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ルクレティアの物語  作者: Riberiru
第一章
1/4

1.嵐

“天の咆哮(ほうこう)にひるむ者たちへ

これを知っておけ:私は嵐に乗る雷である。”

 曇り空が吠える。雷が雲の間でうねり、暗闇を激しく引き裂きます。

 ()()てた平原(へいげん)の真ん中で、雨に濡れた土は湿ったほこりと灰のほろ苦い匂いを放っていた。その空の下で、彼女はそこにいた。しっかりと立っていた。

 主人公(ルクレティア)は息苦しそうに呼吸していた。体はあざや切り傷、やけどで覆われ、息をするたびに震えていた。長い濡れた髪は汗と雨で重くなり、体にぴったりとくっついていた。それでも、目には確固(かっこ)たるものがあった。

 左の目は空のような青色で、右の目は森の心のような緑色で、二つの目は明るく輝き、希望の糸をもたらした。

 ルクレティアの周りで火花が踊り、肌に優しくキスをするようにパチパチと音を立てていた。疲労にもかかわらず、オーラは全ての力で脈打ち、生きた炭のように輝いていた。そして指先からは電気の火花が弾け、肌からは強い熱が放射されていた。右手にある保護手袋は破れてしまっていた。ルクレティアが決して見せたくなかった思い出の傷跡が、雷の光の中で今、輝いていた。

 ルクレティアの手は剣をしっかりと握りしめた。

 エネルギーの放出は彼女の肉を引き裂いていたが、依然として弱まらなかった。肌を焼いたのと同じ雷が、意志の炎をも点火していた。これはルクレティアが、その存在と彼女が愛するすべての間の最後の壁だったからである。

 周りには敵の群れが集まり、具現化された悪夢、災厄の母に従っていた。邪悪で、力強く、残虐な生き物。

 しかし、ルクレティアの顔は穏やかさを保っていた。自分が何をする必要があるかを知っていた。そして初めて、後悔を感じていなかった。

「そんな短い時間だったかもしれないけど…嬉しかったね。」

 ルクレティアはささやいた。視線は、瓦礫の中に横たわる意識を失った男に向けられた。彼の顔には血が付いており、身体は動かない。彼が生きているのかどうかわからなかった。それでも、ルクレティアは微笑んだ。

 誰にも聞こえないように何かを囁いた。

 そして歩き始めました。

 煙が野原を覆っていた。敵のシルエットは悪魔の蜃気楼のように燃えていた。『災厄の母』の目は血のように真紅で、怒りで輝いていた。彼女の叫びはルクレティアには届かなかった。鼓膜はすでに破れていた。

 しかし、その静けさの中で、彼女の心臓はまだ激しく鼓動していて、ルクレティアはそれを感じることができた。それだけで十分だった。

 最初のモンスターが突進した時、空は応えた。神の暴力で落ちてきた雷が、戦場全体を照らし、現れた輝く光の前で全てを盲目にした。

「通すものか!」

 自分の声が聞こえなくても、全ての信念を込めて世界に叫んだよ。

 体の中で電気がパチパチと音を立てた。それはルクレティアの体が耐えられる以上の力だった。筋肉は燃えていた。皮膚が火傷した。指は生きた刃のように輝いていました。その音は、千羽の鳥が飛び去るように空気を引っ掻いた。

 それがどれだけの代償を伴うか分かっていた。でも、もう恐れてはいなかった。それからルクレティアは前に進んだ。

 一歩ごとに足元の地面が割れていく。一歩、一つの雷。一つの稲妻。一つの悲鳴。

 まるで自然の力みたいで、止められなくて、敵に怒りをぶつけていた。そして敵の列を切り裂きながら、その心は頑固に引き戻されていた。今を逃れて、まるで稲妻がその道をたどるように、過去の記憶を旅して、その瞬間にたどり着いた。

 孤児院。孤独。主人。笑顔。感謝。「君を守る」。言えなかった「好き」という言葉。

 子供の頃の自分を思い出し、「強ければ、一人ぼっちじゃない」と言った。

 そしてルクレティアは微笑んだ。なんという皮肉だろう。

 雷が脈打ち、燃え、引き裂かれた。力強く、鮮やかで騒がしい光に包まれ、自然の雷と彼女のオーラが融合し、彼女は生きた災厄となり、嵐と一体となった。復讐のためでも、栄光のためでもなく、選択のために、愛のために。

 心の中で『龍の娘』となることを受け入れ、彼女にとって重要なものを守るために必要な力を得ることを決意した。もう何もルクレティアを止めることはできなかった。

 『災害の母』と呼ばれる者は、ルクレティアを劣った存在だと考えていたが、今や神々の怒りを背負って近づくルクレティアを見ると躊躇していた。

 反応する前に、光がすべてを満たした。

 …………

 煙が立ちこめる噴火口の中心には、ルクレティアだけが残っていた。

 しかし、少しずつ呼吸が遅くなった。彼女の体は今や嘆かわしい状態だった。彼女の膝が下がり、目が重くなり始めました。

 彼女は最後にもう一度振り返った。そして微笑んだ。

 上空で、空がようやく開けた。星々が雲の間から恥ずかしそうに覗いていた。ルクレティアはそれらを、遠くの家を懐かしむように見つめた。

 満足してため息をついた。嘆きもなければ、恐れもなかった。ただ平和があった。

 そして彼女の目が閉じるにつれて、星々の幻想はゆっくりと消えていった。

 そして、地面に倒れた。

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