第六十八話 決着
凄まじいエネルギーが夢の世界の全体に広がって行く。
眩い光と共に、視界が奪われていく。
その光の中、怪物の声が聞こえてくる。
「ぐっ…」
微かな呻き声だったが、黎慈には確実に聞こえた。
『やっと…』
黎慈の力がだんだんと抜けていく。
視界を奪っていた光が消えると同時に、黎慈は地面に倒れ込む。
顔を上げ、前を向くと怪物が倒れ込んでいた。
動きも完全に止まっているように見えた。
「終わった、のか…」
黎慈は気力が抜けたようにその場に倒れ込む。
そのまま眠るように目を閉じる。
「長かった…」
だが、その言葉には様々な意味が込められていた。
和寿であった怪物を倒してしまった、自分への責任。
それが今、重くのしかかる。
形はどうであれ、人殺しの業を背負うことになる。
そんな風に考えていると、景佑が寄ってくる。
「やっと、終わったんだな…」
景佑も気が抜けたようにそう言う。
黎慈が目を開けて、景佑の方を見る。
「ああ…」
静寂が空間を包み込む。
改めて前を見ると、やはり怪物が倒れ込んでいた。
「助ける方法はないのか…」
何も動かない和寿を見て、そう言葉をこぼす。
考えを巡らせていると、和寿に動きがあった。
怪物の体から黒煙が立ち込め、だんだんと体が消えていく。
二人は咄嗟にその場から離れ、様子を見ることにした。
次第に体が消えて行く。
最後には黒煙が軽い爆発を起こした。
周りには黒煙が立ち込めた。
だが、その黒煙の中に微かに動く物体が見えた。
黎慈は構わずに黒煙の中に飛び込んでいった。
「黎慈!どうしたんだ!」
景佑の声に振り返ることもせず、黒煙の中を走る。
視界が悪い中、黎慈の足元に何かが当たった。
一度かがみ込み、その物体の正体を見る。
そこにいたのは、弱り果てた和寿がいた。
黎慈は和寿を抱え込み、黒煙の中から救出する。
「なんで…助けたんだ…?」
和寿が二人に今にも死にそうな声でそう聞く。
「死んでもらっちゃ困るんだ」
黎慈が冷酷な声色でそう言う。
「確かに、お前は死ぬべき大罪を犯したことには変わりない。でも…」
景佑がそう言う。
「死で償おうとしないでくれ。ちゃんと現実で、償ってくれ」
「この世界で死んでいった親友のためにも…」
「それが、俺からのお願いだ…」
景佑は冷静でありながらも、その中に悲しみを含んでいた。
そこで、和寿は今までしてきたことの重大さに気がついたのだろう。
「現実の実体がどうかはわからないが、償いを受ける」
和寿は決心がついたようだ。
だが、その中に悲壮感も漂っている。
「お前らみたいな奴がこの町にまだいたなんてな…」
「せっかくなら、二人に…」
和寿が何かを言おうとしたが、言い止まった。
「いや、なんでもない」
和寿が立ち上がった。
そうして、黎慈の前に手を差し出してくる。
黎慈はその手を強く握り返す。
手に力はなく、代わりに優しさが漂ってきた。
景佑にも同様に、手を差し出してくる。
景佑も手を握り返す。
「最後に」
「…厚生をさせてくれて、ありがとう」
和寿がそう言うと、夢での実態が結晶のように消えて行った。
心なしか、涙を浮かべているように見えた。
二人はその場で立ち尽くす。




