プロローグ
『――つまり我霜月学園ではエリートを育て――』
長い、もう4回は似たような話を繰り返している。
『校長先生……、お時間が……』
『そうか、ではあと一二言で終りにしよう』
まだ続ける気か……。
―― 十分後 ――
『――つまりこの学校ではエリートを育て――』
これで5回目。
『あの……校長先生?』
『すまない、つい熱くなってしまった、では最後に一二言』
『仕方ない、最後の手段だ』
『――だからして、ん? 君達は何だね、待ちたまえ何をする、離せ何処に連れて行くつもり……』
『以上校長先生の話でした』
『時間の都合上、生徒会長の話は中止となります。教員の指示に従い速やかにクラスに戻ってください』
校長の声は完全絶たれた、そしてその静寂をあっという間に雑音が飲み込む。
「教室戻ろうぜ、鏡」
「ん、あぁ」
彼は俺の中学からの親友、里村博、顔も普通で中肉中背、唯一の特徴トレードマークといえば眼鏡、ゲームやパソコンの普及で目の悪い奴は多いが、彼はその中でも眼鏡と相性のいい顔立ちをしている。シンクロ率80パーセント越え、いや、メガネ率とでも言うべきだろうか。
「しかし校長の話は長いな」
「今に始まったことじゃないだろ」
初めに校長の話を聞いてから1年と3ヶ月。俺、鑢鏡がここ霜月学園に進学したのにはいくつか理由がある。一つ目はここが進学校であると言うこと、二つ目は家から非常に近いと言うこと、そして三つ目は……。
「おい鏡、早く行こうぜ」
博が急かす
「分かってるって」
そんな時ふとそらした視線の中に裏口が映った。
「博、向こうから行こうぜ」
「裏口か、確かに空いてるしいい考えだ」
正門は人がゴミのように溢れかえっていた、友人の承認も得られたので回避するほかには無い。
「お、開いてる」
「校長がここから出てったからな、開いてると思ったよ」
ドアを開ければすぐに校舎が見える。正門から出るのは実は遠回りで裏口から出れば10メートルも無い、いつもなら閉まっているが今日は運が良かった。
「先客がいるみたいだが……」
博の視線をたどると、一人の女子生徒の後姿を確認することができた。彼女はドアの開く音に少し振り返ったため目が合った。綺麗な白い肌とモデルのように長い足、髪は黒のロング、顔立ちも非常にいい、そして何より……。
「…………」
また前を向いて彼女は去ってしまった。
「……博、彼女が誰だか知っているか?」
「生徒会長だよ、三年で名前は確か田所小雪だったかな?」
「まさか、生徒会長なら顔を知らないはず無いだろ」
「鏡、お前集会で生徒会長が話してるとこ見たことあるか?」
「んなの……、そういえば無い」
いつも校長の話でそんな時間があったためしがない。それに俺は去年の生徒会選挙の時休んでいた。
「それに、あまり人と関わらないから誰も接点が無い、何故彼女が生徒会長なのか不思議なくらいだ。……それにしてもお前が女性に興味見せるなんてめずらしいな」
「俺好きになったかもしれない……」
「はっ!?」
俺がこの学校に入った3つ目の理由、それはこの学校が進学校であることだ。いや、正確には進学校の生徒は目が悪い場合が多い、ゆえに眼鏡をかけている生徒が多いのだ。解りやすく言うのならば
俺は眼鏡フェチなのだ
そして俺は
彼女の眼鏡に恋をした
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