第二十八話
「お困りのようですね」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
目を開けると、あの少女がいつも通り椅子に座っていた。
「ああ、立ち往生って感じだな」
少女が立ち上がった。
「私も色々と調べて分かったことが二つほど」
「あの中は色々と複雑なようです」
黎慈は首を傾げた。
「まず一つ目。お二人が体験した地面の揺れ。あれには特殊な発動条件があるようです」
黎慈は再度、首を傾げた。
「あの現象には“現実世界“が密接に関わっています」
「どうやら現実で夜が明けると、あの揺れが起きるようです」
「その揺れと同時にあの化け物たちが消えるようです」
「とはいえ、原因は分かっていませんが…」
少女が一息置いて、また話し始めた。
「続いて二点目。夢の核。あの中は夢の主人によって統制されており、たとえ夢の中といえど体力の消耗が現実と同じ…」
「いや、現実以上に体力が消耗されるかもしれません」
「あの中での探索は、くれぐれも気を付けてください」
現実が関わっている。
体力の消耗。
薄々気付いていた黎慈だったが、その疑惑が確信に変わったようだった。
「現実と関わっている、か。やっぱりあの中は色々奇想天外なことが起こるんだな」
「情報サンキューな」
少女は座っていた席から立ち上がった。
「お役になったのなら何より。また何かわかり次第、こちらからお呼び出しします」
だんだんと視界が青白く光り、気づくと朝だった。
目を開けると、自身の部屋ではあったが、何か妙な感覚があった。
窓から差し込む光も、朝日のように眩い光ではなかった。
夕日のように赤い光だった。
「なんだ、これ」
ベッドから立ち上がると視界がぐるぐるとしており、まるで酔っ払ったような状態だった。
夢を見ているのと近いかもしれない。
クラクラした状態で寝巻き姿でロビーまで降りると、あの女性が椅子に座っていた。
「あなたは今、夢を見ていると感じているはずです」
「でも、今から流れる“記憶“は乗り越えなければならないです」
「一体、何言って…」
その直後、黎慈の脳に走馬灯のように誰かの記憶が流れ込んできた。
「俺らは、救えなかった。何も、誰も!」
黎慈は誰かの怒号で気がついた。
視線の先には寮のロビーで座っている景佑と見知らぬ女性がいる。
少し奥にはおそらく自分が座っていた。
「、、、」
静寂に包まれる中、おそらく自分が話し始めた。
「俺、やっぱり…」
景佑が机を強く叩き涙ぐみながら立ち上がり、記憶の中の自分に視線を向けた。
「馬鹿!お前まで消えてどうすんだ!」
「でも、もうこうするしか…」
「、、、」
ここで記憶は途切れた。
黎慈は女性に話しかけた。
「これは、一体?」
「時が来たらお教えします。今は、目の前の難題に立ち向かってください」
女性がそう言うと、黎慈は意識が朦朧として行った。




