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そして俺は……

「ここは……」


 ぼんやりと俺の頭にもやが掛かる。俺は誰だろう、どうしてここにいるんだろう。


「鏡君! 目を覚ましたんですね」


「鏡……? それは俺か?」


「何を言ってるんですか」


「私先生呼んできます」


 女の子がかけていく、知っているような気がするが思い浮かばない。




「記憶障害ですね。明日には直るかもしれないし、一生直らないかもしれない」


「そんな……」


「とりあえず記憶の手がかりとなるような刺激になるものを多く与えるべきです」


「そうですか、ありがとうございます」


 女性が頭を下げると白衣を着た男性はどこかへといってしまう。


「鏡君、私のこと分かります?」


 女性は俺の眼を見てたずねる。


「ごめん、分からない」


「そう……、まあゆっくり思い出していきましょう。先生からは帰ってもいいと言われているので、今日は帰りましょうか」


「鏡……」


 女の子もこちらを心配そうに見つめる。


「えっと……」


「私は鑢千鶴、あなたの姉です。鑢鏡」


「私は杉浦久美、昔からずっと私たち一緒にいたのよ? 思い出せる?」


「……ごめん」


 俺は首を振る。




 それから何日も過ぎ日は3月23日、俺の通っていた学校では卒業式らしく、俺はそれに出席することにした。


「この木……」


 学校に来て目についたのは一本の木だった。何か大事なことを思い出しそうなそんな気がした。


「俺は……」


「鏡!」


 呼ばれて振り返るとそこには3人の男子生徒が立っていた。


「ごめん、俺記憶が……」


「知ってる、千鶴先生から聞いたよ」


「俺のこと思い出せるか、まあ覚えていたとしても名前間違えるだろうけどさ」


「鏡、俺らずっと一緒にバカやってたよな。思い出せるか?」


「ごめん」


 答えは変わらなかった。


「俺は里村博、中学のときから一緒につるんでたんだぜ俺たち」


「俺は立花腱、初めて会ったときいけ好かない奴だったけど。今じゃお前は俺の親友だ」


「俺は山本太郎、お前何度も俺の苗字間違えたよな」


「博……腱……山城……」


「山本だちゅうに!」


 懐かしいそんな雰囲気が漂った。


「屋上で先輩が呼んでる、行け」


 俺はその言葉に促され、屋上へと向かった。




「よう、元気……てのは病人に聞く言葉じゃねぇな」


「えっと……」


 そこには一人の男が立っていた。


「なあ鑢、お前が俺を倒した日のこと覚えてるか?」


 そういってその男は近づいてきた。


「あの日お前は小雪を自由にしてやりたいって、全力だったよな。そんで俺もついお前に賭けちまった」


「その……」


「だけど今のお前にはそんな思い託せられねぇ」


 ぎゅっと如月の力が強まる。


「鑢いぃッ! 歯あぁ食いしばれえぇッ!」


 男の拳が俺の頬へと突き刺さる。


「なにをするッ!」


 自然と熱いものがこみ上げてきた。俺は駆け出し男に一撃を決めた。


「そうだ、お前はそうでなきゃいけない」


「何を言ってるのかわかんねぇよ」


「ああそうさ、俺たちは言葉なんかじゃ分かりあえねぇ。だからこの拳があるんだろ」


 男との殴り合いが始まる。どこか懐かしいこの戦いは一進一退だった。


「お前は誰だ、お前は何がしたいッ!」


 男のモーションが一瞬止まって見えた。そして消えていた記憶と繋がる。


「俺は……」


 そして俺は男の拳を掴んでいた。あの時俺は全力だった、もう二度と彼女にあんな顔をさせないと誓った。


「俺はッ! ……鑢鏡だああぁぁぁああッ!」


 俺の右ストレートが男の顔を捉えた。男は体勢を崩し倒れこんだ。


「ハアハア、ったっくこんな気持ちよく負けたのはいつ以来か」


「今度こそ彼女を救って見せます、……如月先輩」


「おう、お帰り鑢鏡」


 俺は走り出したすべてに決着をつけるために。




「この音は……」


 校門に向かう道で足が止まる、聞き覚えのある音が音楽室から聞こえた。


「音色……」


「鏡君」


 扉を開くとそこにはやはり音色の姿があった、音色は俺に近づき俺を抱きしめた。


「……」


 俺はそっと背中に手を回そうとする。


「やめて」


 その行動はその言葉によってかき消された。


「だめ……だめだよ、私なら耐えられるよ」


 唇をかみ締め音色は言葉を繋げた。瞳を閉じ小さな体は小刻みに震えている。


「でも会長も、鏡君もこのままじゃ一生心に傷が残る」


 その抱擁が緩み、そして音色は数歩下がった。


「だから今だけ、これは私の最後のわがまま」


 伏せた瞳をそっと俺へと向ける音色。今にも泣き出しそうで崩れてしまいそうな姿に、思わず引きとどまりたくなる。


「私は……私はあなたのことが好きです」


 その言葉の意味は痛いほど分かった。


「もう行って……、会長を小雪を助けてあげて」


 顔をみせないように俺に背を向けと音色はそう言った。


「音色……ありがとう」


 そうつぶやき俺は走った。




「久美……」


「記憶戻ったんだ、よかった」


 校門には久美の姿があった。


「いつかこんな日が来ると思ってた」


 ポツリと声を出す久美。


「分かってる。いつまでも鏡は私の幼馴染じゃなくて、いつかどこかへ行っちゃうことも……」


 感情に任せ次々に言葉を連ねる久美。それに自分の言葉を混ぜることはできなかった。


「だからね、今日この思いを伝えなきゃ後悔すると思う」


 久美の言葉が一瞬詰まる、しかしその視線が俺に言葉をつむがせることを止めさせた。


「だから聞いて、君に黙ってずっと温めていた思い」


 そして久美は小さく息を吸い込んだ。


「ずっと好きだった、小さいときから今まで」


 あふれた思いは俺を包んだ。


「突然ごめん、聞いてくれてありがとう」


「俺も……今まで気がつかない振りしてごめん」


 俺も彼女に抱いていた思いを今打ち明けるべきだろう。


「知ってた、俺もお前が好きだった……だからこそ、お前は俺なんかよりずっといい奴に出会えるそう思って諦めた」


 そう言って言葉をとめることなくもう一度口を開く。


「そしてこんな風に気がつかない振りをしてればいつか俺を諦めてくれると思ってた、けどお前は……ずっと俺を好きでいてくれた。だからごめん……今までずっと」


「あ~ぁ……ふられちゃったよ」


 そんなため息交じりの言葉を吐き出した。


「もう行って……まったくバカ私をふるなんて」


「あぁバカだな、俺は」


 そして俺は走り出した。


「鏡!!」


「ん……?」


「バーカ!! 大好き!!」


 涙を流しながら笑い久美は叫んだ。俺はふりかえらず走った。

さていよいよラスボス戦

音色ちゃん、久美ごめん本当に


よろしかったらご感想ください^^

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