海! その①
時は流れ学校は期末テストを終え、終業式を向かえいよいよ夏休みに突入した。
「んじゃ、行って来ます」
誰もいない家にそういい残す。両親はまだ旅行から帰ってきていないし、姉さんは久美とどこかに出かけたらしいのでここ何日かこの家には誰もいないことになる。
「さてと、行きますか」
自転車を走らせ駅まで行き、そこから電車に乗り二駅ほど過ぎる。
「時間通りだな、少しは早く来ようとは思わないのか?」
改札で待ち構えていたのは小雪だった。服は真夏というにも関わらず露出の少ない丈の長いスカートに、長袖のセーター。
「いいだろ間に合ったんだから」
他の面子は三姉妹を除き全員いるようで俺が来るや否や動き始める。
「鏡、千鶴さんはどうしてる?」
俺の歩く早さに合わせ、腱が肩を並べながら聞いてくる。そういや姉さんがよくこいつのことを気にかけてったけな。
「どうって、特に……そういや久美と出かけたっけな」
あと日の朝にはテレビの前に張り込み、ト○コを見て『きゃー、ト○コさんの筋肉素敵!』とか言い出したりしてるって事はこいつは知らないほうが幸せだろう。
「そうかそうか、いや変なこと聞いてすまない。ところで兄がほしいとは思ったことはあるか?」
「は? 何言ってんの?」
「いや、気にしないでくれ」
どうしたのだろうか、にやけてとても気持ちが悪い。
「ところでどうやって行くの?」
「さあ? 聞いてない」
駅を出るなり目に飛び込んできたのはマイクロバスだった。そして中から見覚えのある面子が3人出てきた。
「鏡さん、お久しぶりです」
飛魚の如く華麗に俺の胸へとダイブしてくる響、後ろに下がりながら衝撃を抑えつつ体勢を立て直す。
「久しぶりだな、元気にしてたか?」
「はい、おかげさまで」
音色の話を聞く限りではあのあと姉妹間の関係は良好らしい。何よりこの響の幸せそうな表情がそれを物語っている。
「こら、あまり騒ぐんじゃないの」
と唱、サングラスからのぞく鋭い視線は相変わらずだ。
「鏡君…………響ちゃんには手出さないって言ったよね?」
音色が髪を咥えながら、どすの聞いた声でつぶやく。瞬きひとつせず、効果音をつけるならゴゴゴゴゴって感じだ。
「あのさ目大丈夫? 今俺何もしてないよね」
手を出したというよりは手を出されたというところだろう。さて、どうやらまた多くの時間を浪費することになるだろう。
「ほう、君は彼女らとすでに知り合いなのか?」
言葉を潜めていた小雪が声を出す。
「ん、まあそんな感じ」
「……? なんでため口なの?」
音色にそこまで言われてようやく気づいた、プライベートだがプライベートではないことに。
「別にいいではないか、それに私と彼の仲だ」
担任が親父ギャグを放ったときのように場が静まり返る。
「会長、お話が」
「ちょうどよかった、私もだ」
第二次世界大戦後の資本主義と社会主義の如く、冷たい戦争の火蓋は切って落とされた。
「とりあえず乗り込んで、話続きは中でね」
唱の言葉に促されマイクロバスへと乗り込む二人。
「俺、鏡さんの隣がいい」
「別にいいぜ」
響きの提案を断る理由もなく了承する。
「ひとまず隣が女じゃなければいい」
と如月先輩、必然的に俺か腱が隣に座ることになるのだが。
「はいはい了解」
俺の視線に気づいたように腱が答える。
「んじゃ、お願いします」
「はいはい」
見知らぬ男性が運転席に座っている。肌は白くあまり健康的とはいえない、今にも倒れそうだ。
「誰?」
「……田中です、よろしく」
「この駄犬は一応私のマネージャー」
独り言のように情報を付加する唱。
「はい……、マネージャーさせていただいてます」
田中さんがんばれと心の中で三回唱え座席につく。
「じゃあ、出発しますね」
弱々しい声でそう言うと同時にアクセルを踏む田中さん、すると空気が変わったことに気づく。
「ちょっとスピード出しすぎなんじゃ……?」
「は? 甘っちょろいこと言ってんじゃないぜボーイ、まだまだスピードが足りないぜ!」
口調というより人間が変わったというべきだろうか? マイクロバスはスピードを上げていく。
「ヒャッハアァッ!」
田中さんの妙な奇声は楽しいたびの始まりを告げた。
いつも物静かな人が運転が荒いってことはよくあることですね
そして始まった小雪と音色の戦争
さて、次はとうとう海です
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