鑢千鶴の襲来その①
「今日から3週間、教育自習で鑢千鶴先生がこのクラスで副担任として教えることになっています」
「鑢千鶴です、みなさん短い間ですがよろしくお願いします」
担任が入ってきてごちゃごちゃほざいた後入ってきたのは教育実習生、背は俺より高いだろうかかなりの長身だ。かっこいいだの美人だの男子女子問わずざわめく耳が痛い。
「くだらねぇ」
がそんなことどうでもいい、なんかめんどくさいし午前中は授業をサボろうか。
「ハア屋上開いてるかな?」
教育実習生に群がるクラスメイトをよそに、一人屋上へと向かう。
「後藤先生、あの子は?」
ポツリと人の座っていない席に目が行く。
「あいつは問題児でね、あまりかかわらないほうがいいよ」
そんな言葉は私が思っている教育者のものとひどくかけ離れていて、正直軽蔑の心すら抱いた。
「……そうですか」
「はあ、寝るか」
目を閉じて横になる、グラウンドからは何が楽しいのか、たいそう元気のいい声が聞こえてきて少々イライラした。それを頭からシャットアウトすると流れる風の音が聞こえて、だんだん心地よくなって行く。
「うん、いい場所ですよね」
「ああそうだな、……って誰だよ」
目を開けると、そこにはさっきの教育実習生がいた、さっきは気がつかなかったが……すごく(足が)きれいだ。
「あら、さっき自己紹介ならしたはずなのですが? じゃあ改めて鑢千鶴です」
「鑢……?」
どこかで聞いたような……、鑢、やすり、yasuri……。
「もしかして、鏡の親戚の方?」
「あら君、鏡君を知ってるの? その通り、私は鑢鏡の姉です」
驚いた、思ったより世界は狭いようだ。
「さて、私の自己紹介は済んだので、今度は君のことを教えてください」
「そんなの自分で調べればいいだろ」
「私は君の口から聞きたいんです」
じっと見つめられる、鏡の姉だからと言って心をやすやすと開くわけには……。
「……立花腱だ」
「腱君ね、それで健君は何でここにいるの?」
「それはこっちの台詞だ」
「昔私もよくここに来てたから懐かしいなぁ~、と思って。……なんていうのは口実であなたを教室に連れ戻しに来ました」
「……」
なんと言うか調子を崩される。
「私は言ったので今度はあなたの番ですよ」
「めんどくさいんだよ、何分もの間分かりきっている事を話され続けるのは」
「分かります、赤の他人にどうでもいいことを言われるのってイライラしますよね」
「分かてるなら、どこか行ってくれ」
「あら、一本とられましたね」
目を丸くして口を軽く押さえる鏡の姉。
「でもなんか親近感沸いちゃって」
「は? 何言ってんの?」
「だってあなたも足フェチでしょ?」
「……え?」
考えられることはいくつかあるが、鏡自身が彼女に話したということだ。しかし鏡がそう簡単に口を滑らせるとも思えない。
「ああ、別に鏡君が話してくれたと言うわけじゃないですよ」
「だ、だったらなぜ」
「同じにおいがしたんです、それとさっきから私の足ちらちら見てるでしょ?」
別に俺は鑢の姉の足を見て、美しいだとか、きれいだとか、触ってみたいだとか、靴を履かせたり脱がせたりしてみたいだとか、靴下を履かせたり脱がせたりしてみたいだとか、足の甲にキスをしたいだとか、踏まれたいだとか、そんなこと思いながら『汗かいちゃったみたい、靴を脱がして』『今日もお美しい足ですね』『ふふっ、少しなら好きにしてもいいのよ?』『いいんですか?』『ちょっと、犬や猫じゃないんだから舐めちゃだめよ』『いいえ、あなたのためなら私は忠犬になりましょう』『まったくもう、駄犬にはお仕置きよ』『はうっ、いいえそれは極上の褒美です』なんて妄想を展開させたりだとか、鏡の姉の足いい、非常にいい、最高、最高に『ハイ!』ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ、素敵、千鶴さんの足素敵、むしろ千鶴さん最高、なんてこと微塵にも思ってはいない……ぞ?
「いやその……」
「ふふ、当たったみたいね?」
そして放たれたウィンクは俺の心をコブラツイストした。
「授業受けてみる気起きました?」
「もちろんです、千鶴先生」
こうして鑢千鶴はどう思っているにせよ、使いやすい手駒をひとつ手に入れた。
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