第三十一話 お出まし
二人はまた夢の核を目指して歩き出した。
道中、何度か化け物に遭遇したが難なく目的地までついた。
黎慈は前回、景佑の元からの参戦で正面から入ることは初の試みだ。
まずは景佑を先頭に安全確認をし、手の合図とともに中に入っていった。
正面は広いロビーのような空間になっていた。
幸い、敵の姿は見当たらなかった。
「あれ?前回来た時はうじゃうじゃいたのに…」
景佑は奥の方を目を細めながら見ており、何やら首を傾げていた。
「とりあえず進もうぜ」
黎慈の呼びかけに景佑が頷き、さらに奥に進んでいくことにした。
右にある大きめの扉に景佑が進むのを見て、黎慈は後を追った。
扉を開けると、そこは廊下になっていた。
前回と同じく、壁には肖像画が飾ってあった。
特に気にせず、足音を殺しながらさらに奥へと進んで行った。
少し歩くと、誰かの話し声が聞こえてきた。
どうやら右にある部屋から聞こえているようだ。
景佑と黎慈は話し声が聞こえる部屋に聞き耳を立てた。
「あと半月ぐらいで消えるらしいじゃん?ここも」
「えまじ?また前のとこと同じになんの?せっかく住み心地良かったのに…」
「まあしゃあないっしょ?いつかはこの世界も無くなるわけだし」
世界が無くなる?
「てか消えるってことは、前と同じくニンゲン?ってのが来るのか?」
「さあな。でも主人が言ってたからそうなんだろ」
「またあのクソめんどくさい“あれ“やんなきゃいけないんだろ?」
黎慈と景佑はアイコンタクトをとり、一旦その場を離れることにした。
二人はロビーまで戻ることにした。
ロビーに続く扉を開けると、来た時には誰もいなかった階段の踊り場に誰かがいた。
あちらは早速こちらに気づいたらしく、話しかけてきた。
「我が居城に土足で踏み入れるとは、いいご身分だな?」
声を聞いて気がついた。
あれは間違いなく、和寿だ。
だが、前回現れた時とは違い、しっかりと実体化している。
和寿は黎慈達がいる下に降りてきた。
「しかし、どうやってここに…」
「まあどうだっていいだろう。どうせお前らはここで死ぬんだからな!」
そう言うと、あいつの後ろから火の玉のようなものが飛んできた。
二人は体を転がして避けた。
外れた火の玉が着弾した位置を見ると、しっかりと燃えていた。
あいつもどうやら“ブラム“と近しい力を持っているらしい。
「不意打ちかよ…」
和寿は自分の手を何度も握り返していた。
「意外と馴染むな。この力…」
「一旦引くぞ!黎慈!」
二人は颯爽と屋敷から出ていった。




