別れ
次の日から小雪の姿は学園のどこにもなかった。ただの風邪ならばよいと思ったが、翌日も翌々日も現れなかったため、俺は小雪の家へと向かうことにした。
「もしもし、誰かいますか?」
ドアを激しく叩くと二人の男たちが出迎えをしてくれた。
「あいにくお嬢さんはお前とは会えんのでな、また今度にしろ」
「今度っていつの今度だよ」
「ええい、さっさと帰ッ!?」
二人を壁に叩きつけると俺は屋敷の中へと侵入した。
「お邪魔するぜ」
以前来たときの記憶をたどり小雪の部屋へと向かう。途中やってきた男たちを片っ端からひねりつぶし、とうとう俺は小雪の部屋の前に来た。
「ここかな、おい小雪いるか?」
「鏡! 鏡なのか!?」
「ああ俺だよ」
部屋の扉には鍵が掛かっていた。しぶしぶ屈伸をし足の関節を伸ばす。
「少し扉から離れてろ」
「わ、分かった」
小雪の合図を聞くと同時に渾身の力でドアを蹴り飛ばす。するとドアは内側に倒れこみ中には小雪の姿があった。
「さてよく分からんけど、ひとまず行こうか」
俺は手を差し伸べた。小雪は恐る恐る俺の手を掴んだ。
「行かせるか、お嬢さんはもうすぐ祝宴がある」
「なるほどね」
あたりを数名の男たちが取り囲む。しかし姉さんが帰ってきてからというもの俺はあの時以上に力を高めた。ゆえにそんな連中をひねりつぶすのに時間は掛からなかった。
「行くぞ」
「あぁ」
そして小雪を連れ出し屋敷を後にした、途中何人も追っ手が来ていたがそんなのも俺にとっては物の数ではなかった。
「さて、これからどうしたものかな」
家まできてようやく一息つけた。晩飯代わりに冷蔵庫のものを適当に食べる。
「鏡……」
「心配すんな、お前のことは俺が守るさ」
姉さんは不在のため今ここにいるのは小雪と俺だけだ。つまり彼女を守るにしても俺だけの力でだ。
「ひとまず食え、いざってなったら力でねぇぞ?」
「そうだな、いただくよ」
「それでどうしてこうなったんだ?」
「父が不在のため組の中の強硬派が和道組との合併を進めようとしているんだ」
「まさか、あの和道流って奴のことか?」
「そう、父がこのまま死ねば財産は私に移る、そして和道と私を結ばせれば合併完了、簡単な話だろ?」
だからあの時、辰巳は俺にこの話を持ちかけたのか。
「ゆるせねぇ」
「しかしこうしているうちに奴らは次の手を考えているはずだ、ここにこもっているのはあまりよくない」
確かに家にこもれば大勢が押し寄せてくることになる。それならいっそのこと町へ逃げていたほうが少数との戦いで済む。そうすれば俺にとってすれば楽勝だ。
「そうだな、じゃあ準備を済ましてここを出よう」
一通り準備を整え家を出た。あいにくまだ家に奴ら追っては来ていないらしい。
「それじゃ行くか」
「あぁ」
ひとまず住宅街ではなく人の多い市街地へ向かうことにした。そうすれば相手も下手な動きはできないはずだ。
『奴ら市街地に向かい動き出しました』
「ふふっ、私の予想通りだ」
『では先ほどのような動きで』
「ああ、そうすればこの茶番も終わりだ」
私の長年の夢がようやく叶う。そう思うと自然と頬が緩む。
「待っていろ小雪」
男はそうつぶやき動き出した。
「くそ、さっきから市街地から離れていく一方だ」
追っ手を警戒しながら動くうちに市街地から離れ、町外れへと向かっていた。
「このままじゃ隠れられる場所もない、……あれは」
ふと目に付いたのは廃工場だった。
「あそこに隠れるか」
「ああ」
ひとまず明るくなるまではあそこに泊まるとしよう。
「悪かったな、あまりいい寝床を用意できなくて」
「かまわないさ、君が隣にいるんだから」
工場の中の応接間は比較的まだきれいだった。ソファーは少しほこりを被っていたがそれをぬぐえばどうってことはなかった。
「さて、明るくなったら行動開始だ」
俺は彼女を守れるのだろうか? いや守るんだ何があっても。
「お休み」
「お休み」
言葉を交わし眠りについた。
「ん」
腕時計を見ると時刻は午前5時だった。あたりは少し明るくなっていた。そして砂利を踏む音が複数聞こえた。
「まさかな……」
応接間からそっと覗くとたくさんの男たちがそこにはいた。
「クソ遅かったか」
ここが見つかるのも時間の問題だろう。その前に行動を起こさなくては。
「小雪起きろ」
「んっ、朝か?」
「どうやらあたりを囲まれてる、今ならまだ一点突破で切り抜けられそうだ準備をしてくれ」
「あ、あぁ分かった」
そういって支度を整える小雪、俺は辺りをうかがいそのときを待っていた。
「今だ!」
応接間の扉を開き一気にかけ出る、あたりには複数の男たちがすでに張っていた。
「邪魔だ、どけぇッ!!」
顔面に一撃を叩き込み一人を沈ませる、それに動揺する奴らを一人一人沈め道を作る。
「いたぞ、あそこだ」
男たちが駆け寄ってくる。その数はあまりにも多く、俺たちは壁際に追い詰められた。
「これはこれは、いつぞやの」
「和道」
以前あったときと同じように白いスーツにワックスで固められた頭、和道流がそこにいた。
「あなたたちの行動は簡単に読めましたよ。簡単に逃げられると思わないでください、ここには和道組の総力と真竜組の強硬派がいるんですから」
「ふっ、それを聞いて安心したぜ。ならここにいる奴を全員倒せば俺たちを追う奴はいねぇってことだな」
「減らず口を、やってしまえ」
多くの男たちが殴りかかる、それをかいくぐり一人また一人と沈めていく。
「その勢いはどこまで続くかな」
「どこまでもだよッ!」
20人ほどが地に伏せたがまだまだ終わりが見えない、こうなったら一か八か和道自身を抑えるしかない。
「食らえッ!」
俺の拳は和道の腹部へと向かっていたと思われたが、それは直前で止められる。
「あいにく、私は武術をやっていてね」
拳を掴んだまま回し蹴りを決められ大きくのけぞる。
「少しはやるみたいだな」
「おっと、私の相手をしていていいんですか?」
和道の視線をたどると今にも小雪がつかまりそうだった。
「小雪に触れるなぁッ!」
掴みかかろうとしていた男に蹴りをお見舞いする。しかしその大きなモーションが命取りになった。
「ジ・エンドだ」
突然視界がぼやけ、そのあとに強烈な痛みが頭部を襲う。
「な……んだ」
俺は鈍器で頭を殴られていた、薄れ行く視界の中それを確認し小雪のほうを見る。今にも泣き出しそうな表情だ。
「そんな……悲しそうな顔……すんな……」
俺の意識は暗い闇の海に沈んで行った。
鏡は倒れ、今私の目の前で倒れている。自然と涙が頬を伝う。
「さて、私におとなしくついてくればこの男の命は保障しよう、どうだい?」
「悪魔め」
和道をにらむ、しかし私の体は小刻みに震えていた。
「さあどうする? お前が決めろ」
「ついていくわ」
「ほう、頼むのであればもっと別の言い方があるのでは?」
和道はそのむかつく微笑みはさらに深いものに変わった。
「ついていきます、なので鏡をこれ以上……」
私のわがままはこれで終わりだ、もうこれ以上彼に迷惑はかけられない。
「ふははははッ、そうかそうか分かったよ。その男を病院の前にでも転がしておけ」
男たちが鏡を抱える。
「ごめんね鏡、さよなら」
そんな言葉が彼に届くことはなかった。こんなことならもっと話をしておけばよかった。彼のと過ごした日々が頭の中を駆け巡る。さよなら鏡、……私の愛する人。
一気にラストスパートです
さて今後どうなってしまうのか
よろしかったらご感想ください^^




