彼女の眼鏡に恋をした
もうすぐ祝宴が始まる、この男の思いのままになるのは気に食わなかったが。もうこれ以上彼に迷惑をかけるわけには行かない。
「準備はできたかな?」
皮肉にも今日は3月23日、卒業式の日だ。
「まったく、愛想がないな。その眼鏡はずせば少しは可愛らしくなるのでは?」
「止めろッ! これは……」
ふっと和道は笑いその手を引っ込める。
「まあいいさ、さて準備はできた始めようか」
両組の幹部が集まっている中で祝宴は始まった。そして次第に進行していき、とうとう誓いの言葉に移った。
「汝いついかなるときも妻を愛し続けることを誓うか?」
「誓います」
「汝いついかなるときも夫を愛し続けることを誓うか?」
「私は……」
「どうした? 早く言え」
心のどこかで彼が来るのではないかという希望があった、しかしそれは私の妄想に過ぎない。
「誓い――」
「その結婚式まったあああぁぁぁああッ!」
ドアがはじけ飛ぶ音とともに一人の男が立っていた。
「まさか……、嘘ッ!」
自然と涙が流れた。彼はやはり来てくれた。
「あの男懲りずによくも……、いい今度は殺してしまえ」
その言葉で何人もの男たちが立ち上がる。
「おっと今度はそうさせない」
すると幹部の中から一人の男が出てきた。
「老いぼれに何ができる」
「わしはあの男のことを気に入っておっての、お前さんなんかの何倍もじゃ」
吉田に続き数名の男たちが立ち上がる。
「ふっ、なるほど辰巳様がほれ込むだけはある」
如月轟が立ち上がる。
「あんなクソみたいな男に真竜組がつぶされていいのか? 違うはずだ、辰巳様が何年も築き上げたこの組は俺たちの家みたいなもんじゃないのか?」
その言葉に次々と真竜組みの男たちが立ち上がる。
「雑魚は任せろ、お前はあいつをやれ」
「おう」
乱戦の中あいつと俺は向かい合う。
「まったく貴様は何度も何度も私の邪魔をする」
「ああ、何度だっててめぇの薄汚れた野望なんざ打ち砕いてやる」
和道はタキシードを脱ぎ捨てファイティングポーズを取る。俺も同じようにブレザーを脱ぎ捨て構えを取る。
「オラァッ!」
俺の一撃は宙を切り和道は俺の懐へと入る。
「ダアァッ!」
そして俺のわき腹に一撃を叩き込む、そしてそのまますばやい動きで顔に一撃、右太ももに一撃、フィニッシュのつもりで俺の頬に一撃を決めようとする、が……。
「3発だ、俺は始めからテメェに3発殴らせてやるつもりだった」
フィニッシュの一撃は俺の手がさえぎりその拳を俺は握っている。
「なにを……」
その手をつかんだまま俺は和道にヘッドバッドを決める。
「そして今から4発で俺はテメェをぶっ倒す、ちなみにそれは俺の分だ」
「貴様ぁああッ!」
もうひとつの拳で和道は俺に殴りかかる、それを軽く避けその顔面に2発目をお見舞いする。
「それは辰巳の分だ、辰巳の意思にそむいたお前への怒りだ」
「くそっ離せよ、離せよッ!」」
いたずらに自由なほうの腕を振り回す和道に3発めを繰り出す。
「そしてそれは皆の分だ、小雪を心配している連中の思いだ」
すっかり戦意をそがれた和道はただ立ちすくんでいた。
「4発目は小雪の分だ、意思を無視され心を踏みにじられた小雪の悲しみだ」
「なんなんだよ、なんなんだよお前はあぁぁぁああ……」
「俺か? 俺は通りすがりの変態だあああぁぁぁああッ!」
掴んでいた右手を離し、俺は大降りで和道の顔面を殴った。和道は吹き飛びパイプ椅子の中に突っ込む。
「さてと」
「鏡……」
「迎えに来たぜ」
俺はそっと小雪を抱きしめた。
「まさか来てくれるなんて……」
「悪かったな、今度は絶対離さない」
いまだに乱戦は続いていた。しぶしぶその抱擁を解き、そこへと参戦しようとする。
「まて、ずいぶんと迷惑をかけたようだな」
そんな懐かしい声が俺を引き止めた。
「静まれえぇぇぇええッ!」
その声に殴り合っていた両組の人間は動きを止める。
「俺の留守中よくも好き勝手やってくれたな、お前ら」
そこには田所辰巳の姿があった。
「まさか……生きて」
「勝手に殺すなバカ共、お前ら覚悟はいいだろうな」
その言葉に両者の動きは完全に沈黙した。
「よう、元気そうだな」
「おかげさまでな」
まるで本当の親子のように俺と辰巳は微笑み会った。
「さて、すまなかったな。それで小雪とのこと何だがやはりあとを継ぐ気になったのか?」
「やだね、誰が継ぐか。じゃ後は任せた、小雪いくぞ」
「え、えぇ!?」
俺は小雪を抱きかかえると走り出した。
「追いますか?」
「バカ、誰があいつを止められるというんだ」
頬が緩む。久々にここまで気持ちよく思いを裏切られた。
「それもそうですね」
「ああ、本当に見たこともないほどの変態だ」
「ちょっと、どこに行くの?」
「どこにだって行くさ、お前の見たこともないもの、行ったことのない場所、やったことのないこと、全部だ」
「鏡……」
「お前は自由なんだ、もう何をしたっていい」
「私は……」
またしても涙が小雪の頬を伝った。
「思えばあの日すべてが始まった、あの日俺はとある女性に出会った。わがままで、意地悪で、でも寂しがり屋で、強がってて。だから俺はそんな彼女に……」
そうあのときからたくさんの出会いがあって、今に繋がる。多くの月日が流れた。そして今だから言える。
「彼女の眼鏡に恋をした」
さて長いようで短かったような
そんな話でしたがようやく完結しました
いや結構無理矢理でしたが……
ってなかんじで私は受験に向けてシフトチェンジ
また受験が終わったらリメイクを書きますね
そこでは書けなかった話も書いていけたらいいな……
ではまたどこかで奈良都翼でした
よろしかったらご感想ください^^




