第六十一話 討伐
黎慈は縄で縛られた状態ながらも、周りを見て解決策を探していた。
ただ、部屋がかなり広く、出られそうな扉もかなり遠かった。
窓もなく、完全に八方塞がりだった。
黎慈には一つの希望しかなかった。
『景佑がきっと…』
その一筋の希望を頼りに、黎慈はじっと待つ事にした。
幸い、夢が不安定なおかげか外傷的なダメージはない。
「そろそろ殺すか」
和寿がボソッとそう言った。
その瞬間、部屋の扉が激しく開く。
「誰だ!」
和寿がそう言う。
黎慈は景佑が来たのだと直感的に感じた。
音がした方を見ると、景佑が疲れ果てた状態で立っていた。
息は切れており、着ている服が所々破れている。
景佑は縛られている黎慈を見て、和寿にブラムを使った。
かなり遠い位置だったと思うが、的確に和寿の近辺に当てている。
「お前もなのか…」
和寿が驚いてる隙に、黎慈を回収する。
和寿がこちらに来れないうちに、景佑は黎慈の縄を解く。
「ありがとな」
黎慈が小声で感謝をする。
「どうってことない」
「今はあいつとの戦闘に集中しよう」
景佑がそう言うと、黎慈にかかっていた縄が解けた。
黎慈は立ち上がり、戦闘体勢に入る。
「二対一か…まあちょうど良いだろう」
「俺もあとがないのでな…」
和寿がそう言うと、周りの環境に異変が起き始めた。
その異変を感じた瞬間、周りの壁が風に乗ったように空に飛んでいく。
「多分やばいぞ…これは」
景佑がそう言うと、和寿が大声で呪文のようなものを唱え始める。
「我が主人、アスモデウス。今我が身に降臨せよ!」
その言葉を唱えながら、和寿は空に手を掲げている。
そう唱えると、空間に大きな声が響き渡る。
「今具現化し、其方に力を貸す事を契約しよう。さあ!暴れるが良い!」
その言葉が響き終わると、和寿の周りにハリケーンのような風の障壁が出来上がる。
「いよいよヤバくなっているな…」
黎慈は風で飛んでくる砂埃を手で抑えていた。
だが、そんな余裕はなかった。
体ごと吹き飛ばされそうなくらいの暴風だ。
隣にいる景佑も、必死に体を支えていた。
数十秒その状態が続くと、いきなりパタっと風が止んだ。
目の前を見ると、得体の知れない巨体の怪物が立っていた。
大きさ的には4〜5メートルほどあるだろうか。
かろうじて人型ではあるが、完全に異形のものだ。
そいつが現れた代わりに、和寿がいなくなっている。
「まさか、あいつがそうなのか…」
黎慈のその嫌な予感は的中した。
「この力、クックック…」
不適な笑い声が、完全に和寿の声と一致していた。
「かかってこい弱者ども!」
その声と共に、和寿であろう怪物が走って突っ込んでくる。
「くるぞ!」




