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【短編】フェイテルリンクこぼればなし。~ファンタジー世界に剣道でカチコミです~

作者: 毘沙門 子子


 こちらは、「フェイテルリンク・レジェンディア ~訓練場に籠もって出てきたら、最強になっていた。バトルでも日常でも無双します~」https://ncode.syosetu.com/n0664js/にあったSF世界に浮かぶ、ファンタジー惑星での日本剣術vsファンタジーな話を再編集した外伝的話になります。

 本編を読んでからだと、より楽しんで頂けるかもしれません。

 本編はゲーム世界のフリをした、バチバチのSFです。主人公はロボット兵器がある中で戦闘機に乗って無双します。




■登場人物紹介


 ・スウ(本名:鈴咲 涼姫):フェイテルリンク・レジェンディアの主人公。コミュ障の陰キャのボッチだけれど、3倍の速度で時間が流れるVR訓練場に籠もり、クリア不能と言われる超難易度クエスト〝〈発狂〉デスロードに〟、実質9年打ち込んだ事で、遂にクリア。訓練場から出てくる。

 すると本人も気づかない内に逸般人な戦闘機パイロットになっており、無双しまくった結果、一式 アリスや、リッカと友達になれた。

 頭のおかしな思考や言動、行動で周りをドン引きさせたり、笑わせたり、庇護欲をそそらせたりの百面相な精神模様。


 ・一式 アリス(本名:八街 アリス):イギリス生まれ日本育ちで、日本文化大好きっ子。モデルに女優、声優などなど、なんでも出来るスーパーウーマン。得意なのは剣道で、本編中この年の夏には、インターハイで優勝している。

 飄々とした性格で、スウが大好き。尊敬している。

 つい先日、スウの唇を強引に美味しくいただいた所。


 ・リッカ(本名:立花みずき):コンパクトな体型のチビっ子少女。ただし見た目はエグイほどの美人と言われる。剣道では八街 アリスのライバルで、初対戦時には、その剣の腕で八街 アリスを恐怖させた。武家の娘であり、本編中では脅威の剣術を、度々披露している。

 インターハイでアリスに負け2位に甘んじたが、その剣の冴えは相変わらずの模様。


   ◆◇◆◇◆


 わたしの名前は八街 アリス。謎の宇宙人(実は、未来人)の始めた宇宙を舞台にしたデスゲーム――フェイテルリンク・レジェンディア(安全だと思われていましたが最近、本当にデスゲームだとバレた)でトップランカーをやっています。


 フェイテルリンクが本当にデスゲームだった事がわかり、以前人を見殺しにしてしまっていたスウさんが凄く後悔して、フェイテルリンクを安全なゲームにしようと立ち上がりました。

 そこでヒントがあるという、ファンタジーな惑星「ファンタシア」にやって来たのです。


 わたしは大切なスウさんに何かあっては一大事なので、スウさんを守るために付いてきました。


 スウさんは化け物みたいな戦闘機乗りだったり、なんでそんなに知識が豊富なの!? とか、なんで素早くそんな作戦思いつくの!? などと、ところどころ人間を止めてますが、それ以外が壊滅的なんです。

 酷いコミュ障だったり、自己評価がブラックホールの底レベルで低かったり、優しすぎたり。

 なので放っておけない人なので、付いて来ました。


 リッカこと、立花 みずきも付いてきてくれました。ただの剣道少女であるわたしと違い、実戦剣術を身につけているので、非常に頼もしいです。


「ファンタジー世界にカチコミじゃー!」


 リッカが刀を鞘ごと掲げました。


 リッカはわたしの剣道のライバルで、剣術を伝える家の長女さんです。

 見た目はただのチビっ子なんですが、消える動きとかしてきます。「消える動きってなんじゃい」と思うかもですが、他に言いようがありません――眼の前で本当に消えるのです。どうやっているのかはだんだんと分かってきましたが、全貌は未だに謎です。


 出会った頃は寡黙で泰然とし、その剣の腕でわたしを恐怖させたのですが、スウさんと出会ってからは心を開いたのか、いまやただの子供です。


 ちなみにリッカの格好はメイド姿です。学園祭で使ったものらしいです。スウさんにお披露目しているらしいです。

 このファンタジー惑星に降りるには、こちらの文明に合わせた格好をしたり、機械の持ち込みが禁止されていたりします。

 宇宙でも若干1名、スウさんだけは特別な権限があるので、機械――どころか超科学製品とか持ち込んでもいいです。


 ちなみにわたしの格好は、不思議の国のアリスみたいな感じ。

 スウさんは、空賊みたいな格好です。


 というかさっきからスウさんのリッカを視る目が怪しいです。ずっと、小さく〔眼福じゃぁ眼福じゃぁ〕って呟いて、よく分からない人格が顔を出しています。


 スウさんのいつもの奇行に、わたしが若干生暖かい表情になっていると、


「おっ、スウじゃねぇか」

「おおっ、勇者様が降臨してるニャ」


 スウさんが声をかけられました。この惑星でのスウさんのお知り合いでしょうか?

 言語に関してはフェイテルリンクで、翻訳インプラントをしているので通じます。


 振り返ると、ライオン獣人らしき大柄の男性と、猫獣人らしき小柄ながらプロポーションの見事な女性。


 男性は革の鎧身につけて、巨大な斧を背負っています。

 女性の格好は、扇情的で際どい感じです。ただ、腰にダガーがありますね。


「どなたでしょう?」

「スウ、この二人は誰だ?」


 わたしとリッカが尋ねると、スウさんはリッカを見て目をぱちくり。


「あれ? リッカも初対面?」

「ん? 知らないな」

「そ、そうだっけか――えっと・・・なんて紹介したら良いんだろう? ――私が冒険者になるのを邪魔した戦士と、ウィルムとの戦いから逃げようとした踊り子さん?」


 スウさんの説明に、大柄なライオン獣人らしき男性が尻尾をブワッと膨らませて ビクゥ! となりました。


 猫獣人らしき女性の尻尾も膨らんで、イカ耳になっています。


「ス、スウ!? う、恨んでるのか!?」

「な、何を言うニャ! 風聞が悪いニャ! 結局一緒に戦ったし、踊り子に戦えというのがそもそも無茶ニャ!!」


 あ・・・・これ。すでに、スウさんに恐怖を植え付けられてますね。

 なんとなく、何が有ったか察せれます。


 スウさん苦笑い。


「ご、ごめんごめん、強い戦士さんと、素敵な踊り子さんだよ。ライオン獣人のヴァンデルさんと、猫獣人のトリテさん」


 スウさんが言うと、リッカが口の端を釣り上げました。


「ほう、強い戦士・・・・確かに手練れに見えるな」


 ヴァンデルさんも、楽しげに笑います。

 リッカ・・・・このバトル好き共め。


 するとスウさんが、呆れたような顔になりました。


「あーあ。・・・・リッカも、アリスも、ヴァンデルさんも、ニヤニヤして」


 すみません、わたしもバトル好きだったようです。

 ヴァンデルさんが背中の斧を叩きます。


「一つ、手合わせしないか?」

「いいですよ。望むところです!」

「いざ!」


 というわけで手合わせする事になりました。


 冒険者ギルドという所に案内されます。


 冒険者ギルドとかあるんですね! 楽しみです。


 雰囲気のある店のスイングドアを抜けると、清楚な受付嬢さんがいて、酒場から弦楽器の音と歌が聞こえてきました。

 冒険者らしき人たちと、吟遊詩人らしき人が一緒に歌ってます。

 樽の椅子を叩いて、リズムを取っている人もいます。


「〽その名はスウ、知恵と勇気を備えし真の勇者なり~♪ 慈悲の王女を救い、その偉業を称えられる事もなく、姿を消した。その後、姿を視た者はおらず~♪ ならば我が称えよう、勇者の伝説を~♪ 白き翼は不可能すらも切り裂いて~」


 なんか、スウさんが称えられてました。

 となりでスウさんが「ぶーーー」っと口から空気を吐き出しました。

 あ、目がキョドりだしてます。


 スウさんは大急ぎで酒場の方へ走っていって、プールに飛び込むみたいな感じで、なんだかずんぐりむっくりした男性にダイビングツッコミしてます。


 わたしはリッカを振り返り、


「ほっときますか」

「だな」


 するとヴァンデルさんが、冷や汗を流すような表情で――(顔まで毛むくじゃらなので冷や汗は、実際には見えません)


「い、いいのか?」

「なんか、大暴れしてるけど、いいのニャ?」


 トリテさんも冷や汗を流しています(トリテさんはケモミミとシッポが生えただけの獣人さんなので、冷や汗が本当に見えます)


「大丈夫ですよ、スウさんは手加減の出来る子です。スキルを使わないスウさんは、最弱の名を(ほしいまま)にしてますので」

「ほ、ほしいのか? その名は」


 スキルというのはフェイテルリンクで、モンスターを倒すと手に入るアイテムから得られる超能力みたいな力です。

 まあ、よくあるゲームのスキルみたいな物だと思って下さい。


 ヴァンデルさんが納得したようなので、わたしたちが冒険者ギルドの裏にあるという訓練場という場所に向かおうとしていると「〖超怪力〗」というスキルを使う声が聞こえてきましたので、


「やめなさい」


 と、わたしは自分のスキル、〖重力操作〗を使ってスウさんを無重力状態にして踏ん張れなくしました。


 スウさんに襲われていた、ずんぐりむっくりした男性が慌てて走ってきて、わたしの後ろに隠れます。

 おヒゲで貫禄のある男性が、わたしの後ろでぶるぶると震えています。

 スウさんが、わたしの後ろの男性を見ながら叫びました。


「『お兄ちゃんどいて! そいつ殺せない!』」

「誰がお兄ちゃんですか」


 さて、行きますか。


 スウさんは周りの人に取り押さえられ、「まあまあ、勇者様!」と宥められています。


「はなせー! はなせー!」


 わたしたちが訓練場に向かうと、ずんぐりむっくりした男性も震えながら着いてきました。


 大丈夫ですよ、スウさんは全然本気じゃないです。

 本気になったら〖重力操作〗なんて、彼女の持つ〖飛行〗でなんとか出来ますし、あんな人数は簡単に蹴散らします。


 訓練場は、学校の運動場みたいな土の地面でした。


 周囲には様々な木の武器が掛かっていたり、樽や廃材を用いた的があったり、檻の中にモンスターが入れられていたりしました――現代なら動物虐待とか言われそうですね。

 ・・・まあこの世界のモンスターは、生命体ではないらしいのですが。


 木の武器などの上には屋根がありますが、中央に屋根はなく、晴天が覗いています。


「これが、ファンタジー世界の訓練場ですかー」


 この雰囲気ワクワクしてきます。


「いいな、この雰囲気」


 リッカも気に入ったようです。深呼吸しています。


「この運動好きどもめ」


 スウさんも、訓練場に入ってきました。

 床を蹴り、天井を手で押しながら。無重力でも余裕らしいです。


 まあ、運動嫌いのスウさんには、この訓練場の良さは分かりそうにないですね。


 他の冒険者さんたちも入ってきました。

 どうやらギャラリーは20人位になりそうですね。


「よし、じゃあ俺の相手はどっちだ?」

「あたしの相手はどっちニャ」


 おや、トリテさんもやるようです。

 戦いが苦手みたいなので、こういうのは断るかと思っていたのですが。


「トリテはどんな戦い方をするんだ?」


 リッカの疑問に、トリテさんが武器置き場に向かいます。


「そうニャねぇ~。ダガーだけでも戦うけれど」


 トリテさんが木の武器の中から、巨大なフラフープのような物と、ダガーを2つ取りました。

 フラフープの直径はトリテさんより大きい。


 真ん中に軸のような物が通っています。

 軸の下には握り手、上は尖って浅い槍のようにもなっています。


 スウさんが呟きます。


「チャクラム?」


 あの武器はチャクラムと言うらしいです。よく知ってますね。

 するとリッカがちょっと驚きます。


「スウ・・・・チャクラムって、あんなデッカイの視たことないぞ」

「リッカも、チャクラムを知ってるんですか?」


 わたしが尋ねると、リッカは事も無げに。


「そりゃぁ戦うことも想定しているからな。しかしチャクラムってのは本来、指で回して飛ばす、手裏剣みたいなサイズなんだけどな」


 トリテさんが左手と口に木のダガーを収めながら、ジャンプして巨大チャクラムを地面に叩きつけます。

 あんなので打撃されたら、それだけでポックリ行きそうですね。

 そうして地面に槍の部分を突き立てたチャクラムの芯に抱きつくようにして、クルクル回りだしました。


「コイツはアタシ専用にゃ」


 逆さになって蹴りのようなものをしたり、柔軟でしなやかさを活かした踊りの様に動きます。

 踊り子の服も相まって、見惚(みと)れてしまいそうです。


 あ・・・これあれです。競技ポールダンスぽいですね。


 なるほど、面白い戦い方です。


「トリテさんとは、わたしが戦いたいです」

「決まりニャね」


 というわけで、わたしvsトリテさん。

 リッカvsヴァンデルさんとなりました。


「4人共、これを身に着けて」


 スウさんが、何かを取り出しました。


「怪我したり、即死したら危ないから」


 パイロットスーツでした。


「え、予備ですか? ・・・・なぜ4着も」


 フェイテルリンクで手に入るパイロットスーツは耐G性能だけでなく、防刃、防弾などなど様々な性能があります。

 見た目はぴっちりスーツなんですけども。

 ちなみにパイロットスーツは宇宙服でもあるので、透明なヘッドギアがついてます。剣道の面の代わりになりますね。

 スウさんの出したパイロットスーツはレアアイテムで、かなりの防御能力を発揮します。ちょっとした大砲の弾を受けてもへっちゃらです。


「うん、シルバーセンチネル。――特別権限で使えるようにしたんだ。アリスとリッカ、二人の身に何かあったら嫌だから。あと、この惑星で仲間が増えるかもって、余分に用意しといた」

「流石、準備が良いですねぇ」


 医務室らしき場所で、わたしたちはパイロットスーツを着て戻ります。

 もちろんトリテさんにも、ヴァンデルさんにもパイロットスーツを着てもらいました。


 ヴァンデルさんとトリテさんは、勝手が分からず着づらそうにしてましたが。


 あ・・・ヴァンデルさんと一緒に着替えたりしてませんよ?


 にしてもフェイテルリンクのフリーサイズってすごいですね。

 ヴァンデルさんは2メートル以上ありそうな巨体で、筋骨隆々。リッカは145センチしかなくて細身なんですが。二人共ちゃんと着れています。


 スウさんはトリテさんの露出が減って、残念そうにしてました。

 ――貴女が着せたんでしょうに。


 今日はわたしもリッカもパイロットスーツの上から、ファンタジーな服を着ています。


「すごいな、このアーティファクト。木の武器では、まるでダメージが通らん」


 この惑星ファンタシアでは、たまに超科学製品が発掘されるのですが、そういう物をアーティファクトと呼び魔法のアイテムのように考えているらしいです。

 「十分に発達した科学は、魔法と区別がつかない」みたいな感じでしょうか?


「〈神の衣〉は時々発掘されるニャけど、ここまで強力な〈神の衣〉・・・視たことないニャ。これ一着だけでも売れば、一生暮らしていけるニャよ」


 どうやらパイロットスーツは〈神の衣〉と言われているみたいですね。

 ヴァンデルさんとトリテさん、パイロットスーツに興味津々です。

 トリテさんの言葉に、スウさんがちょっと慌てました。


「う、売らないでくださいね・・・連合にメッされちゃうんで」


 するとトリテさんは、スウさんよりさらに慌てだします。


「う、売るわけ無いにゃ! 勇者様の持ち物を勝手に売るなんて、そんな神をも恐れぬ所業――勇者様に殺されるにゃ・・・・」

「こ、殺しませんけども・・・・お仕置きはすると思います」


 お仕置きと聞いて、トリテさんがガクガクと震えだしました。

 スウさん今からトリテさんはわたしと戦うんですから、彼女にデバフ掛けちゃ駄目ですよ。


「じゃあ、わたし達も武器を選ばないと」


 わたしとリッカは、木の武器の方へ行きました。


 む・・・・木刀が無いですね。

 リッカが、スウさんを振り返ります。


「おーい、スウ。木刀がないぞ?」

「そ、そりゃ・・・・ウブスナ行かないと無いよね。二人共〈道具袋〉に木刀入れてない?」


 ウブスナ? ――響きからして、この惑星にも和風な国があるのでしょうか?


「入れてないな」

「・・・・あっ、わたしは入れてます」


 わたし、最近は竹刀ではなく木刀持ち運んでますからね。


「じゃあアリス、私に〈道具袋〉貸して――二人は、〈道具袋〉を使っちゃ駄目だから」

「わかりました」


 わたしは、スウさんに〈時空倉庫の鍵〉の腕輪を投げました。

 見事に、キャッチに失敗する、スウさん。

 流石、運動不足の擬人化。


 スウさんは、木刀を〈時空倉庫の鍵〉から取りだし、持って――来ないでスキルの〖念動力〗で運んできました。

 だから運動不足になるんですよ、擬人化さん・・・・。


 ヴァンデルさんも巨大な木の斧を選びました。


 リッカとヴァンデルさんは、ギャラリーに混ざりました。


 最初の試合は、わたしvsトリテさん。


 わたし達は、訓練場の中央に向かいます。

 

 そうして向かい合う。

 わたしは一つ礼をして、肩口辺りに木刀を立てて構えます。八相の構えです。

 以前は上段を使っていたんですが、こちらの方が刀が相手に近いと気づいたんですよね。

 「背の低いリッカに、背の高いわたしの上段が、たまに負けるのはなぜ?」と考えた結果得た構えです。


「ん?」


 リッカが反応しました。


「――アリス、構えを変えたのか」


 文化祭からこっち、出稽古に来てませんもんね。

 わたしが八相を使うようになったのを、リッカは知りません。

 剣道でリッカは男子でないと相手にならないのですが、女子校でなので、近くにあるわたしの高校(共学)に出稽古にくるんです。


「なるほどな、とうとう八相の疾さに気づいたのか。・・・流石アリスだ。わたしも上段を使った甲斐があった」


 やはり、わたしに気づかせる為でしたか。

 では視ててくださいね。

 

「なんニャその妙な構えは・・・・両手で武器を使う――そもそも、なぜ盾を持ってないニャ。グレートソードならわかるニャけど。その程度の長さの武器を両手で持つのは何故ニャ・・・」

「開始の合図するぞー」


 リッカが言ってきました。


「お願いします」

「頼むニャ」

「はじめ―――!!」


 大きな声が、訓練場に響き渡りました。

 ですが、わたしもトリテさんも動きません。


「む。・・・・す、隙が無いにゃ・・・、これは・・・その若さで見事ニャ。何者ニャ・・・」

「これでもわたしの国の――わたしくらいの年齢、剣の道を歩む者2,000,000人の頂点なんですよ」

「に、200万人の頂点!? ・・・・そりゃ、その若さでも侮れないわけにゃ――というか、200万人もの若者が戦士をしているなんて、そんな国知らないニャ」


 あ・・・ちょっとマズイ発言でしたかね。まあ、詳しく訊かれたら誤魔化しますか。

 ――スウさんが、ちょっとビックリします。


「200万人・・・・? 高校剣道人口ってそんなに多いの?」

「うむ。男子も含めれば400万人になるぞ」

「アリスと、リッカって、そんなヤバイ物の1位と2位なんだ?」

「褒め称えろー」

「サイン下さい!」

「いいぞ~」


 何してるんでしょう、あの人達は。


「これじゃあ、攻められない――」


 トリテさんは、言いながら下がり、


「――ニャ!!」


 円盤投げのように体を一回転、巨大チャクラムを投げました。

 わたしは、慌てて後ろに躱します。


「隙ありぃ!!」


 走ってきたトリテさんが、チャクラムの中央の軸を握って、チャクラム自体を回転させながら廻し蹴り。

 足の指にはダガーが握られています。

 なんてトリッキーな。


 反撃のチャンスですが、トリテさんの頭が遠い――なら足を貰いましょう!


 わたしは八相から太刀を振り下ろし、足を狙います。


「ヤアアア!!」


 ですがその一撃を、トリテさんは足の指に握ったダガーで受け流す。

 器用すぎないですか、その足!


「一瞬姿が、みえにくくニャった・・・なんなのニャ!!」


 見様見真似の消える動きを仕掛けましたが、流石に猫科の目が相手では、完全に姿は消せませんでしたか。


 こちらが木刀を振り下ろし一瞬動きが止まった所に、地面に足を着いたトリテさんがチャクラムを握り、横一線。

 大回転しながら、胴体を狙ってきました。

 わたしは攻撃を木刀で受け止め――られない! ――威力が・・・・!


 シャレにならない衝撃が、木刀を弾き上げ、わたしにたたらを踏ませます。

 そうか、あれはフルスイングみたいな物なんですもんね・・・!


「どうやら、君の剣は、かなりお上品な剣ニャね!」

「剣道を、舐めないで、下さい――!!」


 トリテさんの戦い方は大ぶりだ、本来隙だらけの攻撃――だけど常に相手に攻撃の機会を与えない事で、その隙を補填している。


「――なら!!」


 わたしは、刀を使わず、回転中のトリテさんの背中に飛び蹴り。


「ぬおっ!?」


 前に転びそうになるトリテさん。

 逆にわたしは、地面に転ぶ形に。


「転がったら、一巻の終わり――」


 トリテさんは言いますが、わたしはブレイクダンスの要領で、足を回しながら逆立ちになります。


「んニャ!?」

「こっちも、ダンスが得意なんですよ――中学時代から、そうとう稽古してますからね」


 一応モデルであり、女優であり、歌手でもあって、ダンスを稽古してるんですよ。


「お前も踊り子ニャ!?」

「一応、ダンスでもお金稼ぎしてます!」

「ニャーッ! それは益々負けられないニャ」


 わたしが距離を取ると、トリテさんはチャクラムを地面に突き立て、チャクラムの上にのって逆立ち一回転。

 側転するように回転しました。

 そして私に向かって、チャクラムを振り下ろすようにしてきました。


 わたしは木刀を逆さにして、肩に纏うようにし、攻撃を受け流します。

 そうしながら、わたしはチャクラムに木刀を押し付け、張力を溜めて――チャクラムが通り過ぎた所で、パチンコの様に木刀を弾かせ、振り下ろしました。


 しかし、トリテさんはチャクラムを持ち上げ、握りの部分でで木刀を受け止めます。


「くっ――やり辛い」


 わたしは顔を(しか)めました。


「アンタ、あまり剣以外の武器と戦った事無いにゃ?」

「ありますよ・・・・モンスターとだって!」


 でもこんな大きな輪っかと戦うなんて、地球人はみんな初めてになると思うんです!


「おっと、ニャ」


 トリテさんが後ろに跳びながら、チャクラムをわたしの木刀の柄に引っ掛け――えっ!?


 木刀の柄が、チャクラムの内側に絡み、わたしは思いっきり、前につんのめりました。


 後ろに跳んだトリテさんが、反転――地面を蹴ってわたしに突進してきます。

 チャクラムの先、槍の部分がわたしに――そうだ、このチャクラムは槍でもあったんでした!!


 ドンッ。


 わたしのみぞおちに、槍の部分が沈み込みました。

 パイロットスーツがあるので、ダメージはないですが。


「それまで!」


 リッカの宣言。


 ・・・・負けてしまいましたか。


「ま、参りました―――」

「ニャッ」


 わたしたちは、静かに中央へもどります。


 わたしは作法通り頭を下げますが、トリテさんはダンスを披露しています――勝利の舞とか言う名前が付いていそうです。


 わたしは蹲踞で納刀して、スウさんの方へ向かいます。


「スウさん、負けちゃいましたぁ」


 わたしがパイロットスーツの首筋にあるボタンを押して、ヘッドギアを背中に収納しながらスウさんに抱きつくと、スウさんは頭をナデナデしてくれました。


「頑張ったねぇ」

「悔しいですぅ」

「でも、プロ相手にあれだけ戦えたんだから、すごいよ。自信持って」

「ありがとうございますー。クスン」


 するとリッカが、


「わたしが仇を取ってやるよ」


 言って、手を出してきました。

 わたしは「お願いします」と言って、木刀を渡します。


「おう!」

「――ところでスウさん、トリテさんみたいな強い人を怯えさせるなんて、一体何をしたんですか? 殴る蹴るの暴行を加えたんですか?」

「あ、あの人には、何もしてないから!」


 さあ、ヴァンデルさんvsリッカが始まります。


 中央で向かい合う、二人。


 リッカは蹲踞から抜刀すると、立ち上がり、見事な中段。


 ヴァンデルさんは大きくて柄の長い斧を肩に担ぎ、肩を叩きながら斜に構えています。


「じゃあ、合図しますね」


 わたしが言うと「うん」、「おう」と返ってきました。


「はじめぇー!!」


 わたしの言葉と同時、ヴァンデルさんが肩に担いだ斧を両手持ちにしました。

 右手は刃の真下に、左手は柄の下の方を持ち、両腕を大きく開いています。

 明らかにヤバイ。

 彼の迫力は、完全に猛獣のそれです。ライオンが居ます。獅子です。


 なのにリッカは落ち着いて、揺らぎすらしません。


 見事に背筋を伸ばし、怯えなど一切ない。


 半眼で相手を見据え、完全な自然体――わたしに静かな湖面と、泰山が幻視されました。


 ヴァンデルさんが目を見開きます。


「――!? な、なんだコリャ。こいつァ・・・・ガキの出していい迫力じゃねぇぞ」


 流石、立花放神捨刀流の申し子。

 獅子に怯えるどころか、獅子を怯えさせています。


「ちょいと本気を出さねぇと、あっさり負けちまうな」


 ギャラリーがざわつきました。


「おい、ヴァンデルがあのチビに負けるって言ったか? ――あり得ねぇぞ」

「ヴァンデルが本気を出すってマジかよ・・・・」

「Aランク冒険者のヴァンデルが人間相手に本気になるなんて、クラマスと戦った時以来じゃないか?」


 ヴァンデルさんが、斧を握る手に思いっきり力を入れました。


「オォォォォォォ―――ッ!!」


 雄叫びを挙げたと同時、彼の体から何かが噴き出した気がしました。

 なにあれ・・・・闘気とかですか?


 すると、ヴァンデルさんの全身の筋肉が膨れ上がっていきます。


 ボディビルダーも裸足で逃げ出しそうな、凄まじい筋肉。

 人間とは最早別物。

 リッカは恐ろしい事態が目の前で起こっているのに、相変わらず深い呼吸をしているだけ。

 ヴァンデルさんがリッカを見て気炎を吐きます。


「いくぞ、嬢ちゃん!!」


 その声は、最早獅子の咆哮。

 一瞬で決まる――わたしには、そう思えました。

 リッカが静かに口を開きます。


「来なさい」


 あの迫力を前に「来なさい」って言えるの!?


「おもしれぇ!!」


 ヴァンデルさんの全力の振り下ろし――速い!

 斧の根本を右手で握っているせいで、軽い武器を振り下ろす様な速度。

 しかしヴァンデルさんは途中で右手を離します。

 右手から開放され、射出されるように放たれた斧が遠心力を手に入れ、リッカに向かう。


 するとリッカは、轟音を鳴らして迫ってくる斧の――刃の根本の部分に木刀を差し込み、斧を木刀に引っ掛け半回転。――後ろを向いた。


「な、何――消え!?」


 ヴァンデルさんの驚愕。

 嘘でしょ・・・・リッカは、猫科の目から姿を消したのですか? ・・・・さ、流石本家です。

 リッカは後ろを向いたまま、しゃがんでヴァンデルさんを足払い。

 凄まじい勢いで迫ってきていたヴァンデルさんは、思いっきり前に姿勢を崩す。

 見えないのもあいまったのでしょう、完全に不意打ちです。


 リッカは、またも半回転。

 ヴァンデルさんの方向に向き直り、立ち上がりながら上昇するように。下降して来るヴァンデルさんを逆袈裟に切り上げます。


「胴ォォォォォォ!!」


 リッカのフルスイングを胴体に受けたヴァンデルさんが、浮き上がりました。

 砕け散る木刀。わ、わたしの木刀が・・・・。


「ぐほぉ―――っ」


 うわ・・・シルバーセンチネルの防御を、ちょっと抜きましたよ、あのチビっ子。

 生身で大砲以上の威力を出したんですか!?

 貴女が使っていたのは只の木刀で、超高金属でも、高周波ブレードでもないんですよ・・・・?


「それまで!」


 わたしは、リッカの勝利を宣言しました。


「お、おい・・・・体重が100キロを軽く超えるヴァンデルが浮いたぞ」

「・・・・あの細腕で、マジかよ」

「止めてくれ、戦士やってく自信が無くなる」


 相変わらず脅威のチビっ子・・・・わたし、なんでアレにインターハイで勝てたのでしょうか?

 ヴァンデルさんが脇腹を押さえて、蹲ります。


「まさか、俺がこんな小さな娘に負けるとは・・・・それも敏捷や技で〝躱す、当てる〟だけではなく、十分に必殺の威力を持って」


 スウさんが目を瞬かせます。


「みずきは、やっぱ凄いなぁ・・・ファンタジー世界の住人、しかもトッププロの戦士に勝って膝をつかせるんだから。スキルも無しに」


 わたしはスウさんの方が強いんだし、と思って尋ねてみます。


「スウさんは何方(どなた)かと手合わせしないんですか?」


 わたしが尋ねると、周囲の冒険者の皆さんが「ぎょ」っとして、一斉に一歩退きました。

 なんか「ザッ」って音が聞こえたくらいでした。


 見れば、屈強な冒険者さんたちが涙目で、首を横に小刻みにぷるぷる振っています。

 ヴァンデルさんも、トリテさんも顔色が悪いです。


 ・・・・スウさん・・・貴女一体、何をしたんです。


「なに言ってるのアリス・・・・私はスキルが無いと、クソザコナメクジだよ」

「別に、手合わせは、スキル無しとは言ってな――」


 わたしが言い掛けた時、トリテさんが慌てだし、握手を求めてきました。


「握手ニャ!」

「はあ」


 わたしは握手を返します。


「よしっ、これで手合わせは終わったニャ!」

「えっと・・・・」

「終わったニャ!!」

「は、はい」

「さあ、酒場に戻るニャ!」


 冒険者さん達が、脱兎の如く酒場に戻っていきます。

 ヴァンデルさんも四つん這いで、疾走するライオンみたいに戻っていきます。


「スウさんの戦いも見たかったなぁ」


 わたしが物欲しそうに言ったところで、冒険者さんたちが一瞬ビクゥとなりました。

 うーん、何をどうしたらここまで怖がられるんでしょう。




 本編ではスウが、無双しまくります。

 そんな無双でよろしければ https://ncode.syosetu.com/n0664js/ にTo be Continued!お願いします。

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