アイドルに目覚める。
読まなくてもいい1章。本編は実質2章から
第1章 僕は引きこもり、なんでそうなったのかは覚えてない。
生きる屍。まさに自分の為にあるみたいだ。
外に出れなくなって、暫く経った気がする。
なんで出れなくなったんだっけ?思い出せない。
使えなくなった黒いランドセル。中学校と高校の参考書。
なんで嫌になったんだっけ?いいや、思い出せないなら。もういいや。
母さんの顔、ちゃんと見てないな。声は聞こえるんだけど。
どうしよう。このまま迷惑かけるぐらいならいっそ……。
いつかのクリスマスにサンタさんに貰ったパソコンを開いた。
調べるのは勿論。「迷惑をかけない死に方。」
家だと事故物件になるから売り払う時に面倒か。
発見が遅れたら、リフォームが要る様になる。
電車。ビルの屋上は人に迷惑がかかるから勿論ダメ。
海も遠くにに行かないと無いし、大きいため池なんかもない。
「う───────ん」
回転する椅子でくるくる回る。
考えついたらすぐ行動できるところは唯一の長所だと思ってるんだけどな。
意外と人に迷惑をかけず死ぬのは難しいらしい。
「どうしたもんかなー。」
声……低くなったな。身長は伸びたけど、それでも小柄な母に似て小さいはず。
ベットも椅子も小学校に入る時に買ってもらったものだけどまだ使えてる。
もっと母さんと上手く行けたんじゃないかな?
父さんだって僕がこうならなければ……。
どうやっても人に迷惑掛けるなら、自分が納得出来る死に方したいな。
「桜……見たいな。」
家の桜がこんなに満開なら近くの桜並木もきっと綺麗に咲いてるはず。
夜、お風呂入って、最近買ってくれた服きて、外に出てみよう。
どうせ死ぬなら外に出れなきゃいけないし、どこかいい場所があるかもしれない。
有り得ないと思うけど、ヤクザとかに攫われてバラされてもいいな。一思いにやってくれ。
第2章 推し見つけちゃった。
「いや出れたし、引きこもり卒業じゃん。」
母さんが居ない時に家の中は自由にしてたけど……。
「今日夜。桜見たいから外出てくる。」って言った母さんびっくりしてたな。
止められるかと思ったけど、わざわざ靴玄関に用意してくれて、
僕なんかが息子じゃなかったらな。
崩れない壁だと思ってたけど、実は薄っぺらい紙の壁で突っ込んだら突破できた。
みたいなよく分からない驚きでお腹いっぱいだ。
外に出るのはこんなに簡単だったんだな。
過去の記憶を頼りに来た桜並木は相変わらず綺麗だった。
来てよかった。そう純粋に思えた。
《タイガー!ファイヤー!サイバー!ファイバー!》
なんだ?
えっ怖。夜中って言ってもまだ人の起きてる時間だけどさ。
気になるじゃん。
声のする方に向かうと人通りが増えてきて、屋台が出てきて、今日がなにかの祭りだったことを知った。
《ダイバー、バイバー、ジャージャー!》
声がしたのは野外ステージの方のようだ。
「皆ー!!今日はありがとう!!!!」
なっ。
「沢山応援してくれてとっても楽しかったよ!次はいつものハコでライブするからよろしくね!!!」
キラキラしてて可愛い。赤いカラーの衣装と、赤いくて長い髪、何より顔が好みだ。
「今日初めて見てくれた皆さん!ぜひSNSでたくましく生きる!ソロアイドル!アカネ調べてみてね!!! 」
こんなの子が存在するだ。
そこからどう帰ったかあまり覚えてないが、家に速攻帰ってアカネについて調べた。
すごい。フォロワーが5000人超えてる、1人で頑張ってるんだ。
こんなに心が揺れるのは久しぶりだ。SNSの写真に写ってる君の目キラキラしてて綺麗……。
「近くで見つめ合いたい。」
人生で初めて自覚した恋心。
外に出た理由は死ぬ為だったのに、今は君に夢中になってしまった。
「そうだ!アイドルになったらコラボで横に立てるじゃん!!!」
そう思った僕の行動は早かった。パソコンで事務所探して、ひたすら応募。
次の日……。
「母さん。僕アイドルになる!!!」
母さんが倒れたのは言うまでもない。
アカネはアカネズミというネズミがモチーフです。