り上げが急激に上がることもある。

 中にはその術式を使いたいがために、最新式のMTよりもスペックが低い他社製のMTを使っていることもざらにある


「まぁ、このことは学校ではやらないことだから莉奈が知らなくてもしょうがない」


「祐介が博識ぶってるのがなんかむかつく」


 すねる莉奈を則之がなだめることでこの場は何とか収まった。

 

「祐介、この環境を見てわかると思いますが僕は魔法工学技師、魔工師を目指します‥‥‥‥あなたの姉のように」


 祐介を真っ直ぐ見つめる則之の顔は本気だった。

 それはこの部屋を見ても一目両全である。

 

「祐介はそれだけの知識があるのに家に引きこもっているだけでいいのですか? 非常にもったいないと思うんですが?」


「俺は‥‥‥‥」


「今は答えを求めません。人は重要な決断を下すまでに時間がかかるものです。僕も‥‥‥‥‥‥‥‥2年かかりましたから」


「則之?」


 その時の則之はどこか寂しそうにしていたのを祐介は覚えている。

 右手の拳を握り締め、何かに耐えているようであった。

 

「いえ、何でもありません。とりあえず祐介には僕の決意を聞いてほしかったんです。それよりも暇ならぱ僕の作成したMTも見てくれるとうれしいです。まだ試作途中ですが」


「わかった」


「ちょっと私も混ぜなさいよ」


 そういい、則之の部屋で莉奈も交え3人でMTエムティーの最適化と術式について日が暮れるまでまで話し合った。



☆★




「今考えるとあの時則之は自分で決断をしたんだな」


「ちょっと祐介さん? なにボーーっとしているんですか?」


 女神の問いかけに祐介ははっとし我にかえる。

 

「ちょっとな、昔のことを考えていたんだ」


「それって、転生前の素人童貞変態鬼畜ニートの祐介さんのことですか?」


「お前はさっきから一言多いんだよ」


 空気を吐き出すように言われる罵倒をする女神を睨みつけながらも祐介は考えていた。

 あの後も祐介は引きこもっては莉奈に家から引きずり出されていたが、則之のあの言葉が後に関東魔法高等学校を受ける決め手になった気がしていた。

 

「あの時は俺が助けてもらったんだ。そのお返しをしないとだめだよな」


「祐介さん?」


「悪い、それよりも則之に腹違いの兄妹がいるならそっちも調べてみた方がいいかもな」


「はい。では私は彼らの経歴について調べて見ます」


「なら俺は身辺調査だな。どんな人と付き合いがあるか調べてみる」


 こうして女神と祐介の2人だけの話し合いは進展を迎える。

 則之から将来進むべき道を教えてもらった借りを返すために、祐介はこの後の調査も奮闘した。

 

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