第三十四話
二人は教室の中に入り、黒板の前でうずくまっている女子生徒の元まで行った。
脇腹を抑え、苦痛の表情をしていた。
「大丈夫か?怪我は?」
黎慈は反射的にその女子生徒に手を差し伸べていた。
女子生徒はその手を振り払い、床に落ちていたバッグを持って立ち上がった。
そして、何も言わずに教室の扉の方に歩き始めた。
黎慈は咄嗟に彼女の肩に手を掛けていた。
「待ってくれ!まだ聞きたいことが…」
「うっさい。死ね。お前らには関係ない」
肩から手を振り落とし、そのまま教室を出て行った。
二人残された教室には静寂だけが呼応した。
「ひどいな…」
黎慈は頭をガクンと落とし、見るからに落ち込んでいる。
景佑は口から吹き出しそうなのを堪えていた。
「いや笑わんでよ…」
「いや笑ってない」
絶対に嘘だ。
心の中で絶対爆笑してる。
そんな風にふざけ合っていると、景佑が話し始めた。
「まあ、とりあえず“何か“が行われているのは分かったんだ。これを衣百合にでも報告すれば、色々調査してくれるだろう」
「それもそうだな」
そうして二人は帰路についた。
黎慈が寮に着くと、ロビーに衣百合がいた。
どうやら本を読んでいるようだった。
玄関の扉が開いた音に気づかないほど没頭している。
黎慈は一旦、自分の部屋に戻り、荷物を置いて一階に戻った。
衣百合はまだ本を読んでいた。
黎慈は衣百合の正面にあるソファーに座った。
数分間、眺めていたが特に気づく様子がなかった。
話しかけてみた。
「あのー衣百合さん?気づいてます?」
衣百合はハッとした表情で本を閉じた。
「えっと、いつからいた?」
「5分前くらいかな」
「全然気づかなかった…」
黎慈は学校であったことを衣百合に話した。
「教職が生徒に暴力は、本当だったら早急に解決しなきゃいけないね」
「分かった。学校で色々調べて回ってみるね」
「ああ、こっちも調べられる範囲で色々探ってみる」
その日の夜、あとは寝るだけの黎慈にメッセージが一件来ていた。
スマホを開き、中身を見るとどうやら景佑からのメッセージだった。
『今日、夢どうだ?』
今日の一件で、夢の中が変化してる可能性も大いにある。
確かに、行く価値はありそうだ。
『行こう』
そう返信し、眠りについた。
何か体に違和感を感じた。
妙に体が重たい。
黎慈は体の違和感を確かめるために、体を起こそうとした。
だが、体が全くと言って良いほど動かない。
体全体が凍ったように。
体を動かそうとしていると、聞いたことがある声が聞こえた。
「あなたにはまた、とある記憶を見てもらいます」
目が開かなく、容姿は分からなかったが、おそらく何度も会っているあの女性だ。
「あまり良いものではありませんが…」
そう言うと、目を瞑っているはずなのに視界が青白く光っていく。
「なあ、これからどうすれば良いんだ?教えてくれよ…」
道路の真ん中に、ふらつきながら歩いている男性がいる。
おそらく、黎慈だろう。
声が完全に枯れきっていて、生気がない。
よく見たら、体の至る所が怪我をして流血している。
頭から血液がポタポタと雫のように落ちている。
「なあ。俺一人じゃ無理だよ…」
道路の真ん中に倒れ込んだ。
「クソっ、クソっ、クソっ」
コンクリートの道路を激しく拳で殴っている。
道路には血が飛び散っていた。
「こんな時、衣百合ならどうするんだろうな…」




