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同属

「はあ~っ」


「どうした、ため息なんてらしくない」


 そんな言葉をかけてくれる親友、里村博。女の子だったらとっくに襲いかかっていただろう。


「何でお前、男なんだよ」


「y染色体があるからだろう」


 そんな質問に対し素で返される。


「まあそれが現実なんだろうけどさ」


「まあ何かあったんだろうけど、相談くらいなら聞くぞ」


「たとえば二人の女性から告白的なことされたら、お前だったらどうする?」


「好きなほうを選ぶ、もう一人は振る」


「どっちも好きじゃないなら?」


「様子見てから決める」


「う~ん、つまり保留ってこと?」


「そう、っていうか二人から告白されたのか?」


「まあ、そんなとこ」


「いや~、もてる男は違うね」


 そんな皮肉めいた言葉は、俺の疲労した神経を逆撫でした。


「まあな」


 最大級の皮肉をこめて、そう言い放つ。


「なんかムカつく」


「おあいにく様」




「……」


 生徒会室にいるのは俺一人、他には誰もいない。


「静だな」


 会長や音色のせいもあり、ここにいると生きている気がしない。この静寂を崩す人間が誰なのか、それを思うだけで憂鬱だ。


「ただいま、帰ったぜ」


 会長でも音色でもないという、予想のナナメ先を行く回答にびっくりしつつ、改めて確認をする。165から170cmほどの男だ、髪は茶色で目付きが鋭く、柴犬を連想する、どこからか同じにおいを感じる。


「お前誰だ?」


 めずらしいものを見るような目で俺を見る、その男。


「こっちの台詞だ」


 腑に落ちない表情を浮かべながらも、男はそう答えた。


「俺の名前は立花腱、生徒会の庶務だ」


「ちょっと待て、俺が生徒会の庶務だ」


「そんな嘘が俺に通るとでも思っていたのか、この偽者」


「突然現れて訳の分からないことを言ったと思ったら、偽者だ? テメエのほうが偽者だろ」


 虫の居所が悪かったこともあって、かなりいらだっていたためもあり、男の言葉に耳を傾ける気はなかった。男も同様にこちらの話を聞く気はないのだろうが。


「ならいい、会長に聞いてみれば白黒はっきりするさ」


「上等だ、どっちが偽者かはっきりさせてやる」


 こいつの鼻を明かせると考えると、ドアが開くことも憂鬱ではなくなってくる。


「……?」


 松戸の席(犬小屋)を見つめ考えるしぐさをしてみせる腱。


「どうかしたのか?」


「何で犬小屋のプレートが庶務から書記に変ってるんだ?」


 その一言で俺はこいつの正体を把握した、例の元庶務(ドM)だ。


「なるほど、お前元庶務か」


「元? 何のことだ」


「残念だったな、もうお前は生徒会メンバーではない、お前の代わりに俺が庶務になった」


「だから何を言って……」


 がらりと音を立て扉が開く、そこにいたのは会長。


「やあ、ずいぶんと早いのだね。おや、めずらしいな君が来るなんて」


「会長聞いてください、さっきからこいつ自分が庶務だとか言ってるんですよ」


「ああそうだが、何か?」


「……え?」


 会長の回答にただ唖然とする腱、ざまあみろ。


「だから言っただろ、お前はもう庶務じゃないと」


「いや彼も庶務だよ、逃げたとは言ったがやめたとは言っていないさ」


「……え?」


「「つまり庶務が二人いると」」


「ああそうだ」


「……ふざけるな」


 先に口を開いたのは腱の方だった。


「庶務は二人も必要ない」


「変なところで気が合うな、俺もそう思う」


「……君たちがそう思うのは勝手だが、殴り合いはよしておくれよ、別の方法で決めてくれ」


 殴り合いなら5秒もかからないだろうが、そうとなると少し難しい。


「何か面白そうなことやってるな」


 如月先輩の出現、て言うか久々にこの人見た気がする。


「あ、腱君おひさ」


 その後ろから松戸が顔を出す。


「さて勝負の方法だが……」


「なら会長の好きな所を交互に言っていく、先にいえなくなったほうの負け、それでどうだ」


 先に案を出したのは腱の方だった、しかしあいにくこの勝負、負ける気がしない。


「ああいいぜ」


 会長の(眼鏡の)好きな所なら星の数ほど言える。


「俺から行かせて貰う、会長の眼鏡の似合う所が好きだ」


「会長の美しい足が好きだ」


 またこいつから同じにおいを感じた。


「会長の赤いハーフフレーム眼鏡が似合う所が好きだ」


 さて眼鏡の好きな所なら色、フレームの型、度数、角度、光の反射、しぐさ、掛けかた、それぞれに対し言うことができる。まず負ける気がしない。


「会長の黒いハイソックスの似合う所が好きだ」


 間違いないこいつタイプは違えど、俺と同じ側の人間だ、そう奴はドMではなく足フェチ(・・・・)だ。


「会長の眼鏡を人差し指で浮かす時の動作が好きだ」


 奴も気付いたようだ、俺が眼鏡フェチだと。


「会長の靴下を履きかえる時の動作が好きだ」


 ますます面白くなってきた、勝負はまだまだ始まったばかりだ。




「この勝負どう思いますか?」


 実況者のような口調で修に尋ねる音色。


「一方の武器は足、もう一方の武器は眼鏡、一見相容れないそれらが同じ土俵で戦っている、まったく勝負が見えない、しかし足は靴、靴下、スカート、ズボンそれに該当する服に対してのこと、眼鏡はその眼鏡単体についてのみ言うことしかできない、この勝負鑢が不利だ」


 修も司会者のような口調で返す。



           ―――――― 一時間後 ――――――



「湯気で曇った眼鏡が好きだ」


「水遊びをした後の瑞々しい足が好きだ」




「なんか会長の好きな所から、眼鏡の好きな所、足の好きな所に変ってる気がする」


「気のせいではない」


「帰ろうかな……」


 と音色。


「そうだな」


 修もいなくなり、ここで二人がリタイア。残るは二人のフェチ(変態)とそれを呆れたような目で見つめる会長のみになった。


「……」


 無言を貫く会長、そんなそばで戦いは続いていく。



―――――― 下校時刻 ――――――


「もう閉めるぞ」


 と会長のレフリーストップが入るがまだ戦いをやめるつもりはない。


「まだだ、まだ戦いは続いている」


 やれやれと言わんばかりの表情でこめかみを押さえ、ため息を漏らす会長。


「外でやってろ、私は帰る」


 とうとう会長もいなくなり、場所も生徒会室からグラウンドに変る。


「もう負けを認めてもいいんだぜ?」


 と腱が言う。


「馬鹿を言うな、俺の眼鏡への愛は無限大だ」


 と強がってみたもののそろそろきつくなってきた。


「そうか、なら一気にしとめてやる」


「上等だ」


 きついのはこちらばかりではないはずだ、奴もかなりのレパートリーを消費しているはず十分勝機はある。


「勝負はここからだ」



          ―――――― 果てしない戦いの末 ――――――


「最後に言う事は決めていたんだ」


 途中から気力でここまで乗り切ってきたが、流石にもう俺のレパートリーはこれしか残されていない。


「俺もさ」


 向こうも同じらしい。 


「眼鏡が大好きだ」


 ひもを切られた操り人形のように、その場に倒れこむ俺。


「足が大好きだ」


 腱もそういうとその場に倒れこむ。


「……お前の名前聞いてなかったな」


「鏡だ、鑢鏡」


 夜が明け、二人の馬鹿を見るために太陽が顔を出した。


「よろしく」


「ああ」


 そこには敵意も、怒りもない。そこにはただ友情が残されていた。




 その後の授業中の居眠りで廊下に出されたのは言うまでもないだろう。

大変長らくお待たせしました

PCに触る機会がしばらくなかったため

投稿することができませんでした

今後はなるべく投稿できるように努力をしていきたいとは思います


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