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彼女の眼鏡に恋をした  作者: 奈良都翼
鑢鏡の挑戦
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鑢鏡の挑戦その⑧

「3ストライクアウト! チェンジ」


 手がしびれるほど勢いのいい球は、ミットの中央に吸い込まれるように入る。これでまた三振記録を更新した。


「おつかれ」


 ピッチャーに声をかける。親しい顔がにっと微笑む。


「おう」


 試合は早くも3回戦を迎えた。これを含めあと2勝で優勝が確定する。


「余裕だろ、博」


「まあな」


 彼曰く「この肉体は今日のために作り上げてきた」だそうだ。


「しっかり決めていこうぜ」



「バッターアウト、ゲームセット」


 完全に相手の打者を押さえ込み、こちらの完全勝利で第三試合は幕を閉じた。


「さて次でラストだな」


「相手は野球部のメンバーが多い、そううまくはいかないかもな……」


 柄にもなく博が弱気だ。ここまでのピッチングを見る限りそんな不安とはかけ離れているようにも見えた。


「お前なら大丈夫さ」


 そんな不安を抱える博にかけてやることができる言葉は今の俺にはこれしかなかった。


「そう……かな、だといいな」 


「そろそろ始まるみたいだぜ」


 審判が招集をかけている、オーディエンスはこの試合な参加していないすべての男子だ。他の競技はすべて終了しているため、自然とここに注目が集まる。

 

「ちぇっ、ヤローばっかり」


 山本が愚痴る。確かに見ていて心地いい光景とは言えない。むしろむさくるしい。


「すぐに女子のほうも終わってこっちにくるさ、だからちゃんとやれよ」


「言われなくたってやるさ」


 いまや顔の面積の大半がシップで埋められた山本はやはり予想道理の反応を返してきた。


「さて、行こうか」




 こちらの先攻から試合は始まる。相手は野球部のピチャーなだけはあった、2人を討ち取り、3番の山本は打ったもののフライをキャッチされアウト、そのまま攻守交替となった。


「博、軽く討ち取ってこう」


「ああ、分かった」


 ボールはミットへと吸い込まれ、何もさせずに3人とも討ち取った。スピードだけなら相手のピチャ―に並ぶだろう。


「さてまずは先制点を取るとするか」


 バットを構えバッターボックスへと入る。俺は4番を任されているため、ここで決められるかどうかが勝負の鍵だ。


「来いッ!」


 一球目は見送り、ボール。まずは相手の球に目をならした。バットを構え直し振るう準備をする。二球目はバットを振ったが球がそれ、ストライク。ここでようやくスピードに慣れることができた。


「次で当てる」


「当てられるなら、当ててみろ」


 三球目バットはボールのやや下側を叩きファール、カウント21で追い込まれる。しかしこれで完全に相手の球のスピードを捕らえることに成功する。4球目を見送りカウント22で再びバットを構える。


「まぐれは続かないなッ!」 


 ピチャーのあなッた球は完全に目で捕らえ、今度は真ん中を強く打ち出す。ボールはセンターの頭上を越え、やや低めのフェンスを難なくまたぐ。


「確かに、まぐれ()続かないな」


「クソッ!」


 ベースを踏み、これでこちらの先制点を稼ぐことに成功した。その後は3打者とも討ち取られ攻守交替。


「よろしく」


「ああ、任せとけ」


 相手の攻撃、勢いのある球を捕らえられずに一人を三振、残りの二人はそれぞれフライ、ピチャーごろ、それを取り難なくアウト。走者を出さないまま2回の表を終了した。


「ナイスピッチング」


「でも2回打たれてる」


 やはりどこか博は弱気だった。それから攻守ともに何もないまま3回を終え4回の表に入る。


「さて、打ちますか」


 二人目の打者が打ち取られ俺へと番が回ってくる。一球目は相手の出方を見るため見送る、判定はストライク。2球目、振ったがボールが落ちバットはむなしく空を切る。これでいきなり追い込まれた。


「やばいかも」


 3球目、ボールに何とか当てたがサードごろ塁には出たものの後続が打てるとは到底思えない。そして予想通り後続は打てずチェンジ相手の攻撃に移る。


「博、すまない」


「何を謝る事がある、しっかり塁に出たろ十分さ」


 ここで点を取れば少なくとも博に心の余裕を与えてやれた。しかしそれはかなわなかった。相手の打者は1番からのスタート、ボールが乱れフォアボール出塁を許す。2番は送りバントをしワンアウト2塁、そして3番はこちらの動揺からのボールの乱れで再びフォアボール。1、2塁で相手の四番最悪の状況だ。


「しっかり決めてこう」


 博は手をかざして返事をするが、心に余裕があるとは到底思えない。


「さて、打たせてもらうぜ」


「うちの投手はできるからね、そりゃ無理ってものさ」


 とは言ったものの、先ほどから球が乱れている、実際微妙なところだ。そして悪い予想は的中しボールは3球ともにはずれてしまう。


「しっかり」


 4球目ボールはコントロールを意識したのか、幾分勢いが足りない。そこを相手が見逃すはずもなくボールは大きく舞い上がる。


「うおぉぉぉぉおッ!」


 それを山本が追いかけ、何とかダイビングキャッチに成功する。しかしそれと同時に1、2塁の走者が動きだす。


「山本送球だ」


「分かってるよ!」


 山本の送球は思ったよりも伸びず、2塁に差し掛かるところで転がる。


「何で誰も繋ぎに行かないんだ!」


 それを取りに博が走る。こうしてるうちに2塁の走者がホームを踏む、博がボールを拾い上げるころにはすでに一塁走者は3分の2に差し掛かっていた。


「間に合えぇッ!」


 スピードは十二分だったが、ボールは大きく右にそれ走者はそれを取るうちにホームを踏んでいた。


「クッ」


「大丈夫だ、まだ2点どうにでもなる」


 その言葉に対し博は顔をしかめる。完全にあせっているのだろう。そのあともフォアボールで出塁を許し、その次で何とか相手を押さえる。


「すまん鏡」


「まだ負けたわけじゃない、ここからだ」


後一回くらいで球技大会も終わり……

季節は夏

夏と言えば海、プール、縁日、キャンプ、夏休みの……宿題?

きっと楽しいことばかり、

そう思えば長かった球技も苦ではなかった……かな


よろしかったらご感想ください^^

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