踏み出す一歩その①
「ただいま」
「ったくどこ行ってたのよ、ご飯で来てるんだからもう少し早く帰ってきなさい」
機嫌が悪そうなのはいつもの事で、あまりどうこう言うつもりは無いが。
「さっさとご飯にするわよ、もうお腹と背中がくっつきそうよ」
その懐かしいフレーズを聞き流しながらリビングに向かう。
「あのさ」
どう地雷を避けるか考えながら言葉を探す。
「なによ」
不機嫌そうに眉間をよせ返事をする久美。
「そのさ、……つけられているって言うのは気のせいなんじゃないのか?」
頭をひねって出た答えはこれ以上ないほどまっすぐな質問だった。
「突然何よ」
不機嫌そうな顔はいっそう険しいものとなった。
「いやさ、なんていうかたぶん気のせいだその気配、うん」
「何一人で納得してんのよ、私はぜんぜん納得できないわ」
「いや、……納得してくれ」
「私のことが信じられないって言うの?」
「いや信じてるよ、これ以上ないほど」
「ならなんでそんなこと言うのよ?」
「なんていうかさ……」
困った、非っ常に困った。
「とりあえず気のせいだ」
そんな自分でも意味がわからない言葉に久美はそっぽを向いてしまった。
「もういい、鏡なんかに頼まない」
「……むう」
完全に怒らせてしまった、いつもの不機嫌そうな雰囲気くらいならお菓子やアイスで吹き飛ぶのだが……。
「アイスあるぞ食うか?」
「え、食べ……ない、そんなんでつられないんだからね」
後一押し。
「ポテトチップスもあるぞ、梅しそ味好きだろ?」
「梅しそ!? どこ探しても無かったの、食べた……い、いらない」
後一歩。
「そうそう、新発売のグミ買ってきたぜ」
「そ、それは餅のような食感を目指したという新食感グミ」
「お前は次に食べたいと言う」
「食べたい……ハッ!?」
「どうだ今なら全部つけるぞ」
「でもお高いんでしょ?」
どこかの通販番組のような口調の問は折れる寸前の兆候だ。
「許してくれるだけでいいさ」
「し、仕方ないわね特別よ」
ふっ、ちょろいもんだぜ。
「さて、ご飯にしましょう」
「そうだな」
こうして久美をうまく丸め込むことに成功した。
お久しぶりです
大変長い間ご無沙汰しておりました
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