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第六十五話

「まだです」

聞いたことがある声が聞こえてきた。

意識が朦朧とする中、少しずつ目を開こうとする。

 目の前にいたのは、何度か会ったことのある女性だった。

「ここは…?」

 ぼんやりとする意識の中、か細い声で聞く。

周りを見渡すと、完全に暗闇の世界だった。

 その中で、黎慈とその女性だけがいる。

「いわば、世界の狭間でしょうか…」

「生命活動に危機を感じ、一度お呼び出しした次第です」

 死んだわけではなさそうだ。

「今、どうなっているんだ?」

「現実ではあの状態で時間が止まっています。ご安心ください」

 黎慈はそっと胸を撫で下ろした。

「ただ、ここでの時間も無限ではありません」


「…なぜ呼んだんだ?俺のことを…」

 黎慈がそう聞くと、女性が間を開けることなく話し始める。

「今死なれると…」

 女性は何かを言おうとしたが、口ごもった。

「いや、今は言わないでおきます。時が来たら…」

何やら含みを感じた言い方だった。

「なあ…」

黎慈は何度も聞くその言葉に、多少イラついてきていた。

「それは一体いつになるんだよ!なんなんだよ!」

 黎慈はカッとなり、急に立ち上がる。

「くっ!」

 腕を使い立ちあがろうとしたせいで、両腕に鈍痛が響く。

ブラムの使いすぎだろうか。

 この世界でも影響している。

「動かないでください。傷が痛みます」

「なら、どうすれば…」

 イラつきこそはなくなった。

だが悲壮感が脳裏にチラつく。

「時間がないのは事実です」

「ですが、今は落ち着きましょう」

「この状態で戦線復帰をしても、夢からの復帰ができなくなる可能性があります」

 予感はしていたが、やはりそうなってしまう。

黎慈もそう感じていたが、今確信に変わった。

「やはり、そうなのか…」

 感情が絶望にかなり近くなりながらも、まだ希望を捨てていなかった。


「夢の世界は今、どんな状況なんだ?」

 落ち着きを取り戻した黎慈が女性に聞く。

「…少し長くなります」

 黎慈は頷く。

「あの世界は、何が起こってもおかしくない状況にあります」

「夢の主人が神に昇華したように…」

 黎慈はそれに驚嘆した。

「神に昇華?どういうことなんだ?」

 女性が再度話し始める。

「夢の主人が呼びかけていたであろう名前、あれは神です」

 確か、アスモデウスと言う名前を言っていた。

「あのアスモデウスと言うのが神なのか?」

「詳しく言うと違う存在ですが、神です」

 つまり、和寿は神と融合したと言うことなのだろうか。

一般的に信じられない話だが、今更だ。

「つまり、今の夢の主人は人じゃないのか?」

「はい。おそらく、人に戻ることもできないでしょう」

 女性は少し間を開け、また話し出す。

「…現実でも同様だと思われます」

 !?

どう言う意味だ?

「現実だと、あいつはどうなるんだ?」

 女性は黙ってしまった。

ただ、黎慈はその沈黙に意味があることを感じていた。

「そう、なのか…」

 黎慈は救えなかったことに責任を感じた。

少なからず自分の手で昇華させてしまったわけだ。

 黎慈は顔を手で覆う。

「気を落とさないで下さい。道のりはどうであれ、いずれこうなっていたことですう」

 黎慈を気遣い放った言葉だったはずだ。

だが、その言葉がさらに責任を加速させる。

「結果がこうなってしまったんだ。もう、戦う意味なんて…」

 当初の計画では、和寿に罪を償わせる予定だった。

改心をさせ、学校の平和を守りたいだけだった。

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