第三十話 失踪
「ところでさ…」
衣百合が声色を変えた。
「前に色々話してくれて、夢にもいたあの子いたじゃん?」
おそらく、前に夢で異様な消え方をした子だ。
「最近学校で見ないなって思って色々調べてたんだけど、失踪してるらしいんだ」
「失踪?」
「文字通りの意味で、学校に来てないらしいんだよね」
黎慈は言葉の意味が汲み取れず、困惑気味だった。
衣百合は、黎慈の様子を見て少し付け加えた。
「失踪というか、存在してない。みたいな?」
「?」
黎慈はさらに困惑した。
「なんかその子のクラスの子に聞いてみたんだけど、覚えてないらしいんだよね」
「そのクラスの担任の先生も覚えてないらしくて…」
なんだかおかしな話になってきている。
夢の中に出てきた時点で何かおかしな子だとは思っていたが。
「覚えていない?そのままの意味?」
衣百合は顔を縦に振った。
黎慈は手のひらを顎に当て、顔を下に落として考えはじめた。
“失踪?夢の世界がもたらした集団幻覚か?“
“だとしたら何故俺と衣百合は覚えているんだ?“
黎慈は、景佑にスマホから連絡した。
“俺と衣百合が覚えているなら、あいつも…“
黎慈はSNSを開き、景佑にメッセージを飛ばした。
衣百合はその様子をじっとみていた。
“なあ。夢の世界にいたあの女の子、覚えてるか?“
数秒も経たないうちに、連絡が帰ってきた。
“もち。それがどうした?“
黎慈はそっと胸を撫で下ろし、景佑に連絡を返した。
“なら良かった。詳しい話は夢で会ってからする“
景佑からは親指のスタンプが返ってきた。
衣百合は、黎慈がスマホをしまったのを見て話しかけてきた。
「何かわかった?」
「まだなんとも」
「そっか」
衣百合はあの子をとても気にかけているようだった。
黎慈は正面に座っている、衣百合の方に手を置き、宥めるように優しい声色で話しかけた。
「大丈夫。俺と景佑でなんとかするよ」
「信じてるね」
その晩、黎慈は夢の世界に向かった。
到着すると、先についていた景佑がいた。
どうやら戦闘が終わったところらしい。
黎慈は後ろから景佑の肩に手を置いた。
「よ」
「おせえよ」
少し冗談混じりで返事をした景佑に安堵した。
「で?あのメッセージなんだったんだよ」
黎慈は衣百合から聞いた話を景佑に話した。
「記憶から消えた?前まで普通に学校に来てたんだろ?」
「俺はあんまりあの子のことを気にしてなかったんだが、衣百合が聞いた話ならおそらくそうなんだろう」
黎慈は実際に学校であの子を見たわけではない。
「おそらく、夢の世界に関係している話」
「だと思う…」
まだ確証はない。
だが、この世界が関わっているはずだ。
「俺もそう思うが…」
解決法も原因もまずは探すところからだ。




