第六十九話
「社会って、なんでこうなんだろうな」
数分間の静寂の中、景佑が話し出した。
「弱者が淘汰され、それが後になり爆発するようになる」
黎慈にも、少なからずその気持ちがわかるような気がした。
「…」
だが、言葉が出せずにいた。
黎慈と景佑は、立ち尽くしたまま静寂に包まれていた。
和寿が消えていった後の余韻が、心に重くのしかかっている。
和寿の過去を知っている手前、温情をかけてしまっている。
虫がいい話かもしれないが、擁護をしたい気持ちもある。
「…そんな悠長に立ち止まっているわけにも行かなさそうだぞ…」
景佑が明らかにヤバい表情をしていた。
その表情のまま、指を指す。
指の先を見ると、砂埃が待っているのが見えた。
「逃げるぞ!」
黎慈は直感で危機を感じ、即座に町の方へ走り出した。
景佑もそれについて行くように、その場から逃げ出す。
「はあ、はあ…」
二人は無事に町についた。
膝に手をつき、息を切らしながら後方を確認する。
砂埃はある一定の地点で止まっていた。
夢の核である地点が、完全に埋もれていた。
「これであの場所が消えたのか…」
夢の核は和寿の欲望の塊。
つまり、あの核がなくなった時点で厚生ができていると言う証拠だ。
その事実に、そっと胸を撫で下ろす。
「…俺らも帰るか」
黎慈は再び前を向き、明るい表情で話し出す。
「そうだな」
景佑も笑い混じりの声で、そう返す。
二人は夢の世界を後にし、現実に帰還した。




