スタンドバイミー
ガラスにぺたりと手をついて、それを目で追う。
水の中を自由に泳ぐ魚。
広い広い水槽に、カーテンのように光が差し込む。
きみは多分、水族館が嫌いなんでしょう?
だって、全然、魚見てないもの。
きみもわたしも、世界は青く染められて、空間がその一色だけ。
ずぅっと上に見える水の天井が、きらきら光っていた。
小さな懐中電灯の光のように、太陽がそのずぅっと上で、水を反射させている。
その、放射線状に広がる光を遮るように、すぅっと、イルカやエイや小さな魚の群れがゆっくり泳いでた。
水の中の生き物たちが、光を、世界を揺らす。
だけど、やっぱりきみは魚を見ない。
イルカはちょこっと見たけれど。
ずぅっと前に、きみがわたしに聞いたこと。
魚を見るのが、そんなに楽しいのかって。
今から言おうか、その答えを。
魚は泳ぐよ。
ゆらゆら、すいすい。
ひとりで綺麗に泳ぐの。
わたしは魚が羨ましいの。
きみには分からないと思うけどね。
ばかにしてるわけじゃないし、分かって欲しいわけじゃない。
分かってなんて言わないよ。
だって、分かりっこないもの。
他の誰かが思うことの全部なんて。
だから、わたしのこと、知ってるだけでいいよ。
近くにいるだけでいい。
だから、ねぇ――。