鑢鏡は静かに暮らしたいその②
変態が多いです
「来てしまった……」
俺がいるのはD棟3階生徒会室前。
「やっぱり帰るか」
妖しい妖しすぎる、第一俺みたいな変な奴を生徒会に入れるなんてどうかしている。忠実な駒の方が使いやすい? 弱みを握られているとはいえそんなことで従うとでも思っているのか。そうと決まれば、回れ右。
「やあ元気かい?」
目の前にいたのは生徒会長その人。眼鏡によって引き立てられる美貌と美貌によって引き立てられる眼鏡。クマノミとイソギンチャク、生産者と消費者、キラークイーンとストレイ・キャット、共存関係にあるそれらに引きを取らない言葉では言い表せない美しさ。
「まさか帰ろうと思ったわけじゃないよね?」
「そんな事思うはずないじゃないですか」
180度考えを変えられた。
「それは良かった、では入りたまえ他のメンバーを紹介するよ」
始めて足を踏み入れた生徒会室はイメージよりずっと広い、逆光で見えないが二人のシルエットを捕らえた、一人は女性、もう一人は男性のようだ。
「新しい生徒会のメンバーだ、宜しくしてやってくれ」
「三年の如月修だ、よろしく」
男性の方が前に出てくる、長身で顔立ちもいい、目つきが鋭く髪は短い、いかにも頼れる兄貴って感じだ、眼鏡は残念ながらかけていない。
「はじめまして2年鑢鏡です、宜しくお願いします」
「2年の松戸音色、よろしくね」
女性の方は小柄な体格で活発そうな印象を受ける、顔もそれなりに整っている、髪は会長より少し長く、一箇所でまとめられている、眼鏡をかけていないので特に興味は無い。
「如月君は会計、音色には書記をしてもらっている、残念ながら副会長は欠席だ、そして私、田所小雪が生徒会長をしている。さてきみにはパ……じゃない庶務をしてもらう、いいかな?」
「今パシリって言おうとしませんでした?」
「気のせいだ、とりあえず自分の席にでも座りたまえ」
よく見ると会長というプレートの乗った机の席に腰を下ろしていた、他も同様に会計、書記と書いてあるところにそれぞれ座っていた。辺りを見渡すが副会長と書かれたプレートの置かれた席が残っているだけ、庶務なんてプレートの置いてある席など無い。他にあるといえば赤い屋根の犬小屋…………あれおかしいぞ、犬小屋に庶務ってプレートがかかってるや、なんか涙が出てきたどうしてだろう?
「おっと、これは前の庶務の趣味だったな、すまないあたらしいのを用意するよ」
「会長よろしかったら私がその席に……」
松戸の息が荒くなっていて顔が赤い、そしてその視線は物欲しそうに生徒会長に向けられている。
「ああいいよ、許可する」
会長のその言葉を聞くと同時に、犬小屋の庶務というプレートと自分の書記というプレートを取替えその小柄な体を犬小屋へと納める。
「えっと……」
「まあなんだ、彼女はドMなんだ」
「……そうですか」
汚いものを見るような視線で犬小屋のほうをみる。
「あぁ、いいその視線いいよ、鏡君もっと、もっと私をその眼で見て」
「きも……」
「あうぅ、いいその罵倒と視線最高、もっと私を罵って、気持悪いゴミくずだって、どうしようもない変態だって」
無視するのが一番だという結論に至り、再び会長に視線を戻す。
「ところで庶務ってどんなことをすればいいんですか?」
「パ……じゃない昼飯や漫画を買ってきたり荷物を持ったり色々だ」
「もう普通にパシリって言えばいいじゃないですか」
「冗談だよ、雑務をしてもらうことがほとんどだ、お茶を汲んだり、荷物を運ぶのも仕事の一つだけどね」
「鏡君こっち向いて罵ってよ……はっ、もしやこれは放置プレイ! いやん、鏡君流石」
どんな選択肢をとっても自分の快感へと変えてしまう、恐るべしドM。
「まあ、いつものことだ、気にするな」
「大変ですね」
「まったくだ、やれやれだぜ」
かっこいい、いかにも男って感じだ。
「ずいぶんとかっこいいこと言うじゃないか」
少し背伸びをして2回如月先輩の肩を叩く生徒会長。
「…………」
次第に血の気が引き、顔が青くなっていく如月先輩。
「おおおお、俺に近づくなあぁぁ」
その大きな体を俺の影に隠し叫ぶ、なんていうか……。
「彼も女性恐怖症だ」
かっこわりー。
「なんだここ、変態しかいねぇ」
「君も眼鏡フェチじゃないか」
「この人たちとは一緒にされたくない」
植物のように平穏に生きたいと願うこの鑢鏡の人生に、こんな酷いことがあっていいはずがない。
「さて庶務、今日から宜しく頼むよ」
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