生徒会長の謎その⑥
ジョジョネタのバーゲンセールかっ!
「ディモールトディモールトよい」
「そうか似合っているか」
俺と小雪は駅前のデパートの眼鏡ショップに来ていた。そして今は眼鏡の試着タイム。
「これはどうだ?」
赤色の眼鏡をかけてみせる小雪、澄んだ瞳がより強調されその視線は俺の鼓動を更に早める。
「もう俺死んでもいいや、わが生涯に一片の悔い無し」
「はは、そうかそうか」
心の中のハーミットパープルが念写を始めようと試みている、このときを覚えていられるのなら、フィルムは魂を削って造っても構わない。
「こんなのはどうだろうか?」
少し淵の多きいい青色の眼鏡をかける先輩、大きくかたどられる目はいつもと違う一面を覗かせる。
「最高に『ハイ!』ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ」
「WRYYYYYYYYYY―――ッ」
このことを後世に語りつくために俺は人間を止めるぞ!
「さてもうそろそろお昼にしよう」
「え……」
「もう12時半だ」
なんだかんだ、2時間以上過ぎていることになる、楽しい時間というものはあっという間に通り過ぎていってしまうものだ。
「そう……だな」
「そうおもむろにガッカリするな、またいつか機会があったら来ようじゃないか」
「約束だからな」
その言葉を最後にして眼鏡ショップを出て行く。
「にしても、眼鏡ショップで軽く2時間以上時間を潰せるとは、やっぱり君は……」
「変態じゃないからな」
あれから屋上のレストランへと来ていた
「いやそうじゃないよ、面白いと思っただけだ、それと実に興味深い」
「そうかい、ところでオーダーは?」
少し乱暴にメニューを突き出す。
「なんだ、かってに出てくるんじゃないのか」
いつも見せない世間とずれている一面を見せる小雪。
「小雪って、どこかのお嬢様だったりするのか?」
「あ、ああだいたいそんな感じかな」
ごまかすようにメニューに目を通す小雪。
「この、ぱふえ? というものに興味があるのだが」
未来の言葉を聞いた武士みたいな口調、しかも疑問系ほんとに世間を知らないのだろうか?
「パフェか、他には」
「じゃあ、この海鮮スパゲッティってのがいいかな?」
「かなりきついな……」
予想以上のボリュームのスパゲッティに手を休めながらも何とか打ち勝った小雪だが、この後にはパフェが待構えている。
「大丈夫かよ」
「ああ……たぶんな」
そこに食事を終えたことを察したのかウェイターがやってきて、食事を下げ盛りに盛られたパフェを持ってくる。それには細長いスプーンが二つ……。
「ナイフとフォークではなくスプーンが2本か、変った食べ方をする食べ物なんだな」
「いや、それは恐らく……」
あえてそれ以上は言わなかった、小雪自身が察することを願って。
「じゃ頂くとするか」
両手にスプーンを持ちすくっては口に運んでいく小雪、どうやら察してはくれなかった。それよりもこの量を一人で食べることができるのだろうか。スパゲッティの様子を見るとまず無理だろう。
「ご馳走様……」
予想は予想より速く当たった。
「おいおい、もったいないだろ」
「じゃあ鏡が食べればいいだろ、ほれ」
と言ってアイスの盛られたスプーンを突きつけられる。さて状況を整理しよう、まず小雪はスプーンを両方使っている、あいにく向こうはこれが間接Kissだと意識していないらしい、かといってもう一本貰うというのも不自然だ、それに向こうに変な意識を持たせることになる、それはこのまま食べれば解決する話だ、もうひとつの問題は状況だ、食べさせてもらうという状況、傍から見ればカップルに見えるだろう、しかしここでスプーンを受け取り食べたとすればそれも相手に意識を持たせることになる、このまま口を開けて待てばこのスプーンは入り込んでくるだろう、しかしそれでいいのか? ここで状況を知りつつ食べてしまったとしたら俺は卑怯者なのではないのだろうか? そんな終わることのない自問自答にいたるまで0.8秒、あと2秒もしないうちにこの弾道は回避不能になる、さてどうしたものか、口を開けてしまえば楽になれる、口を開けなかったとしたらその弾道はとまるだろう、それはそれでもったいない気がする、こんなにも眼鏡の似合う女性に食べさせてもらえる、しかも間接kissつきこれを断ってしまったら自分は自分に嘘を吐くことになる、後1。5秒たったら俺はどちらかへの裏切り者になってしまう、自分か小雪か、できるのなら小雪には嘘をつきたくない、でも自分にも正直でありたい、スプーンから水滴が離れる、その時気付いた、自分の事ばかり考えていると、パフェだ、このパフェはもし俺が食べなかったとしたらきっとこのまま捨てられることになる、消費社会であるこの国では必然と思えるがよくよく考えてみれば変な話だ、このパフェに乗っているフルーツを育てた人が、バニラアイスの原料である牛乳を搾った牧場の人が、これを盛った厨房の人が、それを見たらどう思う? 俺だったら悲しくなる、金のためにやっているのかもしれない、どうでもいいのかもしれない、しかし俺はたとえ卑怯者と言われたとしてもこれを食べるべきだと思う、それが消費者としての義務だと思う、このパフェは俺と同じだ、いや俺たちと同じだ、大人になって社会に出たら人は物のように扱われる、使えない人材は切られてしまう、そんな中優しさを持った人間がいるのだとしたら、間違えなくこのパフェを食べるだろう、少なくとも俺はそういう人間になりたい、周りの目なんて気にすることないじゃないか、もう受け入れる準備はできた、0.5秒その時間で口を開く。
そして俺は口にスプーンが入ったのを確認し、口を閉じる。至って普通の味だ、味は変らない、しかしそこには眼鏡の似合う美しい女性に食べさせてもらったという事実と間接Kissをしたという結果が残っている。
「美味い」
「そうか、ほら次」
2発めの弾道もう避ける理由なんてない。
「次」
何発でも来い準備はできている。
「次」
少し、いやかなりペースが速い気がする。
「次」
連続でこんなに冷たいものを食べていると流石に頭が痛くなっていく。
「次」
飲み込むこともままならない、さっきの分が口に残っている。
「次々次々次々次々次々次々次々次々次々次々次々次々ィ―――ッ」
瞬く間に空になっていく容器、そしてグロッキーな状態になりかけている自分。
「ご、ごひほふははへひは」
「どういたしまして」
結論、食べさせてもらうのは止めましょう。
「大丈夫かい鏡?」
頭痛がするは……吐き気もだ……な、なんてことだ、この鑢鏡が、気分が悪いだと?
「……たぶんな」
限りなくノーに近い、というより内心のノーという答えを押し殺し、無理やり表面でとり作ったとでもいうべきだろうか。
「いや調子に乗りすぎた、すまなかったな」
会計は俺もちだった、いやそれは一向にかまわない。寧ろあのグロッキーな状況の中で立ち上がり、かっこつける事の出来た自分を褒めてやりたい。
「いや問題ない」
「眼鏡の似合う女性に食べさせてもらえて、しかも間接kissなんて状況だとしても流石に無理か」
「……騙したな」
吐き気をもよおす(身体的)邪悪とはッ、何も知らない無知なものをもてあそぶことだ……!! 自分の満足のためだけに利用することだ……。
「まあまあ、確か近くに公園があったなそこで休もう」
「ここら辺のこと詳しいのか?」
「いや、さっき地図で見ただけだ」
いつもながらに異様なまでの記憶力を見せ付けられる。
「行こうか」
「いいとこだな、ここ」
木漏れ日が心地よく肌をつき、通り抜けていく風は気持悪さを癒してくれた。
「ああ、そうだな」
小雪も同じ意見らしく同意した。
「ちょっとトイレに行ってくる」
「そうか」
ゆっくりとした動きでトイレに向かう。
彼女に対して抱く違和感は次第に強まっていく。世間知らずのお嬢様なんて言葉で納めてしまってもいいが、何か引っ掛かるときより……。
「まあ、いいか」
元の場所に戻るために再び歩を進める。
「お待たせ……ってあれ?」
そこに小雪の姿はなかったバックは無残にも地面に中身をぶちまけられている。
「まさか」
考えるより先に鏡は走り出していた。
「この前はよくもやってくれたな」
「当然のことをしたまでだ、お礼なんていらないよ」
「いいや、たっぷりお礼させてもらわないとな、会長さんよ」
元サッカー部のメンツ数は8人ほどに、路地裏と、もう定番中の定番の場所につれてこられた小雪、今停学中の彼らが問題を起こしたのなら間違えなく退学だろう、しかし馬鹿は死んでも治らないらしくやはり問題を起こそうとしている。
「まったく馬鹿だなお前達は、ホント馬鹿だ折角チャンスをくれてやったというのに、恩をあだで返すとは」
「チャンスか確かに、お前にお礼をするって言うチャンスなら今ここにあるがな」
強がってみるが、所詮自分の腕力ではひとりすらも倒せないだろう。何をされるか、考えただけでもゾッとする。助けは来てくれるかどうかも分からない。
「眼鏡のことを馬鹿にしてみたらどうだい、彼が飛んでくるかもね」
「眼鏡のこと馬鹿にして前に散々な目にあってるんだ、そんなへまするかよ」
さて覚悟を決めるしかなさそうだそう思ったときだった。
「ハアハアっ、眼鏡のこと馬鹿にしてるだとぉ、テメェ」
息を切らしながらここにやってきたのはやはり鏡だ、こんな状況なのに笑が出てしまう。
「眼鏡の文句は俺に言え」
「お前はあの時の!!」
認識するのに戸惑っているうちに彼は敵の懐に入り込む、そして一撃、大きなモーションだが戸惑っている相手がこれを避けることもできず、クリーンヒットし吹き飛ぶ。獣のごとき形相を見せる鏡、その瞳の中には何か自分を落ち着かせるものがある。また一人吹き飛ばされた、ようやく彼の存在を認識した相手はこぶしを振りかざす、その攻撃も軽々と避けカウンターを顔面にめり込ませる、これで三人、その勢いに押され後ずさりしようとする一人に近づき、あたふたしているうちに一撃、そして5人目に手をかけようとする寸前彼は動きを止めた。
「動いてみろこいつがどうなってもいいならな」
いわゆる人質というものだ。
「てめえ、小雪(の眼鏡)に手を出してみろぶっ殺す」
「いくらでも言ってろ、さっさとやっちまえ」
まだのされてない片方が殴りかける、抵抗をあえてしないでその一撃が頬にめり込む、それにつられもう一人も殴り始める。ただ耐えるだけ、あえて何もしないのが彼の覚悟だった。
「おい、いい加減にしとけよ」
小雪を捕まえた男が振り返るとそこには一人の男がたっていた。
「お前は如月っ」
言葉を言い終える前に、男は修に吹き飛ばされた。
「テメエらもだ、このうすのろ」
そういうと鏡にたかる二匹のハエを叩き落した。
「修どうしてここに?」
「大体見当はついていたさ、それとお前の親父が相当怒ってたぞ、さっさと帰るぞ」
「……嫌だって言ったら?」
「無理やりでも連れて帰る」
「いったいどういうことだよ……」
いまだ状況を理解できていない鏡は細々とした声を吐き出す。
「ああそうか、いい機会だ教えてやるよ、小雪は真龍組総長の一人娘だ」
「組ってつまり」
「ヤクザの娘だ」
彼は頭の中が混乱しているのと同時にどこかしらで納得していた。
「それともうひとつ小雪にはもう近づくな、痛い目にあいたくないならな」
どこからか二人の男が現れ小雪を連れて行く、その瞳はどこか悲しげなものを秘めていた。
「ちょっと待てよ」
「何度も無駄なこと言わせるな、これ以上小雪に近づくな」
「何を勝手に、本人の意見がまったくないだろうよ」
「意見なんてものは必要ない、こっちの決定事項だ」
「そんな馬鹿なこと!」
大きなため息をひとつ吐き修は口を開く。
「不満そうだな、相手してやるよ」
先ほどまでとは違う、まるで悪霊にでも取り付かれたかのような背筋も凍りそうなほど冷たい目線を向ける修。それでも鏡はひるまなかった。
「上等だ」
満身創痍の体が動かないことは誰よりも自身が分かっていた、それでもこぶしを掲げ、その手を振り下ろす、その一撃は修に届いたしかし……
「その程度か?」
次の瞬間自分の体が浮いていることに気付いた、そして背中に強い衝撃を受け、意識をなくした
「はっ」
自分がいた所は家だった、誰がつれてきたのかは知らないが丁寧に傷の手当てまでされていた。
「くそっ」
悔しさがこみ上げてきた、あの時悲しげな表情を見せた小雪に何もしてやることの出来なかった自分に。
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